第95話 化け物Ⅲ
仕事が終わり、夕食時にガイ部長と日吉から経緯を聞いた。
休日が始まって日吉はいつも通りシアラちゃんの食堂に行った。
その後、食堂で会話を楽しんでから、2人で外に出掛けたらしい。
日吉は知らなかった。
そういえば、こいつの周りには皆、良い人ばかりだったな。
食堂のシアラちゃん家族や常連達、そして明彦君達。
皆、日吉が奴隷だろうが、あまり区別せず優しく接してくれる人達ばかりだった。
俺のように初回で絡まれた事も無いんだ。
俺もそこまで奴隷としての扱いを受けた経験は少ないのだが、日吉に至ってはほとんどなかった。
だから、完全に油断していた。
可愛いシアラちゃんと、奴隷の首輪をつけた日吉が歩けばどうなるのか?
明彦君達が一緒に居た時とは違い、2人だけで街を歩けば……
当然のように絡まれるんだ。
シアラちゃん目当てで、5人の男達に絡まれてしまった。
日吉はそこで男を魅せた。いや、魅せてしまったんだ。
そして、日吉は知った。気づいてしまった。
「先輩。今まで色んな人から色んな事を言われました。
どれも意味が分かりませんでしたが、あの時、全ての言葉がパズルのようにハマったんです。
自分達は化け物だ。人として異常なのだと。」
「どういう事だ?」
「絡んできたヤツらは自分とシアラちゃんを路地裏に連れ込み、シアラちゃんを守る自分に殴りかかってきました。
怖かったですが、後ろにはシアラちゃんが居たんです。勇気を出して受けました。
スポンジみたいな感触でした。そしたら相手が痛がるんですよ?意味不明でしょ?
その相手の腕を掴んでみたんです。いとも簡単に腕の骨が折れました。パスタの乾麵を折ったぐらいの力しか入れてないのにですよ?」
「その相手が相当弱かったのか?」
「違います。5人全員がそうでした。
何をやってもすぐに相手の骨が折れました。何をやられても相手が痛がるのです。
多分、頭蓋骨でさえ簡単に握り潰せそうでした。」
その後、大部分はシアラちゃんの無事を確かめる為に後ろを振り返った。
しかし、ほんの僅かにシアラちゃんもこの5人と同じなのだろうか?そういう疑問もあったそうだ。
それを本人に感づかれたと日吉は自虐的に言った。
シアラちゃんは泣き叫び、顔を恐怖で染めて、這いずるように、立ち上がってからは全力で日吉から逃げていった。




