◆第41話◆ 追加配備Ⅱ
ヒューメル大隊長の部屋から、ハーシャと2人で強引に追い出された。
嬉しそうなハーシャには悪いが、ちゃんと確認しておかなければならない。
「ハーシャ。本当に良かったのか?」
「ええ。これからもガイ様と共に。このお話を頂いた時は本当に嬉しかったですわ。」
「家は大丈夫なのか?
それよりも、カゲイにヒヨシ。彼らが問題だ。あの騒動の時にも言ったが、君に怪我が無くて本当に良かった。あと少し遅かったらと思うと、俺は……。」
「家の事は大丈夫ですわ。
騎士団に入った時から私はほとんど放置されておりますもの。
それに、奴隷の彼らも話せば分かる人達ではないですか。」
「君にとってはそうかもしれんが、気をつけてくれ。
あの時のヒヨシと同じことを前日にカゲイもやらかしている。
彼らは言わば内面以外は化け物なんだ。
俺の腕と愛剣であるミスリルソードでも皮1枚斬ることすら出来ん。彼らにとっては木剣みたいな感覚らしい。
驚異的な力、持久力、そして強靭な防御力なんだ。」
「ですから、あの騎士達のように、殴ったり蹴ったり直接攻撃すると、こちらの手足を痛める結果になり、例え剣で斬ろうにも、自身の技量が無ければ、剣が折れるか持ち手の腕の骨が折れるかどちらかですわね。」
ハーシャも分かっていた。
カゲイとヒヨシ。彼らの肉体は金属の塊に近い。
それこそミスリルですら傷1つ付かないオリハルコンのようなものだ。
そんな人の皮を被った金属の塊を、何も知らずに殴ったり蹴ったりしてみろ。
普通に怪我をすることになるだろう。
「ああ。その通りだ。
そして本当の恐ろしさは、彼らがその事を知らない事なんだ。
だからこそ特に気をつけて欲しい。
ふとしたことで、腕を掴まれたりするかもしれん。肩を叩かれるかもしれん。俺ならなんとか耐えられるが、君では腕や肩が壊れるかもしれない。
ハーシャ。俺はそんな場面を絶対に見たくないんだ。」
「分かりましたわ。ガイ様の為にも肝に銘じます。
ですが、何故教えてさしあげないのですか?」
「それは無駄なんだ。彼らの資料は読んだか?」
「はい。異世界からの召喚に巻き込まれた者だそうですね。だから何もしていないのに奴隷になった。可哀想な方達じゃないですか。」
「そうだ。だからこそなんだ。
彼らは、この世界を何も知らない。
俺も何度か言った事はあったが、知らない故に比較出来ず、自身の力を測れない。だから自分達の力の凄さを気づかないんだ。」
例え化け物だと言っても、どのくらいなのか分からない。
それこそ、人の頭を握り潰してみないと分からないだろう。今の彼らなら簡単に出来る。しかし、適当な奴隷や犯罪者で実際に試させても、恐らく失敗するはずだ。
彼らは俺達と違う異世界の住人だから。
『そういう体の弱い人も居るんじゃないのか?』そう思う可能性が高い。
今までも度々あった。
頑丈な石畳ですら、彼らは素手で粉々に砕く。
それなのに『ファンタジーだから』と良く分からない事を言って自分達は普通だと思っている。
「それで、奴隷なのに休日や外出があるのですね。分かりましたわ。
……ガイ様。そんなに心配なさらないでください。私だって騎士です。秘策もありますし、しっかり勤めあげてみせますから。
ですが、1つだけ重大な問題がありますわ。」
「ん?なんだ?マズい事か?」
「ええ。せっかくガイ様が休日を取れるようになって、同じ仕事をすることになって、とても嬉しいのですけど……。
一緒に休日を取る事が出来ませんわ。これではデートが出来ませんわ。」
心底残念そうにハーシャは言う。
こういう時、女性は強いな。
呆れ……いや、感心してため息が出てしまった。




