◆第19話◆ 申請
◆がついてる回は、ガイ部長視点で進みます。今後も宜しくお願いします。
重厚な扉を前にして、身なりと精神と呼吸を整える。仕事終わりに急いでここまで来たのだ。
そして、意を決してノックする。
「ガイ・マートンです。
夜分に申し訳御座いません。只今お時間宜しいでしょうか?」
暫くの沈黙の後、「入れ。」と端的に返答があったので、直ぐに部屋へと入る。
その部屋は資料が山積みになっており、机の上にも結構な量の紙束が積んであった。
その机の主は椅子に座りながら、紙束を読みつつ迅速に処理していた。
名前はヒューメル・タバ。
特殊大隊長という職についており、国が保有している奴隷達の運用や管理を一手に任されている。
要は俺の上司にあたる人だ。
「どうした?ガイ。
また補充の申請か?あれから1度もお前の管轄で問題が発生しておらん。安定しているじゃないか?」
「いえ。今日は別件でのお願いです。
私の管轄の奴隷達に休日と外出の許可を下さい。更に施設補強を申請したく思います。」
俺がそう言うと、資料を読み進めていた視線がピタリと止まり、ギュルッとこちらを睨んできた。
「ガイ。俺はもう歳だ。
しかし、まだ耳は遠くなった訳じゃない。
だとすると、お前がおかしくなったのか?」
突拍子もない事を願っているのは十分理解している。だからこそ正面から願うのだ。
搦手を使うと後々の調整が難しくなるだろう。
というより、ヒューメル大隊長の言う通り、俺はおかしくなってしまいたい。
毎日、あの光景を見せられるんだ。
狂ったとしても、それが普通なはずた。あの光景自体が狂ってるのだから。しかし残念ながら俺は狂えなかった。
「いえ。私は正常のつもりです。
ヒューメル大隊長。明日、私の管轄を視察して頂けませんか?1度見て貰わないことには、何も進まないと思われます。」
「見たところで、その申請が通ると思っているのか?」
「いえ。しかし状況は理解して頂けます。
何故、その申請を出すのか?今この場所で、口頭での説明ではとても不可能だからです。
大隊長の手を煩わせて申し訳御座いません。それもこれも私の不徳の致すところです。」
「そうか。お前がそう言うなら、分かった。
現状の働きに不満は無い。いや、無かったと言った方が正しいか……。」
「大隊長!お願いします!
1度だけで良いのです!ほんの少しの時間でも良いです。
理由なら私の後任を決める為に、ということでも構いません。
視察をお願いします!」
「お、おぅ。
分かった。分かった。
そこまで言うなら明日時間を作って見に行こう。」
よし!これで軌道に乗った!
「っ!ありがとうございます!」
「だが、分かっているのか?それで……」
「大隊長!明日、お待ちしております!
では、このようなお時間でもありますし、私は失礼致します。」
あまりの嬉しさに大隊長の発言を遮ってしまった。
が、もういい。左遷されるのも慣れた。
適任が居るなら、今すぐにでも代わって欲しいぐらいなのだから。




