第29話 初めての外
今日は待ちに待った休日の日だ。
設備補強の件もあるようで、少し前の日に業者っぽい人達が視察に来ていた。
集団で取り掛かって、なんとか1日で終わらせてくれるそうだった。
俺の方が先輩としての威厳分だけ1人で仕事出来る時間が長い。
後輩を前にして、後輩よりも先にくたばる訳にはいかないからだ。
よって、日程は日吉が先に休み。俺が1人で仕事。
翌日に俺が休み。日吉がお昼迄1人で仕事。
午後から翌日朝まで補強工事といった流れになった。
今まで綿密に計画を練ってきた。
日吉やガイ部長と何度も精査してきた。
このプロジェクトを絶対に失敗しないように頑張ってきたんだ。
うんうん。
絶対に大丈夫なはずだ!
……世の中に絶対は存在しない。
いや、寧ろそれ以前の話だった。
この計画は休日&外出するまでのプロジェクトであって、それから先はノープランだった。
仕方がないだろ?
俺と日吉に至っては外の世界をまったく知らないのだから。
計画の練りようがないのだ。
プロジェクト的には成功したが、外出は大失敗した。
そして、俺達は知った。
『外の世界は怖い!』
ということを。
初日の日吉は、俺が仕事し始めたら、意気揚々とガイ部長に連れられて外の世界へ旅立った。
ガイ部長の付き添いは王城の門前まで。その後戻って、いつもの仕事である俺の見張りだ。
陽が昇る前から仕事するので、かなり早い時間からの外出かと思われるが、王城もなかなかに広い。ガイ部長が日吉を見送る頃には陽が昇っていて丁度良いらしい。
ちなみにガイ部長からお小遣いを貰っている。
銀色の硬貨1枚だ。価値が分からん。物の相場も分からん。
日吉はこのお小遣いを結構な額だと予想した。
海外やなんかで、屋台や食堂で大金を払うと嫌がられると想定して、まず両替する場所を探したそうだ。
人に聞きつつ辿り着いて両替してもらう……。
銀の硬貨1枚が銅の硬貨2枚になった。
日吉は喜んだ。
報告を聞いた俺は、そういうものなんかと感心した。
そして、ガイ部長は嘆いていた。
なんとガッツリぼったくられていた!
その後、銅の硬貨2枚持って、食堂を探し、良さそうな店を見つけて入った。
マント1枚では隠し切れない、みすぼらしい服。そして鉄の首輪。
「うちの店で奴隷に出す料理は無ぇ!」
と、残飯の入ったゴミ箱をぶちまけられたそうだ。
それでも、【食のモンスター】日吉だ。
地面に落ちた残飯を、その場でさも当然のように食べだした。
周りなど気にせずに食べていたら、肩に押された入館許可証が人目に晒され、何故かあたり一帯は騒然となってしまった。
すぐに警察官みたいな人達が駆け付け御用となって……。
その後、ガイ部長が呼ばれて、日吉を引き取りに行くことになった。
日吉の初外出は、数時間程で強制的に戻ってきていた。




