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125話 NPC

 黄の国、城下町レモーヌの神の家。

 反発少女復活班が戻ると、休む間も持たずに話し合いは始まった。


 参加者は、およそ一か月前、同時にこの世界へとやって来た転生者七人に、猫神父キィを加えた八人。

 先ずは、新たに憶測された『意識世界』について話し合う。

 次に、その憶測を踏まえた上で、今後の方針を決める予定とされた。


 反発少女がこの世界に復活した今、見えない壁を通り抜ける手段が復活したことにもなる。

 ただし、通り抜けた実績があるのは外側の壁だけであって、世界の中心に立ち入れるかどうかは未だ不確定ではあるのだが……。



 ――赤の国で反発少女……アオイを復活させたレイたちは、すぐにチマツリー村へと戻り、ロキを連れ赤の国の城下町へと向かった。

 珍しく神の家に滞在していた大神父コリーと面会すると、世界の中心への立ち入りについて話を聞いた。


「――外側の壁と中心の壁って、同じなわけ?」

「知らん!」

「もしも、この子が中心の壁も切り取れるとして……導かれてもいないのに、立ち入っても良いわけ?」

「……俺らが与えられた役割は、資格を有したやつを世界の始まりに導くこと。ただそれだけだ。お前らが外に出ようが内に入ろうが、俺たちがとやかく言うことは無い」

「ふーん……。じゃあ、入れたら入るけど。あんたたち大神父の立ち会いとかは要らないわけ?」

「わからんが……たぶん、俺たちも呼ばれるだろうな。でもな、一つだけ言わせてくれ。――くれぐれも、赤の草原から立ち入ることだけはしてくれるなよ?」

「えっ、何で? まさか……入った場所によって、壁の中身が変わるとか言うの?」

「たぶんだけどな……立ち入った国の大神父が呼ばれる気がすんだ」

「まさか、赤の国から入ると……呼ばれるのが面倒臭いと?」

「そうだ。がはは! そうだな――ミドリは鋭意傷心中だし、カインは未だキャラ立ちしてないから……お前ら、キィと黄の国から入れ!」

「……」



 ――神の家のダイニングで、八人は一つのテーブルを囲んでいた。


「久しぶりにマサユキ以外と――えぇ、若人わこうどとの会話が出来ますね!」


 キィだけがニコニコと嬉しそうな顔をする一方で、その場にはギスギスした雰囲気が漂っていた。

 アオイは反射的に他人を反発するのか、チラチラと疑うような尖った目線を散らしている。

 ただし、可愛い猫に対してトラウマを持ってしまったのか――美少女猫のキィからは意図的に目を背けているようだ。


 ロキは気まずそうにアオイの様子を窺っているし、ミュウは初見のロキとアオイの力やら何やらをじっくりと確認している。

 レイとシンジは、帰路でのとある出来事をきっかけに、互いに意識してモジモジと距離を置いている。

 マサユキは、皆の無事に加え、復活したアオイの姿を見て感涙している。

 コタロウは、遂に最狂女子が勢揃いし、ひたすら存在感を消すべく萎縮していた。



 改めての自己紹介を終えると、次にアオイから『意識世界』の説明がなされる。


「にゃはは! ――えぇ。アホヒさんの憶測もなかなかに面白いものですね」


 何故に古典風の呼称を選んだのか。

 まるで、わざと三狂の一角を刺激するかのようなその呼称に、コタロウたち男性陣は固唾を飲み反応を待つしか出来ない。


「……確かに、アホみたいな憶測かもしれない。でも、可能性はゼロじゃないでしょ? そこのタコロスって男が言うような異世界なのかもしれないし。

 でもね……わたしからしたら、『異世界って何? ラノベ? アニメ? はぁ!?』って思うわけ。

 ――ネコちゃん、取り敢えずアホヒと呼ぶのはやめて。可愛い猫に殺された経験があるから、可能な限りわたしの視界に入らないで。以上」


 まさかの、視界への出入り禁止となったキィは「にゃ!?」と可愛い声を上げて驚いている。

 異世界説を否定された形となったコタロウだが、それでも、アオイの憶測は素直に面白いと感じていた。

 憶測とはいえ、答えを導くことが出来ないこの世界では、それでも今後の方針を考えるのに重要な判断材料となるのだ。


「あほ……ゴホン。アオイの説も、正直あり得るかなって思う。ここが意識世界だとすると、確かに説明がつくことも多そうだけど……その線で、これまでの出来事を振り返ってみようか」



 レイの提案に、各々がこの世界やって来てからのことを思い返す。

 先ず、口を開いたのはシンジだった。


「目を覚ましたとき、僕が先ず見たのは緑の草原だった。皆は赤とか青とか黄色とか、現実ではあり得ない草原の中で目を覚ましたんだよね? ここが意識世界だとすれば、どんな景色でも思い通りにつくれるんだろう」

「特殊な力も……変異種だってそうだよね。想像が出来るものなら何でも、この世界に存在させることが可能。……そうか、せめて宿す力は好きなものを選ばせやろうって、墓前で願わせたのかな……?」

「じゃあ、この世界の住人は? それもつくられた人たちなわけ?」

「あぁ……それはきっと、NPCだろう。わかるか? ゲームで、主人公みたいに操作が出来なくて、情報を与えるとか決められた役割を果たすキャラクターのことだ。ここのNPCは、昔のゲームみたいに同じところをウロウロしたり同じ台詞しか喋らなかったりするわけではないみたいだな」


 意識世界といっても、それは異世界となんら変わりが無い。

 自身の無駄な知識が役に立つとき――と意気込むコタロウは、ついつい早口で説明をしてしまう。

 結果、特に女子陣はあからさまに眉をひそめ始める。


「えぬぴーしー……? なんかペラペラしゃべるキモいやつってこと?」

「アオイ、それは違うと思う。きっと『念願の異世界、記念すべき一歩目で躓いて絶命したキモいやつ』だよ」

「ミュウのそれは長いし、どこがPなんだ!? 一歩目の『ぽ』のとこか? ていうかキモいはCじゃなくてKだろ?」


 アオイも、他の最狂女子と同じくやはり毒ボケ体質らしい。

 何となく自然に受け入れてしまうコタロウだったが、そういえばこれが新参のアオイとの初の会話だと気付く。 



「はいはい。住人はNPC、タコロスはKDBってことで。じゃあ、次は――」


 キモいデブじゃないだろうな!?

 と憤るコタロウはさておかれ、次にレイが挙げたのは、彼女が最初に会った住人――大神父のことだった。

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