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174話 墓男
百年前――とある地に、一人の男が生を受けた。
生まれながらに特殊な能力を持ったこの男は、物心が付くとすぐに、自身を『異世界からの転生者』だと悟った。
男は、人の願いを叶えることができたのだ。
人が、心の奥底から強く望む願い。たとえそれが私利私欲にかられた願いであっても、その願いは、男の耳に届くだけで叶えられた。
男は、そのことに気が付くとすぐに、自分の耳を潰した。本当に必要な願いだけ、男が心から叶えてあげたいと願ったものだけを叶えるために。
五十年という短い生涯を終える瞬間、男は最後に願った。それは、男にとって最初の願いでもあった。
決して人目のつかない場所に自分の墓を建てること。
五十年後、強い願いを持つ七人を、自分の墓へと案内すること。
その願いは遺言となり、男の子孫により叶えられた――