第98話 仕事Ⅱ
この仕事にプライバシーは存在しない。
というより元々奴隷の俺達だ。他の仕事の奴隷よりはあるかもしれないが、職場=住居でもあるので、一般人と比べたら無いに等しい。
寝る為の個室はあれど、本当にベッドぐらいしか無いんだ。
食事の用意はガイ部長達がするし、トイレも一旦寝室から出なきゃいけない。寝室から出ることは、目の前にあの装置があるんだ。一歩でも出ればモロ職場だ。
だから生きてさえいれば、日吉を見ない日は無かった。
昨日、丸1日休んだ時でさえ、トイレに行く日吉を何度も見た。
そして今日も……
朝から昨日と同じように流れていった。
朝食を一緒に食べず、仕事に復帰する感じは無かったが、トイレに行くのを見ることは出来た。昨日よりは多少マシな顔付きをしていた。
ガイ部長とハーシャ奥様は、優しさなのか?日吉を見ても相変わらず何も言わなかった。俺は黙々と仕事をした。
日吉は多少マシになったお陰か、その分だけ気まずさが増したのだろう。
夕方頃、3度目のトイレに出た日吉は、それでも俺達が何も言わない事について不満が暴発した。
「なんなんですか!?あなた方は?
どうして自分に何も言ってくれないのですか!?自分は一体これからどうして行けばいいのですか?教えて下さいよ!」
日吉の不満にガイ部長とハーシャ奥様は、やはり優しい為なのか何も言わなかった。
そんな2人を見て更にイライラが募る日吉。これ以上、ヒートアップしても面倒臭い。
だから、2人の代わりに棒を押しながら、応える。
「なんだ?日吉。何か言って欲しかったのか。
だったら言おう。さっさと働け!このクソ後輩が。」
「なっ!?カゲイ!それは……」
「言い過ぎですか?ガイ部長。
ですが、これ以上タダ飯食らってるクソ野郎の代わりは、こっちも勘弁して欲しいんですよね。」
俺の言い分に日吉はこちらを睨んできたので、続けた。
「日吉。随分と腑抜けたな?ガイ部長やハーシャ奥様が甘やかせ過ぎたせいか?
昔の仕事なら、彼女にフラれたから2日休みますなんて、死んでも許してくれなかっただろ?」
「うぐっ……だけど、この仕事のせいで、自分達は!」
「化け物になったか?だから、この仕事がしたくないと?なら、お前はこの世界で他にどんな仕事が出来るんだ?
化け物になった俺達に一体何が出来ると思う?コレしか無いだろ?ならココで働くしかないだろ!
俺達は大人だ!社会人なんだぞ?
死ぬ気が無くなったのなら、働いてこそだろ!そして生きろ!
シアラちゃんにフラれて、生きる為の意味を見失っただ?昔のお前はそんな高尚なものを持っていたのか?
やる気?活力?そんなもの、あったのか?
それでも、なんとなく生きて、なんとなく仕事してきたんじゃないのか?あの頃は何も無くとも、これからはあるかもしれないと、アテも無く仕事してきたんじゃないのか?
それは悪い事か?なら、昔のお前は悪かったのか?違うだろ。
災害があっても、訃報があっても、何が起ころうが翌日には仕事に行っていたんだ。今までも、そしてこれからもな。
俺達は社会の一員として、責任を果たしていたんだ。それは素晴らしい事なんじゃないのか?」
「……。」
「なあ、日吉。俺達は社会人だ。
生きる為には色んな物が必要だろ?それには働かなければならない。そんな事はどこの世界も一緒だ。
昔の仕事よりはこの仕事、楽しいだろ?だから働けよ!
そして、俺に休日をくれよ!」




