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03 目覚め

「起きて」

「………………」

「ねえ、起きてってば」

「んあ………」

「あ、起きた?起きたわね?まずは妖精への転生おめでとう、新たな同胞。ここは妖精界、妖精が暮らすあたしたちの国よ」


 ………夢か。


「ぐー」

「ちょっと、わざわざあたしが説明してやったのに、なにまた寝こけようとしてんの」

「あいだっ!?」


 灰色の髪をポニーテールにしている美少女に、覗き込まれながら起こされるという男子垂涎の状況を夢と断じた俺は、すぐさま二度寝に移行しようとし、額をどつかれた。


「ん、あ?痛い?これ現実??」

「そうよ。あなたは転生してきて、ここに女神に落とされたってワケ」


 ああ、思い出した。

 俺は確か、地球で死んだっていきなりテキトーそうな女神に言われて。

 で、ルーレットで妖精ってのを引き当てて、碌な説明もないままに意識が………


「あの女、本当に女神だったのか」

「転生して最初の質問がそれってのはどうなの、と言いたいところだけど、あたしも気持ちはわかる。ところであなた、前世の記憶はある?」

「ん?あ、ああ。割としっかりと」

「どこから来たの?」

「えっと、日本ってとこから」

「二ホン?聞いたことないわね。てことは新しい異世界転生者か」


 この辺りで俺の意識がようやくしっかりしだして、この状況をハッキリと掴めるようになった。

 俺は、なにやら凄まじく幻想的な世界にいた。

 俺の想像する「天国」って感じに、ちょっとファンタジーと中世文明を足したような雰囲気。

 そして俺は、雲で出来た丘の上で、恐ろしくデカい木にもたれかかって座っていた。


 そして、俺の事情を知っているらしい目の前の子もまた、ファンタジーな見た目をしている。

 灰色の髪のポニーテール、この時点で日本人じゃないことは丸わかり。

 そして、すごい美少女だ。少し気が強そうな釣り目に、小さい鼻と口。目は髪と対照的な黄色で、どことなく猫を連想させる。

 紺色の可愛らしいドレスを身にまとい、こちらを見つめてくるその様子は、まさしく俺の望む異世界転生、そのヒロインのありのままの姿と言っても過言ではなかった。

 そして、何より特徴的なのが、羽根。蝶のようなその美しい羽根は、彼女が妖精であるということを思い知らされる。


 ………しかしなんだろう、この違和感は。

 いつもの俺なら、こんな美少女を見たらもっとこう、ドキドキするものなはずなんだが、何故か平常心が揺らがない。


「ちょっと、聞いてる?」

「え、あ、ごめん。ボーっとしてた」

「しっかりしてよ、大事な話してるんだから。兎に角、あなたが異世界転生の妖精なのはわかったわ。立てる?」

「ああ、大丈夫」


 俺は木に手をついて、よっこいせと立ち上がる。

 華奢な手足だ。前世とは似ても似つかない、細い手足と白い肌。


「おっとっと………なんだ、体が変だな。ぐらつく」

「そりゃそうよ、背中に羽根があるんだもの。羽根自体は軽いけど、風とかで重心がずれるのよ。まあじきに慣れるわ」


 俺は自分の背中にギリギリまで目を向ける。

 すると、なるほど。確かに俺の背中に羽根が生えている。

 どうやら俺は、本当に妖精に転生したらしい。

 こうなると、自分の容姿も気になるものだが。


「何してるの?そろそろあなたを仲間のところに連れて行かないと」

「あ、ごめん!………ところで、君は俺が異世界転生者だってわかるんだな」

「まあね。というか、妖精族はその半分くらいが前世の記憶を持ってるから。それでも異世界の記憶持ちは珍しくて、大半がこの世界の地上で生きていた時の記憶だけどね」


 え?マジか。

 彼女の反応からして、俺みたいに日本からの転生者はいないみたいだけど、もしかしてもの世界って転生者が溢れた世界なのか?


「一応言っておくと、妖精が特別なだけで、地上の種族は全員、正常な輪廻の輪に入った連中。地上で前世のこと覚えてるような奴は、マジで稀に存在する異世界転生者くらいよ」


 なんだ、そうなのか。


「ちなみに、その異世界転生者の現れる頻度って?」

「地上なら二、三百年に一度、妖精界なら五千年に一度あるかないかってとこね」

「すっくな」


 まあ異世界からの住民なんて、本来いることの方が異常か。


「妖精には三つのタイプが存在するわ。一つ目があなたみたいな異世界からの転生者タイプ。二つ目がこの世界の輪廻の輪から正常な手段で転生したタイプ。これが唯一、前世の記憶がない子たちね。

 そして三つ目が、この世界で一定以上の善行を積んだり、度を超えた不幸にあったような人が、女神の許可を得て転生するタイプ。こっちはもともとこの世界の住民だけど、前世の記憶がある」

「ちなみに君は?」

「三番目。前世の記憶はあるわ」


 てことは、善行を積んだか不幸にあったかのどちらかか。

 何があったかは彼女が話すまで聞かないでおこう。触れられたくない部分の一つや二つ、あるかもしれない。


「えっと、いろいろ聞きたいことはあるんだけど、君に聞いてもいいのかな」

「ええ、そのためのあたしだし。でも歩きながら話しましょう」


 反対方向に歩き出した彼女を、俺は早足で追いかけようとした。

 けど、背中にある羽根にイマイチ慣れず、結果的に歩いた方が速かったのでそうした。


「で、何から聞きたい?」

「えっと、そもそもここはどこ?」

「さっきも言ったけど、ここは妖精界。地上より上、神の世界より下にある異空間。百人弱の妖精がここに住んでるわ」


 百人弱。妖精って結構少ないんだな。


「今、どこへ向かってるんだ?」

「あたしたちが住む村。不便はしないわよ、異世界の知識や前世が技術者だった子たち、それに魔法の力で地上よりはるかに発展してるから」


 妖精界すげえ。

 そりゃそうか、異世界って俺がいた世界だけじゃないはずだしな。

 いろんな世界のいろんな文明を取り入れられるてことか。


「えっと………そういえば、君の名前は?」

「あ、言ってなかったわね、ごめん。ソーナよ」

「ソーナか。俺は………あれ?」

「あー、言おうとしてんのは異世界の名前でしょ?それはこっちの言語じゃ多分表せないわよ」


 そうか、俺、ずっと日本語をしゃべってる気になってた。

 けど、全然違う。この世界の言葉を無意識に放っている。

 彼女もそうだ。けど、何を言ってるのかはわかる。

 自動翻訳みたいなのが働いてるんだな、これはありがたい。

 けど、前世での名前はもう言えないのか、ちょっと寂しいな。

 けど仕方がないか。「蒼花光」はもう死んだんだ。


「じゃあ、俺はなんて名乗ればいいんだろう」

「妖精王に会えば貰えるわよ」

「妖精王?」

「ここを治めてる妖精の王様。まあ王って言っても、この少ない人数じゃただのリーダーみたいな感じだけどね」

「なるほどなあ」


 てことは俺は、これからその妖精王のところに連れていかれるわけか。


「えっと、じゃあ最後の質問」

「どうぞ」

「そもそも妖精って、なに?」

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