第112話 選択肢
日吉とシアラちゃんの話し合いがどうなるのか俺には分からない。ハーシャ奥様も付いているんだ。何も心配は要らないだろう。
俺が仕事を代わったあたりで、ガルフは起きてきて、早速と言わんばかりに足に擦り寄ってきた。抱っこしてほしいのだろう。
普段ココには居ないミイネをチラリと見たが、脅威は無いと判断したのか、興味が無さそうだった。しかし、俺の腕に乗ろうとして、腕の匂いを嗅いだら、途端にミイネを威嚇し始めた。俺の腕からもミイネの匂いを感じたのだろう。
「おい。ガルフ。
あの女性はミイネと言って、俺の大切な人なんだ。ミイネを傷つけたら、俺が容赦しないからな?普通の人より体が弱いから特に注意しろよ?」
「ウンー……ニャ!」
渋々と言った様子ではあるもののガルフは了承してくれた。
ミイネはガイ部長と色んな事を話しているようだった。日吉の代わりに仕事をする俺にはその声がよく聞こえなかった。
暫くしても日吉達が戻ってくる事も無く、その前にガイ部長とミイネの話が終わったようだ。ミイネがガイ部長と一緒にこちらへ近寄ってきた。
何か話があるのだろうか?しかしこの仕事は動き続けなければならない。ミイネが並走するのは無理だろう。それはミイネも分かっているようだった。
「シュン。その魔物は大丈夫なの?」
「ああ。ガルフと言うんだ。日吉が拾ってきた。魔物だからか頭も良いから、言えば大体聞いてくれるんだ。」
「そう。じゃあ、ガルフさん?そこの場所を代わってくれないかしら?少しだけシュンと話がしたいのよ。」
「ンニャ!」
「ガルフ!」
「ウンー……ニャ!」
ミイネの願いにガルフは1度断るも、俺が注意すると、仕方が無いと言わんばかりに渋々鳴いて腕から降りて、普段寝ている場所に行った。
「ガルフさん。ありがとう。
フフッ。魔物なのに、なんだか可愛らしいわね。」
「しかし、日吉も居れば余裕だけど、今は1人だからな。先程よりも揺れるから注意が必要だぞ。それで良ければ……だが、既に汗も滲んできたから、俺は汚い。ミイネの服を汚したくは無いし、汗で腕も滑りやすくなってるから危険だぞ?」
もふもふのガルフですら良く滑っているんだ。魔物としての力があるから踏ん張ったり俺の首に手を回したりして、落ちる事は無かったのだが、ミイネではかなり不安だった。
「なら、ちょっと待ってろ……ミイネさん、これを使えば良い。」
汗だくの状態で抱っこするのは気が引けたのだが、ガイ部長が俺の寝室まで素早く出入りしてミイネから買ったタオルを持ってきた。
タオルを腕に巻き、汗で滑らないようにしてから、スキーのリフトのようにミイネを拾い上げる。座る場所はタオルで何とかなったけど、胸も汗で滲んでいる。結局、寄りかかるためにミイネの服を俺の汗で汚してしまっていた。
「すまん。ミイネ。」
「良いのよ。この仕事がどれ程大切なのかガイ様から聞いたわ。それで流す汗だもの。汚い事なんて無いわ。」
「なるほど。恋の……」
「予感ね。フフッ。シュンの調子が戻ってきて何よりだわ。」
棒を片手で押しながらも2人で笑った。
こんなに楽しい仕事は初めてかもしれない。
「ねぇ。シュン。以前、ハーシャ様からも聞いたし、さっきガイ様とも話したのだけど……。ずっと思っていた事があるの。」
「うん?ミイネ。どうしたんだ?」
神妙な顔付きでミイネは俺に質問を投げかけた。
「シュン。貴方達は騙されてない?」




