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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第8話】残酷!魔女・ミヅキ
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FILE051:長いお付き合いとクマンバチと正義の怒り


 有名ハンバーガーショップのチェーン店を後にして、3人で街に出る。ほどなくして、葵が良さげな服や小物を求めてブティックに立ち寄った。今どきの若者が立ち寄るのにはうってつけのこじゃれた内装であり、アデリーンも目を見張るほどだ。


「そういえば、アオイちゃんとリュウヘイはいつ頃から付き合ってたのかしら?」


 店内を見て回りながら、ふと疑問に思ったことを葵に問いかける。彼女は快く聞き入れ、それに答えることにした。


「あいつと付き合い出したのは小学校高学年の時からですね。そこから中学、高校と長いこと続いてて。なんか、まだ高校生なのに熟年夫婦みたいになってるって言うかー……」


「そうなんだ。だから、アヤメ姉さんとも仲がいいのね?」


「それはどうかなー……。綾女お義姉さんとは、もともと波長が合うって言うか。昔からよくしてもらってますし?」


 竜平は2人のやりとりを見聞きしている横で、「そうだっけか……」と困っていた。では葵が自分に都合のいいように脚色していたかと言えば、別にそういうわけでもない。


「……ど、どうですか?」


 パステルカラーがかわいらしい薄手のコートワンピースだ。アデリーンと竜平は、店員が見守る前で彼女が試着したそれと他の色や柄と見比べてみて、熟考してから――意を決する。


「いいんじゃない?」


「よしっ!」


 そろって太鼓判を押した。可憐だし似合っているし、そもそも文句のつけようがなかったのだ。


「2人ともありがとう! これ買っちゃお!」


「判断が早い! これがイマドキ女子……!」


 元の服装に着替えてからすぐに買いたい服をレジへ持っていく葵のその姿勢にアデリーンは大いに驚き、目を輝かせてニッコリ笑う。そして竜平に荷物持ちを任せるとブティックを発つのだった。


「あっ、赤信号よ。止まって」


「俺たちだって交通ルールとマナーくらい守りますわい」


 アデリーンから注意された通り、一同はその横断歩道でいったんストップする。しばらく待って青信号に変わったので移動を再開した。


「ところでアオイちゃん、ご両親はどんなお仕事をされていたのかしら」


「父は単身赴任中で、母はアデリーンさんも知っての通り専業主婦ですね。ひとりっ子なもんで、()()()()()が欲しいなーって思うこともよくあります」


()()()()()、かー。私も実は妹がいたんだけどね……」


 自分の素朴な疑問に答えてもらったお礼か、アデリーンはさらっとつぶやく。さらっと明かされたそのことに対して葵と竜平は目を丸くした。


「そ、それホント!?」


「出生が出生だから、あまり大きな声じゃ言えないけどね。姉が1人、妹が2人いたの。詳しく話すとややこしくなるけど、聞きたいかね?」


 近くのベンチまで移動し、そこで座ったり立ち止まったりして、ちょっとの間悩んだ葵と竜平だったが、デリケートな話題にやたらと触れるのもどうかと思ったので――葵は口をつぐんだ。それでアデリーンを傷つけてしまうかもしれなくて、それが怖かったからだ。


「い、いや、やめとくよ。なっ葵! ……葵?」


「……変なこと言っちゃってごめんね、アオイちゃん。またみんなで集まった時に改めてお話しさせてもらうわ」


「アデリーンさん……。こちらこそ失礼いたしました」


 頭を下げた葵に「いいのよ」と呼び掛け、顔を上げさせる。気を取り直すためにアデリーンが深呼吸したのを合図に、また歩き出す一同だが、その時だった――!


「きゃああああ――――っ!?」


「な、なんだ!? うわあああああああああ」


 とてつもない轟音だ。同時にビルの窓ガラスが割れる音が何重にも聴こえてきた。竜平と葵は思わず耳を塞ぐ。異変を察知したアデリーンは片耳のみ塞いで、状況を冷静に分析する。彼女が元々持っている優れた感覚が原因を突き止めるまで時間はかからなかった。


「これ持ってて! 安全なところへ避難しなさい! いいわね?」


「え? わ、わかった」


「また怪物が出たんだね……」


 とっさに竜平に荷物を手渡し、この場から逃げるように促すとアデリーンは腕時計に仕込まれたギミックを作動させて専用バイクを召喚して轟音が聞こえた方向へと向かう。戦闘となることを考慮したためだ。


「怖いよ……! わたし怖いの……アデリーンさんまで、いなくなっちゃう気がして……」


「怖いのは君だけじゃない、俺だって同じさ。大丈夫、葵は1人じゃない。今は逃げようぜ!」


「……サンキュー」


 葵は以前にカメレオンガイスト=亀澤に襲われ、もてあそばれた時のことを思い出して震えた。竜平は荷物を持ちながらも、震える彼女を抱いて落ち着かせ、励ましてから一緒に逃げる。いつも頼りないと思われるのはシャクだし、こんな時くらい彼女の支えになってやらねば、カッコつかないだろう。


「ガハハハハハハハハ! 平和ボケしたアホ市民ども! どいつもこいつもブッ殺してやるぜぇ~!!」


「やめなさいディスガイストッ!」


 瓦礫が散乱し、逃げ遅れ、逃げられなかった人々が死体となって横たわっている現場に駆け付けると、クマバチのような姿のディスガイスト怪人が暴れているではないか! 救助が間に合わなかった悔しさを噛みしめ、アデリーンは専用バイク・マシンブリザーディアをそのまま突っ走らせて撥ねとばす。コバルトブルーのそのマシンを前に、クマバチ怪人は膝を突いてから身を起こした。アデリーンはバイクから降りると右ハンドルを抜いてビームソードに変えて身構え、臨戦態勢に入る。


「ブブブン! ブブブン!」


 当たり前のように一部が金属化・機械化されたボディは全体的に黄色く、右腕はアイスピックのような巨大なトゲとなっており、首から胸回りには黒くモコモコしたフェイクファーがついている。大きな複眼の下からは悪鬼のような目がのぞいており、凶悪な面構えだ。クマバチ特有の愛嬌はそこにはない。同じハチのディスガイストでも、ホーネットガイストと比べて大柄な体格でもあった。


「まるでクマンバチみたい。ということはカーペンタービー、あるいはバンブルビー……」


「俺は『バンブルビーガイスト』、ヘリックスが雇った殺し屋よ。貴様を捕らえ、愚かな民衆を皆殺しにするために遣わされた」


「えぇ……? クマンバチは正確にはカーペンタービーなんだけど!? そのクマンバチも実は方言で……、今は関係なかったか。どちらにしてもおぞましい姿だわ。嘆かわしい……。クマンバチはもっとこう、かわいらしいのに」


 見るからに凶悪な敵怪人を前にして、少しおどけてみせるアデリーンだが、これには相手を挑発する意味合いもあった。いきなりとぼけられたからか、バンブルビーガイストは地団駄を踏んでいきり立つ。彼女の狙い通りであり、アデリーンはニヤリと笑う。


「うるせェ! んなこたあ生物学の先生に聞けッ!」


 右腕の巨大アイスピックからビームが出た。自分めがけて飛んできたそれをアデリーンはビームソードで打ちはらってかき消す。その顔からはおふざけはもう消え去っていた。――何の罪もない人々をいたずらに殺した敵へ対する怒りは、それだけ大きく激しかったのだ。


「でしょうね。……これ以上の非道は許さない!」


「ほざくなよ、実験体No.0。ヘリックスに生まれし者はヘリックスに還れ!」


 バンブルビーは背中の翅を広げ、激しく振動させると衝撃波を発生させた!周囲が破壊される中でアデリーンは微動だにせず、自身の前で爆発が起きておさまった時には――既に【氷晶】して、青白いメタルコンバットスーツを装着していた。


「えい! やっ! とぉーう!」


 爆風の中を切り抜けたアデリーンはバンブルビーガイストの放った鋭いビームを避けて高く飛び上がり、そのまま切りかかった。バンブルビーはその巨大な針を盾代わりにして身を守る。アデリーンの攻撃は弾かれたが、バンブルビーは反動でのけぞった。


「デッドロックミサイルだッ!」


 右腕の巨大な針が勢いよく射出される! アデリーンは回避したが、そのミサイルは着弾時に地響きを伴って大爆発を起こし、地面に大きな穴を開けた。巨大な針はすぐ元通りに生え、バンブルビーガイストは笑う。


「今のミサイル針といい、意図的に起こした地震といい、さっきの衝撃波といい……。相変わらずどれだけ犠牲者が出てもお構いなしなのね」


 出方を伺いながらアデリーンは表面上は静かながらも怒り、相手の懐に入って浴びせ蹴りを食らわせた。


「虫ケラ同然の一般市民が何人死のうがどうでもいいッ! 資源を無駄に食いつぶすやつらに人権なんぞあるものか! ウワーッハハハ!!」


 卑しく笑うバンブルビーガイスト。完全にヘリックスという組織の思想に染まりきったその発言がアデリーンの怒りに火を注いだ。


「あなた……、人の命をなんだと思ってるの?」


 絞り出すように声を出して、アデリーンはいきなりバンブルビーに突進し、斬りつけてから相手の左肩にビームソードを突き立てた。そこから見る見るうちに凍っていく。


「ひ、人の形をしたバケモノが何ぬかしてやがるッ!? お前はおとなしくヘリックスのもとで不死身の生物兵器になってりゃいいんだあ!!」


 アデリーンは黙ってバンブルビーガイストの左肩からビームソード・ブリザードエッジを抜き、今度はわき腹に突き刺してそのまま敵の攻撃で半壊したビルへと突撃。住民は既に避難した後だったため、そういう意味では心置きなく戦える。――心境的に、今はそれどころではないが。


「人造人間という生まれであろうと、今や私は人間と何ら変わりはないわ。お前の語った歪んだ思想こそ、人の心を捨てた怪物のそれよ」


 左肩や脇腹が凍ったまま、うめき声を上げる敵をアデリーンは容赦なく斬り、左手でパンチし、蹴飛ばす。


「ブブブン! ブブブン! ブブブン……!」


 起き上がりざまにバンブルビーガイストは武器と一体化した右腕で刺突を繰り出す。アデリーンは避けたが壁に穴が開いた。すさまじい破壊力だ。


「ヒーロー気取りが説教垂れやがって! この俺の要求を飲んで捕まらないというのなら、お前もこうなるのだッ!」


「はッ!」


「ブブギャア!?」


 仮面の下で目を険しくしたアデリーンが、バンブルビーガイストの下アゴをなんの躊躇もなく蹴り上げた。倒れこむ前にそのまま何度も斬りつけ、パンチやキックも流れるように浴びせ、宙で旋回しながらの連続攻撃も食らわせた。


「大量破壊と虐殺を楽しむお前も、邪悪な野望に狂ったヘリックスも……。絶対に許さない」


 ひるんでいるバンブルビーの喉元にブリザードエッジの切っ先を向け、バイザー越しにカメラアイを青く光らせる。悪へ対する怒りと闘志が蒼炎となって燃え上がっているようだった。


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