152話 初期設定
何の話をしてたっけ……あぁ、そうそう、プレイ時間のことだったね。
八十分しかプレイが出来ないけど、物足りないと思うなかれ。
実はね、異世界の時間の流れは現実よりも早いの。
現実世界での八十分が、異世界ではなんと一日に相当するの!
……さっき、最長で八十分とか言ってなかったかって?
あんた……意外と人の話聞いてるのね。びっくりだわ。
えっとね、実は、プレイ時間を代償に能力値を高めることが出来るの。
うんうん。あんたは絶対に喜ぶだろうなって思ってたよ。
……最強の俺なら三十分もあれば余裕だって?
アホか! あんたが選んだのは、誰よりも動きの遅いオークだよ? モンスターの巣に辿り着くより先に時間切れになるわ!
――説明を続けます。
これはさっき、種族を選ぶときだけど。あんたのせいで説明できなかったこと。
基本的に、全ての種族の、初期の能力値の合計は一〇〇と決められているの。
人間は全てにおいて平均値で、あんたが選んだオークは、力と体力の合計がほぼほぼ一〇〇だと思ってもらって良い。
……うん、最強だね。素早さが最低値なのを除けば、ね。
この世界では、モンスターを倒す以外にも、ミッションを達成するとレベルが上がるの。
例えば、アイテムを何種類手に入れるとか、マップの何パーセントを踏破するとか、フレンドを何人つくるとか。
レベルアップすると、初期能力に応じて能力値が上昇する。
具体的には、初期能力の二パーセントが、レベルアップ毎に上昇するの。レベル五十で、初期能力の倍になる計算だね。
つまり、オークだと、とにかく力と体力だけがすごく伸びる。
……うん、最強だね。素早さがほぼ最低値のままなのを除けば、ね。
実は、能力値以外にも種族の特性があるの。種族スキルっていうんだけど……まぁ、それは追々説明するとして。
――で、本題だけど。
種族数が多いと言っても、全ての種族において初期能力値は決まっている。
だから、プレイヤー間で差がつくとすれば、レベルくらいのもの。もちろん、ゲームの上手い下手もあるだろうけどね。
……俺は生身でも、レベルゼロでも最強だって?
わぁ。すごいね。
じゃあ、具体に説明します。
一日にもらえる行動ポイントは八十と決まっている。
これを一ポイント減らすことで、好きな能力の初期値を二ポイント上昇させることが出来るの。
言っておくけど、今後ずっと、一日にもらえる行動ポイントが少ないってことだからね。
とは言っても、種族を変えれば行動ポイントも元に戻るよ。レベルも初期値に戻るし、また初期設定からやり直すって感じかな。
――さて。行動ポイントを上手く消費すれば、種族特有の弱点だって補うことが出来るの!
そう、あんたが選んだオークだったら……そうそう、力と体力をさらに上げまくって――って、アホか!
どんなに力と体力があっても、素早さが最低値なんだよ?
攻撃が当たらないし、避けることも難しい。やられることはないだろうけど、それじゃレベルも上がらない。
……行動ポイントを五十消費して、力と体力を五十ずつ上げろって?
……はいはい。とりあえずそれで進めまーす。
――ここまできたら、あんたに決めてもらうことは、あとたったの二つ。
……はいそこ、まだ二つもあるんか、とか言わない。
行動ポイントを消費すれば、個性を伸ばすことが可能だけど――例え能力を上げれるからって、プレイ時間を削るのは勿体無いと感じる人もいるでしょう?
そこで登場するのが、固有スキルなのです!
……うん。そうだね、さっきチラッと話したのは種族スキルだよ。
固有スキルは、種族とか関係なく、プレイヤーが一人一つ、望むものを習得することが出来る。
そう、望むなら、どんなスキルでも。
スキルは、大きくは二つに分かれる。
一つは、発動系スキル。
スキルポイントを消費して、好きなタイミングで発動することが可能。
その手からは、斬撃でも炎でも氷でも放つことが出来る。その身を守るシールドをつくることも出来るし、傷を癒すことだって出来る。一時的に、能力を爆発的に上昇させることも可能。
もう一つは、常時発動スキル。
こっちはスキルポイントに関係なく、常に発動しているの。
例えば、能力値を常に上昇させるのが最たるものかな。
上位スキルだと、一つの能力を最大で四倍にするとか。二つの能力を最大で二倍にするとか。
――どう? なんか、スゴそうでしょ?
あんたの場合、また最強目指して突っ走りそうだけど……。
とりあえず、説明を続けるよ。
スキルにはレア度というのが設定される。
どんなスキルでも習得出来るけど、よりレア度が高い――要するに、よりすごいスキルほど、レア度が高く設定されるの。
例えば……わかりやすいのは、蘇生の力かな。
これは、レア度が最高値の一〇〇に設定される、すごい力。
プレイヤーのレベルが一〇〇に上がることで、ようやく一〇〇パーセントの確率で蘇生が可能になる。
ちなみに蘇生の成功率は、レベル十でようやく一パーセント。レベル八十でようやく五十パーセントに上がる。ってな感じ。
つまり、レア度に応じて、完璧に使いこなすには相応のレベルが必要ってこと。
低レベルでも便利に使いこなせるスキルを選ぶか、迷うとこだね。
常時発動スキルも同じ。
一つの能力値を最大四倍まで上げるスキルは、最高レア度に設定されている。
レベル一〇〇でようやく四倍に達するんだけど――二倍の上昇率になるのはレベル六十なの。
一つの能力値を最大二倍まで上げるやつだと、レア度が三十。
お手軽さを選ぶか、ロマンをとるか……悩ましいよね。
次に、スキルポイントのこと。
プレイヤーには、種族に関係なく一〇〇ポイントが付与される。これは、レベルにも関係しない。
発動系スキルの場合、発動すると、レア度と同じだけのスキルポイントを消費する。
つまり、最高レア度のスキルは、一度の使用でポイントが全て無くなるってこと。
でも、安心してほしい。一分経過する毎に、二ポイント回復するから。
……プレイ時間が三十分の俺は、六十ポイントしか回復しねぇじゃねぇかって?
うん、そうだね。ドンマイ。
――てことで。
さぁ。あんたは、どんなスキルを望む?