『給湯室』
ここは都内某所、何の変哲もない普通の商社の給湯室だ。
私のOLとしての仕事は、いつもここから始まる。まずは、自分自身に出勤ご苦労の1杯。そして、今日も一日平穏無事に過ごせますようにと、気持ちを込めた1杯。喉を潤すミルクティーに頑張ろうとの決意をして、最後に3杯目を流し込んだ。温まる。
「飲み過ぎじゃない?お腹壊すよ」
不意に声を掛けられたせいか、軽くむせ返った。いつものルーティンに集中していたから、人の気配に全く気が付かなかった。
「すみません、すぐ淹れま……って何?ずっと見てたの?」
「ずーっとだよ」
そこには、水色がかったワイシャツに、胸元には薄ピンクのリボンを携え、紺のスカートを履いた変なツインテールの小娘が突っ立っていた。彼女とは同僚なのだ。故に私も同じ格好をしている、ツインテールではないが。
「まぁいいや、さっさと持っていくか」
「一緒に手伝うからね」
コップが6つ乗ったお盆を二人して運んだ。
それにしても変な髪型だな。どうして左右で長さが違うのだろうか。結んでから散髪したのか?
少し……いやかなり変わっている小娘だが、気の効くときもたまにはある。
「……ありがとね」
その言葉はきっと小娘には届いていない。揺れる髪が耳に当たりまくっている、絶対に変だ。