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序章 殺戮の覚悟


俺は全力でゴブリンを押し返し、咄嗟に腹部を蹴ることで距離をとる。

ゴブリンは蹴られた衝撃でひっくり返り、痛み故か奇声を上げてのたうち回る。


そして俺はこのリアリティ溢れる夢の中、恐怖心に耐えられなくなり、敵であるゴブリンに背を向け情けなくも来た道を全力で走った。


逃げ出してしまったのだ。訳の分からない叫び声を上げながらダンジョンを疾走する様は、はたから見たらそれは無様な光景だろう。でも、


「はぁ……はぁ……あ、あんなん俺にどうしろってんだ」


誰に言うでもなく愚痴をこぼす。そうでもしないとストレスで爆発してしまいそうだったからだ。


そうこうしているうちに、遂にはスタート地点、つまりは行き止まりへとたどり着いてしまった。


「くそッ!どうすればいい。なぜ夢から覚めない!」


本当はわかっているんだ。ただ、今はまだ口には出せない。勇気がないからだ。


壁を背にもたれ掛かると、ゴブリンがゆっくり歩いてくるのが見えた。休む暇は与えてくれ無さそうだ。

小柄な成人男性程のゴブリンは、俺が逃げ出した事で調子に乗ったのか、「げげげ」と汚らしい笑い声のようなものを上げながら徐々にその距離を詰めてくる。


「ど、どうする……もう逃げれない。や、やるしかないのか」


距離にして10メートル程。最早考える時間すらない。

ゴブリンはそこで一度足を止め、首を傾げて俺の様子を伺う。人の気も知らないでヨダレを垂れ流しにしているあたり本当に醜悪なモンスターだ。


「あっちいけッ!いけよ!いけ――グッ!」


大声を出したからか、ゴブリンがショートソードを振り回し、奇声を発しながらの突進。

俺はこんぼうを振り回し対抗する。運良くショートソードは弾けたが――


「――がはッ! ……痛ってぇ」


醜いゴブリンに突進された俺は、避けることも出来ずにモロにそれをくらい、吹っ飛んで壁に背中を強打。

強打したことにより、衝撃で一時的に胸腔が圧迫されて上手く呼吸ができない。


――これは、夢……夢なんかじゃないッ! 現実だ、訳わかんねぇけど間違いなく現実だ。


ゴブリンは嬉しそうにその場でクルクルと回り始める。

既に俺に勝った気でいるのだろうか。


不思議とそんなマヌケなゴブリンを見ていると、頭の奥でふつふつと怒りが込み上げてくる。


――コイツはなんでこんなに楽しそうなんだ? 俺はこんなにも痛い目にあっているのに。それに、なぜこの俺がゴブリンにこうもコケにされている? 考えただけでも腸が煮えくり返ってきた。この――。


「――ゴブリン風情が。調子に乗るなよ」


俺は生命線であるこんぼうを構え臨戦態勢に入ると、ゴブリンも既にショートソードを構え、お互いに相手の出方を見る。


気持ちとは裏腹に俺の身体は小刻みに震える。

頭では成すべき事は理解出来ても、身体がついていけていない。

生まれてこの方喧嘩のひとつもした事の無い俺が、命のやり取りなど出来るわけが無い。

しかし、それでもやるしかない。


震える脚を力いっぱい殴りつけ、痛みで冷静さを取り戻す。

漫画で見た光景だが実際にも効果はあるらしく、鈍い痛みのおかげで若干だが恐怖心が紛れた気がした。


――逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。逃げるな。戦えッッッ!


俺は恐怖心を無理矢理抑え込み、鈍痛の走る足で地面を蹴った。

めちゃくちゃな走り方だ。こんぼうが重いと言うのもあるが、やはり精神的にいつも通りでは無いのだろう。


突っ込む俺に対し、ゴブリンも同じく距離を詰めてくる。


「――ああああぁぁぁぁッ!」





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