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38話 神父会議の場所と日取り

 ここ一か月間の振り返りを終えたところで、俺の部屋には山羊の神父の訪問があった。

 転生者の目線画面を六つ、俺の不審且つ不細工な姿が映る神父の目線を一つ、合計七画面を空中に表示したまま、神父と向かい合う。

 ただし、その転生者画面のうちの一つは、依然真っ黒なままだったのだが――


「タロさん、神父会議の場所と日取りが決まりましたぞ」


 俺の名前は『小山田おやまだ小太郎こたろう』。

 日本人の、氏名欄の筆頭記入例である『山田やまだ太郎たろう』に『小』を二つ加えただけの名前だ。


 神父に『コタロウ』と伝えたところ、いろいろ口にした結果、ただ呼びやすいという理由で『タロさん』に決まっていた。

 物語に登場する機会も無い俺の名前などはどうでも良いのだが、久方ぶりに自分の名前を呼ばれた気がして、実は少しだけ嬉しかったりする。



 ――神父会議のことは、神の子認定されてすぐに教えてもらっていた。

 年に一回、四つの国から選ばれた神父二名ずつが一堂に会し、情報を共有する場だという。

 共有するのは、そのときの国の情勢、変異種のこと、神父の近況等々。

 とは言え、ここ数十年は代わり映えのしない老人の世間話の場に成り下がってしまっているらしいが。


 どうやら、神の子認定された俺も望めば参加出来るらしく、一応参加の意思だけは伝えていたのだった。

 神父の目線も欠かさずにチェックしているため、その会議が『二週間後』に『緑の国の城下町キュリー』で開かれることは知っていた。


「城下町のレモーヌ経由で行きますので、余裕を持って九日前に出発しましょうかね」

「……ん? 俺の付き添いで来てくれるのか?」


 神の子が何人まで参加可能なのか、それは不明だが、神父は各国から二名までと決まっているようなのだ。

 おそらく、各国でも神父の立場には上下関係があって、城下町の神父が一番偉いとかあるのだろう。

 だから、まさかこんな辺境のションベン……じゃなくてオネショの村なんかの神父が代表な訳が無いと、そう思っていたのだが――


「おや、こんな辺境の村の神父が国の代表であるはずが無いと? それは心外ですな。紛れもなく、わたしがこの国の代表神父ですぞ。ふぉっふぉ!」


 神父は口を大きく開くと、歯ぎしりをしながら自慢げに笑い出した。

 と、言うことは――代表神父は輪番制で決めているのだろう。きっとそうだ。

 それと、そう言えば余裕を持って九日前に出るとか言っていた気がするが、余裕を取り過ぎではないか――



「まさか、徒歩で行くなんてしないよな?」

「ふぉっ! まさか、徒歩で行かないなんて思ってないですよね?」


 質問を否定する質問で返されてしまった。


「嘘だろ……ウッホ車を使わないっていうのか?」


 この世界の馬的な存在は、ホースのからだにウルフの頭を乗せた見た目のウルフホース、通称『ウッホ』だ。

 これまで行商人や騎士団が、漏れ無くウッホが引く荷車に乗っていたから、てっきり長旅ではそれが当たり前だと思ったのに――


「もしもウッホたちと会話が出来て、自らの意思で『乗せてあげるよ!』とでも言ってくれない限り、わたしたちは生き物を酷使するなど出来ません」


 たしかに――『馬は人を運ぶための生き物』『馬は競馬場で競う生き物』などというのは、人間が勝手に決めたことだ。

 そこに馬の意思があるのなら、『何で人間を乗せないといけないの?』『何で鞭打たれてまで走らないといけないの?』という疑問を抱くに違いない。

 仕方が無い、ウッホの旅は諦めよう。


 ここ一か月、神父と同じ規則正しい生活を余儀なくされている。

 食事も、肉を一切食べないし量も少ない。

 それに、執筆の合間には町中を練り歩き、住人を肉眼で捉えてきたのだ。

 体型も意思も、着実に真っ当な人間に近付いていて、肥えた白豚が痩せ気味の豚くらいには変わったことだろう。



「ところで、もう一人の代表神父は誰なんだ? 俺が参加することは知ってるのか?」


 レモーヌまでも、なかなかの距離がある。

 この神父を信用していない訳ではないが、『やっぱりダメみたいですじゃ。先に帰っててね!』などと言われたら、なんだかツラい。


「もう一人はレモーヌの神父ですじゃ。レモーヌは大きな街ですからな、神の家も此処などとは規模が異なります。神父五人を飼い慣ら……じゃなくて、まとめあげる、大神父さまなのです。しかも、それはもう可愛い、ニャンちゃん神父なのですじゃ!」


 なるほど。じゃあ、会議には大神父とやらの参加は決定事項で、他一人は輪番制ということか。

 あるいはあみだくじかじゃんけんで決めているに違いない。


 ていうか、飼い慣らされてるって言おうとしなかった? それに、可愛いの? 神父は漏れずにヨボヨボだと思ったけど、まさか若くて、しかも女性ってこと? これまでこの世界に、転生者以外に美少女要素が無かったから――俺、期待しちゃうよ?


「いろいろな意味でご安心を。あなたが神の子だという事実は大神父に伝わっておりますし。それに、過去にも神の子が参加したこともあるのです。もしもダメと言われたら、それはあなたの見た目……いや、神の子度が低く見えてしまうせいでしょうな。ドンマイですじゃ」

「見た目って言おうとした? しかも、神の子度って何!?」


 おそらく、黒髪というだけで神の子度はかなり高いものと思われる。

 でも――そうだ、会議が開かれるのはあの緑の国なのだ。

 あのドクターのせいで、黒髪というだけで危険が伴うのだ。

 髪の色を変えたら、それこそ神の子度ゼロの不審者にしか見えないだろうし……それっぽい帽子でも被るか……



 それと、レモーヌに行くのなら、予知子よちこちゃんとの対面も考えるべきだろう。

 今もまだ滞在しているようだし、何ならこの世界の拠点にしたいと言っているくらいに、その町がお気に召したようなのだ。

 視界からは、彼女が今どこにいるか特定出来るし、対面自体は何の問題も無く出来るだろう――と、思われる。


 と言うのも、俺のスキルの制約により、対面自体が干渉判定されてしまう可能性もあるのだ。

 その場合は、まるでお互いが反対の磁極を持つように反発し合うか、二人を結ぶ道路が工事中とか運命的な支障が生じるか。

 あるいは、転生者と一定距離近付くと、その視界を見ることが出来なくなるとか。


 ――もしも対面が叶ったとしても、俺はきっと、何も喋れなくなるだろう。

 それは、オーク族の女よりも気が強いという最強の女を前に、萎縮して言葉が出ないから。

 というのも大いにあるが、声を発すること自体が干渉判定される可能性が高いのだ。


 ここでもしも、俺の力を知ることができる復讐女が同じ場にいれば、話は変わってくるのだろうが。

 でも――そもそも三者が同じ場に居合わせることなど考えられない。

 それに、威圧感が二倍増しというか二乗増しくらいになりそうだから、勘弁願いたいという思いも強いのだが。


 取り敢えず、どの程度まで干渉出来るかを知るまでは、こんなことを考えてもあまり意味が無いだろう。



 可愛い大神父と会えるのが楽しみなのか。

 神父はニコニコと、歯ぎしりをしながら軽い足取りで部屋を出て行った。

 意識を空中の画面に向け直すと、青の国の二人の画面には、角度違いで羊の神父の姿が映し出されていた。


 二人もまさに今、神父会議の場所と日取りを教えてもらっているところだった。

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