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96話 反発少女復活班

 チマツリー村の、村長の家。

 外出中だというおさを待ちながら、シンジは状況の把握に努めていた。


「武の団長のビエニカさん、あとロキ。二人が前に出て、世界が拡がったことをこの村の人に知らせていた。以上。……まさか、それだけ?」

「それが、何をどうしたら交戦状態になるわけ!?」


 綺麗な眉をひそめ、あきれ声で思いを代弁してくれるのは、これまた綺麗な赤紫色の髪を持つ美女――そう、レイだ。

 強面のオークを、物怖じすることなく睨み付けている。


「がはは! それは俺も知らん。いきなり襲ってきやがったからな!」


 レイは、今度は村の住人を睨み付ける。

 睨むと言っても、その綺麗な眼をキリッとさせて見つめているだけ。

 シンジにはそう見えていたのだが――何故か、村人は怯えた顔をして焦り始めていた。


「す、すまねえ!」

「んだ! チナマッグのヤツらがまた襲ってきたと思ったんだべ!」

「おらが、世界が拡がったなんて嘘つくからだ!」

「そうだそうだ!」

「やんややんや!」

「嘘じゃねえって言ってんだろ!」


 状況が掴めない中、今度は口論が始まってしまう。

 て言うか、やんややんやって何?

 などと思いつつも、シンジは冷静に状況分析を始めていた。



 ――先ほどは、本当に危ない状況だったようだ。


 シンジとレイの二人は、『反発少女復活班』を担当することになった。

 復活に必要なのは、おじいさんの『願いを叶える力』と、女の子の復活を心から願ってくれる誰か。うってつけなのが、その女の子が初恋相手、そして初失恋相手だと嘆いていた『ロキ』なのだ。


 でも、まさかレイと二人で行動することになるとは……というのは、ただ嬉しいだけとして。

 でも、コタロウに借りた視界画面には、ほぼいつもミュウが映っているから、どこか監視されているように感じてしまう。

 決してやましい気持ちなどは持っていないのだが……。


 シンジは自身の力を使い、ウッホを飛ばしてロキの後を追っていた。

 その距離が一キロメートルを切ったあたりで、斜め通りから少し外れたところに集落のようなものが見え始める。

 そして、ようやくロキたちと思われる姿をぼんやりと捉えたのだが……何故かわからないが、住人から弓矢を向けられているようなのだ。


 その場までは、まだ五百メートルほど離れている。

 肉眼ではまだほとんど見えないのだが、視界画面から聞こえるコタロウの声が教えてくれていた。

『やばいぞ! おい、シンジ、大声出して止めさせろ!』

 コタロウの声に反応し、シンジは目一杯の大声で制止を言い聞かせようと試みる。


 言い聞かせる力の強化は、思念を伝達出来るようになっただけではなかった。

 そう、声の大きさも大幅に上がっていたのだ!

 ミュウは、さも羨ましそうな顔で教えてくれたのだが、実のところ『やっぱり……』以外の感想は持ち得なかった。

 それが、まさかこんなにも早く役に立つときが来ようとは――


 え、これ、自分の声?

 と疑うほどの大声は、五百メートル先で弓矢を構える住人に届き、制止させることに成功する。

 ただし、一度に言い聞かせることが出来るのは十人まで。そこには十人以上の住人が居たらしい。


 言うことを聞かずに矢を放ってしまった住人もいたようだが、どうやら狙いが外れたらしく、事なきを得たようだった。

 ロキなら衝撃波でなんとか無事に切り抜けることが出来たかもしれない。

 でも、わからないことばかりなのだが――弓矢を向けられる中、何故か大柄のオークが、ロキの胸に耳を当てていたのだという。

 そんな状況では、ロキもまともに拳を振るうことが出来なかったのではないか。



 ――という、本当に危ない状況だったのである。


 では、何故この村の住人は、ロキたちを敵対視しているのか。

 それは単純で、チナマッグという村の住人と間違えたから。

 そこの住人は、いつも『世界が拡がった』などと嘘を吐いては村を襲いに来るのだという。

 そして運の悪いことに、ロキたち調査隊の目的は『世界が拡がった』という事実を知らせること。


 とは言え――何というか、もう少しうまくいかなかったものだろうか。

 何となくだが、上から目線で『知らせに来てやったぜ!』みたいなことを言ったのではないだろうか?


「なるほど。そんな子供だましの嘘を吐くような低俗な連中だもんね。そりゃ、ロキを見て間違えるのも仕方ないか」

「仕方あるかっ!」


 レイの言葉に一人納得したシンジは、この場を収拾させることにする。



「世界が拡がったのは本当です。彼らが騎士団員なのも、信じられないでしょうが本当のことです」

「おぉ、本当だったのか……」

「んだけど、騎士団員ってのはまんだ怪しいべ」


 ロキたちも、チナマッグに知らせる役目だったなら、心から信用されて感謝されたに違いない。

 やはり、ただ運が悪かったのだ。と思うことにする。


「じゃあ、変異種に怯えることも無くなったのか?」

「んなら、チナマッグのやつらももう襲って来ねえべか?」

「――それ、どういうこと? そもそも、なんでチナマッグの人たちはこの村を襲うの?」


 レイの問い掛けにだけ、住人は相変わらず怯えのような戸惑いを見せる。

 まさか、この村では美人が珍しいとでも言うのか……?


「そ、それは……」


 何やら言い淀む村人に、レイはため息とともにシンジを一睨みする。

 『あんたから聞いて!』というサインなのだろう。

 シンジは瞬時にそう理解すると、レイと同じ問い掛けをした。


 レイの時とはうって代わり、鋭意言い聞かされ中の人が『喜んで!』と言わんばかりの表情で答えてくれた。


「はい。ヤツらの狙いはただ一つ――アカネ様です」

「……アカネ」

「様?」

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