第38話 奥様
ガイ部長の参戦により、事態は落ち着きを取り戻していた。
その後、ガイ部長と女性騎士がその場の収拾を図る。
野次馬達も解散しだして、倒れた騎士達も女性騎士の指揮により運び出されていく。
俺と日吉は特に手伝う事も手伝える事も無く、2人で突っ立っていた。
数分もしない内に普段通りの様子に戻り、ガイ部長に付き従う形で戻る。
日吉が俺達の夕食を持っていなかったので、食堂も寄り、夕食を貰い、いつもの仕事場まで戻った。
「ふぅ。流石に疲れた。今日はもう面倒事は勘弁だ。
お前ら、食ったらすぐ寝ろよ?俺もココで寝てしまいたいな。」
「いけませんわ!ガイ様。
この様な場所でお休みになられては……。」
いつも通りの夕食風景……にはならなかった。
何故か女性騎士が、今までずっとついて来ていた。
しかもガイ部長との距離感が半端なく近い。隣にピッタリと寄り添うように座っている。
特に女性騎士の方がグイグイアピールしている。
ただ、ガイ部長もまんざらでもないのか、嫌がる素振りもなく好きにさせていた。
俺達のせいで面倒な事になっていたので、申し訳ない気持ちはあったが、いつもより遅い時間になった夕食よりも、俺も日吉も目の前の光景が気になって、ニヤニヤが止まらなかった。
「先輩。ヤバいです。リア充ですよ?」
「ああ。……爆発しねぇかなぁ。
まぁガイ部長は元エリートだから、1人や2人は絶対居ただろうし、当然っちゃ当然だわな。」
「馬鹿共が。変な事話してないで、さっさと食え。そして寝ろ!」
「……あら?確かにガイ様は真面目で優しいお方ですから、昔から女性に人気でしたわ。ですが、私しか居りませんでしたの。何故なら……」
「ハーシャ。そのガイ『様』というのは止めてくれ。俺はもう貴族じゃないんだ。
……そうか。そうなると俺もハーシャ様と呼ばないといかんな。」
「そ、そんな……!ガイ様。」
「ガイ部長!それはちょっと可哀想ですよ!
ココには自分達しか居ないのですから、いいじゃないですか!」
「うんうん。日吉の言う通りですよ。
何処からどう見ても、慕ってるじゃないですか。男なら受け止めるべきですね。」
「その通りですわ!
アナタ達、奴隷にしては中々見込みがありそうですわね。」
「はぁ……。わかったよ。ハーシャ。
ただし、この馬鹿共の事はあまり調子に乗らせないでくれ。
今さっき酷い目にあったばかりなのだからな。」
酷い言われようだが、事実であり俺達は何も言い返せなかった。
そうして、ハーシャと呼ばれた女性騎士を紹介してもらった。
ハーシャ・コーキン。
予想通り貴族の御令嬢だった。
そして、その見た目通り、騎士団に所属する戦士でもあった。
一番の衝撃はガイ部長の許嫁でもあった。
貴族とかよく分からないけど、そういうの大変そうだと思った。
しかし、ハーシャ様はガイ部長がドストライクだったようで、許嫁であることを嬉しそうにしていた。ガイ部長も好意はあるのだろう。家の決まりとはいえ、相思相愛っぽかった。
ただ、ガイ部長の家が貴族位をはく奪された為、婚約は解消されていたので、元許嫁である。
ハーシャ様はまさに貴族令嬢のような容姿なのだが、ガイ部長を追いかけて騎士団に入ったそうだ。
好意が行き過ぎてドン引きだ。
ストーカーの気質でもあるのだろうか?
今も、ガイ部長の隣で、
「はぁはぁ……。弱ってるガイ様、素敵……!」
と、若干興奮している。
これは絶対に怒らせてはいけない部類の人だと思った。
ハーシャ様に恐れおののいていると、日吉がコソコソと話しかけてきた。
「先輩。どうします?」
「俺達は貴族がどうとかよく分からないからな。
それにこの仕事じゃ関わり合いになることもないだろ?
それなら2人の仲を応援するのが良さそうじゃないか?」
「ですね!じゃあ、呼び方はこうしませんか?」
ニヤリとした日吉がコッソリと伝えてきた。
それにつられて俺もニヤつく。
「ガイ部長。ごちそうさまでした。
今日はご迷惑をお掛けして、本当にすみませんでした。
では、俺達は寝ます。」
夕食が食べ終わり、日吉と一緒にガイ部長達へ頭を下げる。
そして頭を下げたまま、日吉とアイコンタクトをして言葉を続ける。
「「では、またのお越しをお待ちしております!ハーシャ奥様!」」
ハーシャ様の顔に満開の花が咲いていた。




