第102話 美女と野獣Ⅲ
ミイネを連れて、シアラちゃんの食堂へ戻ってきた。
シアラちゃんの両親は、あまり時間が経たずに俺が戻ってきたのと、俺の腕に座るミイネの存在を見て、その2つに驚いていた。
ミイネが降りると言うので屈むと、やっぱり恥ずかしかったのか素早く降りて、シアラちゃんの両親に話しかけていた。ミイネの説得が上手くいったようで、シアラちゃんの母親に連れられて、シアラちゃんの部屋に案内されていた。
ここからは女性同士の方が話しやすいだろう。
ミイネも言っていた。俺や日吉と関わり合いの深い者同士の話し合い。それなら、俺がその場に居るのは相応しくないと思う。
なので、俺だけは食堂で1人、考え事をしながらミイネの帰りを待った。
俺とミイネは自分でも相性は良いと思っている。
強引に手繰り寄せたとはいえ、今では気心の知れた仲になっている。
先程ミイネからも色々言ってくれた事だし。
ただ、日吉とシアラちゃんも負けてないんじゃないかと思っていた。
2人っきりの時を俺は知らないので、断定は出来ないのだが。
俺がそうであるように、当然日吉も力の化け物である。
それと同時に日吉は【食のモンスター】でもあった。
そんな【食のモンスター】ですら、たまに恐ろしいというシアラちゃんの料理。
彼女も一種の化け物なのである。
日吉はシアラちゃんを間違って殺してしまうかもしれない。
だが、シアラちゃんもまた日吉を間違って殺してしまうことが出来るんだ。
この関係性はとてもフェアだと思った。
俺とミイネの関係では、出来ない事だった。少しだけ羨ましい。
そんな事を暫くグルグルと考えていたら、ミイネが目元を赤く腫らしたシアラちゃんを連れて戻ってきた。何をどう言ったのか分からないが、ミイネは上手くやったようだ。
2人で手を繋いで戻ってきたので、確か会って2回目だったはずだが、仲も良くなったんじゃないかと思う。
シアラちゃんは、見た目が日吉とそっくりの俺を見つけて、ビクッとしていたが、ミイネから励まされて2人で笑っていた。
「ミイネ。シアラちゃん。大丈夫か?」
「ええ。シュン。もう大丈夫よ。
ほら、シアラ?怖くないでしょ?シュンもヨージ君も一緒なのよ。
貴方なら、よく知っているはずよ?」
ミイネに抱かれ、ミイネの陰に隠れつつも俺に顔を向けるシアラちゃん。
「う、うん。センパイさん。ごめんなさい。」
「うん?謝る事なんてあったかな?俺は何もしていないし、問題ないぞ?
寧ろ、日よ……ヨージが迷惑をかけてしまって、こちらこそ申し訳ない。」
「い、いえ!ヨージ君に助けてもらったのに……逃げちゃって……。
それで……あの……ヨージ君と、お話することって出来ますか?」
「あいつも数日間落ち込んでいたが、今は復活して仕事しているから大丈夫だ。
ミイネもシアラちゃんも話は聞いているだろ?
俺とヨージの2人だけでやってる仕事だからな。俺が休めるということは、アイツが代わりに仕事をしているんだ。
そうか。そういえば、2人は俺達の仕事を見たことが無いのか。もし都合が良ければ今から会いに行くかい?案内するよ。」
「それは良いわね。
話には聞いているけど、シュン達の仕事ぶりを私も一度見てみたかったのよ。」
「はい!センパイさん。お願いします!」
ミイネとシアラちゃんが頷いたので、職場観光ツアーの開始だな。
この前、ディアナさんが来た時に言ったのだが、見てもあまり楽しいものでもないし、5分もすれば飽きる光景ではあるが、日吉に会いに行くのが目的だから仕方が無いか。
体の弱いミイネを王城まで案内するならば、俺が運ぶぐらいしか方法が思いつかないのもあった。
元々そのつもりだったのかシアラちゃんの準備も出来ているようだったので、さっそく向かうとしますか。
体を屈んで座りやすいようにミイネを迎え入れ、立ち上がる。その光景をシアラちゃんは羨ましそうに見つめていた。
「シアラ?あなたも座る?シュン。もう片方で出来るかしら?」
「あっ!ちがっ。出来ればヨージ君にやってもらいたい……かな?エヘッ。」
「ハハハッ。あいつも練習中だから、出来るはずだ。今度、あいつが休みの時にやってもらえばいいさ。」
「うん!そうします!」
元気な声で頷く、笑顔のシアラちゃんと一緒に俺達の職場へと向かおうとした。
……のだが、食堂を出た瞬間に呼び止められた。
「おい!そこの奴隷!この間は仲間が世話になったな!?」




