第74話 身内Ⅱ
「身内が罪を犯す前に止めるなんて、知らなければ不可能に近い。知っていても中々止められるものでも無い。そして、止めなかった者が悪いなんて事も無い。
そう思いませんか?皆さん。
もうそうじゃないならば、浮気や不倫ですら、された側が止めれなかったから悪いという事になりますよ。違いますよね?悪い事をした者が悪いのです。」
「フォッフォッ。そうじゃのぅ。」
「あー。でも身内が止めなきゃ一体誰が止めるのよ。」
「え?当人だけですよ。極稀に周りや身内が止めてるかもしれませんが、本当に限りなく低いでしょうね。
そうでしょう?身内だからと言われたって、家族や恋人の全ての事を知るのは不可能です。ディアナさん達だって、旦那さんが今何をしているのか……正確に知っていますか?もし悪い事をしていたら、止めれますか?無理でしょう。
そんな事は、何処にだって……誰にだって……ありますよ。」
そう言うと何かを気づいたハーシャ奥様がボソッと呟いた。
「そう言えばついこの前、【2つ名事件】というのが……」
「ハーシャ!止めろ!ソレは関係ない話だ!」
ハーシャ奥様の呟きをガイ部長は怒鳴って止めた。ガイ部長の怒気にビクッと萎縮するハーシャ奥様。しかし、その前のハーシャ奥様の呟きに、何故かビクッとしていた4人を俺は見逃さなかった。
ははぁん。
よく分からないが攻めどころを見つけたぞ。
「あれれ~?皆さんは心当たりがあるようですねぇ?勿論、皆さんの事ですから止めれたんですよね?」
とぼけながら、おちょくってみるとディアナさん達はタジタジになっていた。
「あー。アレは違うのよ。それにアレとコレとは程度が……」
「いえいえ。程度の話はしてませんよ?止めれたかどうかの話です。まぁ事件と言うぐらいだから、止めれなかったのでしょうね。
寧ろ、程度なんて言葉が出るという事は、その事件の被害者達へ謝罪や謝礼はしてないのでしょう?どうせ、ミラ様とロン様の権力を使って揉み消したんじゃないですか?
それなのに、今も謝罪している無関係のガイ部長を見極めるなんて……一体どういう事なのでしょうか?」
「ヒッヒッ。確かに違いないねぇ。すまないねぇ。」
「フォッフォッ。そうじゃのぅ。ワシらは驕っておったのかもしれんのぅ。」
流石、老人達……長生きしてるだけはあるな。素直に認めてくれた。それなら、あともう少しだ。
「というか、ガイ部長はすでに罰を受けています。貴族位をはく奪されて、騎士団からも脱退させられて、俺達のような奴隷の管理をする仕事に左遷されたんだ。それに不満を言うでもなくガイ部長は罰を受け入れている。更に今も謝罪してるじゃないですか。これ以上、何を求めるのですか?」
「あー。分かった、分かったわよ。
元々そんなつもりも無かったし、もう過ぎた事よね。」
「そうなの。それに良かった事もあったから、もう気にしてないの!」
ディアナさんとキエナさんも納得してくれた。
あとは未だに土下座を続ける頑固者だけか。
「じゃあ、残るは馬鹿でクソ真面目なガイ部長。もういいんだ。直ぐに立ってくれ!
貴方だって気づいているはずだ。止められなかったと自分を責めているのだろう。しかし、ならどうやったら止めれたのか?その答えは出ましたか?」
「それは……そうだが……しかし……。」
「それなら、もうどうしようも無かったんですよ。
過去を悔やむよりも、未来をより良くする為に今は立ち上がってくれ。それが俺達のガイ部長だ。」
「そうですわ!ガイ様。私も御一緒します!お願い!」
「カゲイ……ハーシャ……。そうだな。
ありがとう。そして、すまんな。」
頑固者もやっと立ち上がってくれた。
俺はここまでだな。ちょっと時間もかかったことだし。
「さて、日吉をあまり待たせると俺まで怒られるから、仕事に戻りますね。
ガイ部長、ハーシャ奥様。皆さんに俺達の仕事を見学させるなら案内してあげてくださいね?」
「ああ。分かった。」
「あと日吉が夕食豪華で宜しくと言っていましたよ。俺も頑張ったから追加でお願いします。」
「……善処しよう。」
よっしゃ!
これで俺の夕食も豪華になるぞ。




