第57話 ONOFF
翌日。
また終わることのない2人でただただ棒を押す仕事の始まりだ。
休日までは1か月先。そう思うと長く遠い道のりに思ってしまう。
それでも昨日は本当に最高な1日だった。
その名残がまだ残っていたようで、押す速度が自然と速くなり、ガイ部長とハーシャ奥様から何度も叩かれた。
「カゲイ。昨日楽しかったのは理解しているが、それは昨日だ。
今日はもう仕事だ。さっさと切り替えろ。」
「ガイ部長。すみません。」
「先輩。新人みたいなやらかしをして、ダメじゃないですか。
まぁ安心してくださいよ。自分がバッチリフォローしますから。」
「……どの口が言ってるのかしら?
昨日散々叩いてあげたというのに、もうお忘れ?」
「ハーシャの言う通りだ。
カゲイが休日で1人だから調整しやすいはずなのに、ヒヨシも似たようなものだったじゃないか。お前ら浮かれすぎだ。」
「日吉。全然安心出来ないじゃないか。
それにしても、切り替え……ONとOFFか……。」
「先輩?どうかしたんですか?」
「いや、昔から疑問に思ってたんだ。
仕事が休みの日はOFFと良く言われているだろ?」
「そうですね。」
「でも、気持ち的には休日がONで、仕事中は感情が死んでるからOFFじゃないかと思うんだ。」
「あー。確かにそうですね。」
「だろ?
やりがいのある仕事なら、まだわかるんだがな。しかし、そんな仕事が本当にあるのだろうか?」
「どうでしょうねぇ。
そんな経験ないですから。だってココの方が良いと思ってるんですよ?
自分もそうですが、先輩もですよね?」
「ああ。その通りだな。」
「……お前ら、本当に前の世界で一体どういう仕事をしていたんだ?
俺はお前らのせいで、お前らの世界が恐いのだが。」
俺と日吉の話を聞いていたガイ部長はおののいていた。ハーシャ奥様もガイ部長の言葉に頷く。
「いえ。極普通の仕事でしたよ。ガイ部長。」
「そうですね。そこまで変な仕事じゃなかったと思います。」
「いや、だから……それが恐ろしいんだ。
お前らみたいなのがわんさか居たら、世界は滅んでるだろ。」
「まるで、俺達が化け物みたいに言わないでくださいよ。そんな訳ないじゃないですか。」
「そうですよ!
でも、確かに浮かれすぎでしたね。
先輩、仕事しましょう。あの頃のように感情を殺せば普段通りに出来るはずです!」
「なるほど。それはいいな。それで行こうか。」
そうして、俺と日吉は昔の社会人時代を思い出し、引き続き棒を押しだす。
「おいおいおいおい!
カゲイ、ヒヨシ。速度は安定したが、お前ら大丈夫か?
目が!顔が!色々と死んでるぞ。やばくないか?」
「ええ。ガイ様。彼らは本当に人なのでしょうか?
死人系の魔物の一種と言われても今なら信じそうですわ。」
せっかく安定したというのに、ガイ部長とハーシャ奥様から心配の声があがってしまっていた。




