第45話 クロスオーバー
手が汚れていたのかと思ってボロボロの服で拭ったら、更に汚れてしまった。どうしようもないので、ガイ部長から借りたマントで拭っておく。
よし。これで大丈夫だろう。と思ったら伊吹君の様子が変だ。
なんかブツブツ言い出してた。
「そうだ……僕は伊吹明彦……。
普通なら皆、影井さんのように伊吹と呼ぶのはず……。
なら、どうして?
あの人は……初めから僕を明彦と呼んだ……?
うぅ。分からない……。」
おおぅ。この子。大丈夫だろうか?
「伊吹君?伊吹君!
急にどうした?大丈夫か!?」
見かねて伊吹君の正気を取り戻そうと肩を掴んで揺すろうとしたら、猫耳つけたコスプレ少女に止められ、伊吹君と一緒に距離を取られた。
「……ダメ。……アキに触らないで!」
酷い扱われようで、心へのダメージが半端ない。そんなに汚くはないつもりだが、見た目的に説得力は無いか。
精神がゴリゴリ削られていると、ようやく伊吹君が復活した。
「……あっ!ご、ごめんなさい。
つい気になった事があって考え事をしてしまいました。」
「いや、こちらこそ。何か変な事を言ってしまっていたら、申し訳ない。
それよりも、他の人達も元気にやっているのかな?もしくは、戻れたとか?」
「うぅ。ごめんなさい。分からないです。実は……」
話を聞けば、あの後、他の召喚された人達と1ヶ月ぐらいは一緒に生活していたそうだ。この世界の常識や知識を詰め込んだり、戦い方を学ばされたりしていたそうだ。
しかし、伊吹君には戦いなんて合わなかったようで、怖くなってその場から無我夢中で逃げ出したそうだ。
幸運にも今お世話になってる人に拾われて助けられ、こうして生活が出来ている。
だから、他の人達のことは分からないし、元の世界へ戻れるか?戻っているのか?それも不明とのことだった。
話を聞いて1番の感想は、
『この子、凄い子だなぁ。』
と思った。
言動や雰囲気から臆病そうなのに、行くアテの無い世界で、逃げるとはいえ1歩踏み出せる勇気を持っていた。
ただ1人、真っ暗闇の中、道があるのかどうかも不明で、歩き出せるか?普通なら無理だろ。
若さゆえの……かもしれないが、俺には無理だ。
変化を恐れる歳になった。
新しい1歩すら中々踏み出せない。
「そうか。大変だったんだな。
でも良く頑張ったんじゃないのか?
お陰で、可愛い彼女まで出来たみたいだしな!」
「うぇ!?ち、違いますよ!
彼女は……彼女じゃないです!」
ニヤニヤしながら茶化してみると、顔を赤らめて否定する伊吹君。
バレバレだな。
うんうん。青春だ。
日吉じゃないが俺も無性に恋がしたい気分になった。
この際、伊吹君に女性紹介してもらおうか?
いや、年齢層が違いすぎるか。
……紹介?
あっ!ついでに聞いておくか。
「そうだ!伊吹君。
この辺りで布が売ってるお店は無いかな?
服だと高そうだから、布単体を買いたいのだが。」
「布ですか?それなら、今お世話になってる人のお嫁さんが良く行くお店がありますよ?
そこなら場所を知っていますから案内しましょうか?」
「いや、デートの邪魔しちゃ悪いだろ。
道だけ教えてくれればいいさ。」
「うぅ。デート……。
ほ、本当に、ち、違いますからね?」
面白い程、からかい甲斐があって楽しい。
その後、伊吹君にお店までの道のりも聞けた。
「ありがとう!伊吹君。
俺ともう1人の日吉もこれからちょくちょく出歩くようになれたから、また会ったら宜しくな。」
「こちらこそ、宜しくお願いします!
あっ!あと、僕の事は明彦で良いです。今は皆からそう呼ばれてますから。」
「そうか。じゃあ明彦君。
また何処かで!本当にありがとう。」
明彦君と別れて、布屋へ向かう。
看板娘のシアラちゃん見学を忘れたが、それ以上に良い出会いだった。
前話で気づいた人もいるかもしれませんね。
今作は、【中年冒険者、家を買う。】のクロスオーバー作品です。
構想中に色々調べました。
スピンオフ、ハイパーリンク、クロスオーバー……。
どれになるのか?
結果、クロスオーバーだと思いました。
クロスオーバーの意味として。
1.異なったジャンルの音楽の要素を交ぜて生み出された新たなスタイルを指す音楽用語。また、それらの歌手や演奏者。
2.ある作品の登場人物が、その作品の設定を保ったまま別の作品に登場すること。
3.同一世界、同一時間軸で異なる主人公の物語。
ほとんど2しか無いと思ってました。3の意味もあるのですね。
ということで、今後もあっちのキャラがチラホラ出てくるかもです。
意味が分からない方は、
【中年冒険者、家を買う。】を是非読んでみてね!




