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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第12話】おんな2人旅湯煙道中
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FILE084:彼らが再起するとき


 パッファーガイストこと福田銀之丞は倒され、そのまま警察に逮捕された。福ノ湯まで戻ると、2人は虎姫から旅館内の応接室に案内される。そこには、総支配人の福田ユキトとその婦人・福田笑美と――『こよみ屋』の社長もいた。この緊急事態に際して、競争するのはやめて手を取り合おうと考えて集まったのだ。


「……お疲れ様。事件を解決してくれてありがとう、病院に運ばれた人たちの毒は綺麗さっぱり消えたそうだよ」


 こよみ屋の社長・比嘉晄子(ひが こうこ)の隣に彼女――虎姫は座っていた。傍らには秘書の磯村が立つ。彼女が心から安堵した様子で緊急事態の収束を告げた時、アデリーンと蜜月はようやく胸をなでおろすことができた。2人ともそのまま座らず、磯村からの指示に従って部屋の隅で話を聞いて行くこととする。


「まさか父がディスガイストに変身していたなんて……」


「にわかには信じがたいです。義父が事件を起こしていたことは……あなた、気をしっかり」


 顔を手で覆って嘆くユキトを、その妻で左隣に座っていた笑美が慰める。それほどショックを受けていたことは想像にかたくない。


「これからがいちばん、大変な時です。お父様が犯した罪を追及してくる人々が――」


 福田夫妻に励ましの声をかけようとして、虎姫が言い淀んだその時、目を伏せていた比嘉晄子が顔を上げる。赤みがかった艶のある黒髪に赤褐色の瞳にぱっちりと整ったまつ毛、ハリのある肌、スーツ姿ながらもマドンナ然としたその美貌が、誰の目にも凛々しく映った。そんな彼女が重い口を開こうとしている。


「福田社長が犯した罪は彼が償うべきです。ユキトさんが責められる謂われはどこにもありません」


「比嘉さん」


 アデリーンと蜜月が応接室に来る前からもあまり表情を変えてこなかった晄子であったが、彼女はここで長年のよきライバルだった(・・・)福田夫妻にささやかな笑顔をプレゼントする。


「困った時はお互い様です。これからは競争するよりも――お互いに手を取り合って、朝潮の街を、いえ……熱海を盛り上げていきましょう」


「……はい!」


 彼女は周りが注目している中で立ち上がると、目の前の福田ユキトと福田笑美に向けてその手を差し伸べる。暗く沈んでいたユキトにも笑顔が戻り、妻に見守られながら彼も立って晄子の手を握って――ここに誓いを立てた。


「なんだか私たちが出るまでも無かったわね」


「いいんだよ。これで」


 一部始終を見て感銘を受けたアデリーンが腕組みして蜜月へと声をかける。蜜月は少し涙ぐんでいたが、それをやさしく拭きとると腰に手を当てた。



 ◆◆◆



 その頃、東京にて――不気味な装甲車の一団が、白昼堂々と高速道路を横切っている。その中には、みすぼらしい格好をさせられた1人の少女が手足を拘束された状態で座席に乗せられていた。


「……っ」


 髪は短めのプラチナブロンドで、くりくりとしたワインレッドの瞳を持っている。肌はきめ細かく透き通るような白さだ。外見年齢は14~15歳に相当する。


「もう少しの辛抱だ。お前はしかるべき場所で、適切な処置を受けるんだ。かわいがってくれたNo.1や、お前を連れ出そうとした蜂須賀のことは忘れろ」


「自由にしてください。あたしを下ろして、ここから出して」


「口答えしやがって。聞こえなかったのか、このガキャア!!」


 ガスマスクを被り、防弾チョッキなども着て武装した見張り役の男性が少女をぶって傷つける。縛られているので抵抗のしようがなく、彼女は悔しさをにじませる。それを見て鼻で笑うものが1人。Hの文字が遺伝子のように螺旋を描いた形状のエンブレム付きの白いジャケットを着た、長髪の伊達男風な風貌の男性である。


「バカ者、もう少し丁寧に振る舞わんか。――ヘリックスに生まれておきながら、逃げ出そうとしたお前が悪いのさ。これを機に己を省みるのだな、『No.13』よ」


 その男、兜円次(えんじ)は少女を見下しながら部下の1人を諌めて、少女のほうに視線を向ける。自分が優位だと思っているゆえの憐れみを向けたのだ。


「No.13じゃありません。あたしは……『ロザリア』。『ロザリア・スカーレット・ラ・フィーネ』……」


 ロザリアは、暴力を振るって来たガスマスクの男をにらんでその目を光らせると、一瞬だけ――赤く揺らめく炎を発生させて彼に報復、転倒させて苦痛にあえがせた。


「うがあああああああああああああああああああ」


 それを止めるまでもなく、むしろ円次は笑う。彼女を『姉』のNo.0ことアデリーンやNp.1こと『エリス』のように、『不死身の生物兵器』としての有用性を見出したのか、それとも、1人の人間としての可能性に目を付けたのかは、彼のみぞ知る。


「そうだよなァ……。気に入らないヤツは、ああやって痛い目にあわせてやらねばなるまいなあ! だがNo.13よ、向こうに着いたら……今のようなオイタは二度とできなくなるぞ。わかったらいい子にしておくんだ」


「…………嫌いです。あなたたちみたいな卑怯な人は」


 隣にすり寄って、顔を覗き込んでスゴ味を利かせてたきた円次に、ロザリアは唇を噛みしめ、拒否反応も示して顔を背けた。彼女が連れて行かれようとしている先は、道路の看板に記されている――『エイドロン・コープ本社』、と。

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