31話 別世界の歩き方
「別世界の歩き方」
第一章『別世界の創造と、創造主の願い』
――昔々のこと。
万物の創造主は、この世界とは別の世界を新たに創造した。
その別世界は、一度の時に四つの季節が織りなす素晴らしい世界。
だがその世界では、主も想像し得ない事態が起こってしまった。
世界の真ん中には、四季の交わりが生じる。
その交わりの地からは、主の力をも超えるような、強大な力を持つ魔物が次々と生み出されてしまったのだ。
魔物はその世界を跋扈し、人々の脅威となった。
魔物を排除したくても、主は創り出す力しか持たない。
そこで主は、交わりの地に『無』を創造することにした。
これにより、新たに生み出される魔物の存在すらも無くすことが出来た。
主は次に、既に生み出された数え切れない魔物をどうするか考えた。
あるとき、主は気付いた。無を創造してからというもの、魔物は交わりの地に近付くことをせずに、ある一定の距離を保っているのだ。
無をただ恐れているのか、あるいは無に近付くほどその力が失われるのか。
人々も魔物のそんな習性に気が付き、交わりの地の近く、魔物が生息しない地への移住を始めた。
主は、広大な別世界に限りを設けることに決めた。
人々が居住する地の外側に隔たりをつくったのだ。それは、世界の割れ目と呼ばれた。
その割れ目は、何者も、魔物もですら超えることが出来ないものだった。
――長い、長い時が経過した。
主の創造の力は有限で、その力は僅かを残すのみとなった。
創造したものはいずれ、終わりを迎えるだろう。
だが、主はここで、自らが犯した過ちに気が付いた。
始まりは終わりを迎えるが、終わりは始まりを迎えてしまうのではないか。
力を失うことで、主が創造した無だけは、始まりへと帰ってしまうのではないか。
強大な魔物は主の力を超えるもの。別世界が終わったときに、今度はまた別の世界に影響を及ぼすのではないか。
主は考えた。主は創り出す力しか持たないし、そもそも、無いものを無くすことは出来ない。
とすると、無いものを無かったことにするしか無いのではないか。
つまり、主が創造した無を、主が創造する前の時まで戻すしか無い。
さらに厄介なことに、無は、そのままでは戻すことが出来ないのではないかと考えられた。
まずは無を存在させる、あるいは存在定義を持たせて、それからでないと時を戻すことが出来ないのではないか。
そのために必要となるのは、『無に干渉する力』あるいは『無を有にする力』。
無を認識する、目視する、触れる等、干渉することで存在定義を持たせる。
無を有にする、即ち存在させることで再び魔物が生み出されてしまうが、同時に時を戻せば危険は伴わないだろう。
無を有にするのは、人で言えば生を与えるのと同様のもの。
それは主にも可能なのだが、創造した無を有にするのは、死人に再び生を与えるようなもの。
主は、生み出すことは出来ても、再生することは出来ないのだ。
主は、創り出す力しか持たない。
創造以外の、自身が持たない力を魔法と呼び、主は魔法を欲した。
その中でも主が欲したのは、
『時を戻す』『無に干渉する』『再生する』
それらを可能とする魔法だった。
僅かな力では、そんな魔法を生み出すことも叶わなかった。
無をそのままにしたまま力を失うわけにもいかない。
ここで、主は、とある憶測を持った。
強大な魔物の中にはきっと、主が望む魔法を持つ魔物もいるに違いない。
そして、一つの結論に至った。
主は三つの理をつくり、そして、別世界の人々に頼ることにした。
理の一つは、魔物を討伐することで、その魔物の魔法を得られること。
創造が出来ないなら入手してもらうという、完全な、そして危険な人頼みだった。
もう一つは、その世界に存在する四季の国に一体ずつ、外側の魔物を生息させること。
魔物を呼び寄せるため、主は世界の割れ目に、魔物が通ることが出来る『道』を創り出した。
その道は外から内への一方通行で、一体のみ通行可能なもの。
内側の魔物が討伐されたときに、外側に生息する一体にのみ可視化されるものとした。
とは言え、別世界の人々はそんな魔物を討伐する力など持たない。
そこで主は、魔物に対抗し得る、魔法を持つ人間を創り出す事にした。
限られた力の中では、ある一定の期間に一度、とある六人の人間に魔法が宿る、という理を創り出すのが精一杯だった。
それが、三つ目の理。
魔法使いには、他の人々と異なる容姿を持たせた。
もはや主には、待つことしか出来なかった。
力を失う前に、魔法使いが願いを叶えてくれることを――




