第106話 野獣と野犬Ⅳ
代表格も残り2人。
その内の魔法使いが、今度は大量の石礫を飛ばしてきた。
風の刃と同じように当たった時に音がするだけだった。色んな種類の音魔法を使うヤツだな。
こちらも対抗して、その辺に転がっている石ころを投げつけてみた。
適当に、そこまで力を込めた訳じゃないのに、運良く魔法使いの足に当たった。しかし、運悪くその足がちぎれ、吹っ飛んでいった。
あっぶねぇ!頭や胴体を狙っていたら、死んでいたな。このぐらいの力でもダメなのか。手加減の具合が全然わからない。
周りのチンピラ共は困惑していたが、どちらかと言うと俺の方が困惑している。
こんなにも差があるのか?
攻撃らしい攻撃をまるでしていないのに、いつの間にか代表格は残り1人だ。
周りのチンピラ共よりも強いはずなんだ。それが、こんな感じだ。
じゃあ、周りのチンピラ共は更に弱いのか?殺さずに倒す方法がわからない。
途方に暮れていると、残ったリーダーっぽい大剣使いが
「多少はやるようだが、俺を他の奴らと同じと思うな!?」
と言いながら、向かってきた。
背負った大剣をそのまま上段から俺の頭上に振り下ろす。
レイピアの優男やナイフ使いのガリ男と同等のスピードで、かつ大剣を振り回す力も持っていた。戦いなんてした事も無く、そのスピードに反応すら出来ず、頭に剣戟をまともに受けた。
あっ!やべぇ。これは死ぬ!っと思ったが、ピコピコハンマーで殴られたぐらいの衝撃しか来なかった。
相手を見ると、大剣はガッツリひび割れていて、大剣使いの両腕の骨が折れ曲がっていた。
「うぐぅ!そんな馬鹿な??まともに入ったんだぞ!
他の奴らは100以上の魔物や人を倒したぐらいだが、俺は300以上なんだぞ!?」
折れた両腕を痛がりながらも、大剣使いは悔しがっていた。
なるほど。割と強いらしい。
しかし、彼らの強さ……大剣使いと他4人の差すらも結局分からなかった。
そんな大剣使いの言葉に、盛大に笑う者が2人。
「フォッフォッ。桁がお粗末じゃのぅ。」
「ヒッヒッ。やはり、その程度じゃ話にならないねぇ。」
ロン様とミラ様だ。
2人の老人に馬鹿にされたと思ったのか、大剣使いは激昂した。
「ふざけんな!たかが奴隷如きに、この俺が負けるはずがない!!」
「フォッフォッ。その奴隷を舐めておったおぬしらに分かり易く教えてやろうかのぅ。
20万じゃよ。100や300程度では力の差は歴然じゃ。比べものにならないのぅ。」
「ヒッヒッ。しかも、こやつは今まで誰1人、倒していない。真逆なんだねぇ。
分かるかぃ?お前達が100人を倒す事は、そう難しくはないだろう?じゃが、100人を生かす事は、不可能だとは思わないかねぇ?
この奴隷はもう1人と一緒に、たった2人だけで、この王都全ての人……20万人もの生命を日々支えておる。そんな者とお前達は今、敵対しておる。勝てる道理は無いねぇ。」
へぇ。この街は20万人も居るのか。知らなかったな。
予想通り、あの装置はこの街の生活を支えているのか。良い事を教えてもらった。
少しだけ、あのクソつまらない仕事に誇りを感じた。




