夢②
目が覚めたらそこは見知らぬ天井だった。
生きているのか?それとも死んでしまいここはあの世なのか?
「目が覚めたのか?」
男性の声がした方向に目を向ける。
身長が高く少し痩せぎみな男性が目に隈をつくりこちらを見ていた。
僕は小さく頷いた。
男性は安堵したような声で「よかった」と言った
自分の身体をみる、酷かった火傷がなくなっていた。
「俺は◯◯。医者をしている。君の火傷は思ったよりも大したことがなかったようだったよ」
少年の疑問に答えるように彼は言った。そんな筈はない。少年には医学の知識はないが、アレは大したことはないと言えるようなモノではなかった。しかし、少年は反論しようとは思わなかった。
~
少年は◯◯と名乗る男性と散歩をしていた。
「おじさんはどうしてそんな悲しそうな顔をしているの?」
少年は問う。
「おじさんはね、大切なモノを守ることが出来なかったんだ。もう失わないと決めたんだけどね」
「そしてそれを犠牲にしてまで選んだ結末が・・・」
「いいよ、答えたくないなら」
◯◯は答えたくなさそうに話していた。辛そうに悲しそうに・・・
「おじさんはね、正義の味方になりたかったんだ。弱き助け強きをくじくそんな正義の味方にね」
◯◯は子供の頃に掲げていた夢を語ってくれた。
「でもね、テレビのヒーローのように全てを救うなんてことは出来なかったんだ。誰かを助ける以上、誰かを犠牲にしなくてはならない。正義の味方なんていうのは夢物語だったんだよ」
諦めたように◯◯は言った。
子供の僕には彼の言っていることはわからなかった。でも少なくともあの時自分を助けた姿は正義の味方にみえた。
「しょうがないなぁ、それなら俺が代わりになってやるよ。おじさんが目指した正義の味方にな」
少年は自信満々に言った。
これが夢の始まりだった。