プロローグ
白衣を着て眼鏡をかけた如何にも優秀そうな男性医師。
医師は椅子に座り、机の上には小難しい専門用語が書かれた書類の山。
そして机の奥にバックライトがチカチカと数枚のレントゲンを照らしていた。
医師の隣には老夫婦が心配そうに、机の書類やレントゲン、そして医師をチラチラと見て様子を伺っていた。
恐る恐る老婦人が医師へと問いかける。
「先生。それで、結果の方は……?」
医師はため息を少しだけつき、何かに決心したのか、話し出す。
「いいですか?落ち着いて聞いてください。
このレントゲンのこの部分です。2つの影が見えるでしょう?
残念ですが……これは『社畜』です。」
「!!そんな!?」
「奥さん。落ち着いてください。
現状、2つの『社畜』が異世界に転移しています。」
「転移……。それじゃあ、別の物に変異するなんてことも……。」
「誠に申し上げにくいのですが。
『社畜』は何処に行っても『社畜』でしかありません。」
「うぅ。貴方。」
老婦人は泣き崩れ、旦那に抱き留められる。
医師はそんな老夫婦を見ながら淡々と事実を話す。しかし、最後に希望を添えて。
「『社畜』の厄介なところは、本人が気づいていないケースが多いのです。
なので、どうしても発見が遅れてしまう。
そして、いつしか取り返しのつかない症状になってしまう。
ですが、安心してください。
こうして早期発見に至りました。」
「では!うちの主人は治るのですか?」
「先程申し上げた通り、『社畜』は気づきにくいのです。
治る方にも同様ですので、すぐに完治という訳にはいきません。
常に死にそうな状態であるので油断しがちですが、意外な程しぶといのも特徴ですからね。
しかし、大丈夫です。
発見したからには、我々も全力を尽くします。
少しずつ我々と共に、頑張って行きましょう!」
「はい。先生!」
「よろしくお願いします。先生。」
医師と老夫婦は固い握手を交わす。
こうして、社畜は異世界に転移した。
初めましての方も、そうじゃない方も、
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