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【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第1話】恐怖のライノセラスは地獄の使者
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FILE003:運命のお導きならば

「あ~! やってらんね~ぜ。ひっでぇ目にあったな~!」


「まったくだよ! カツアゲのついでにナンパもうまく行ってたらなー! ()()()()()()だったのになー!」


「それを言うなら()()()っしょ! ハハハハハ!」


「あ、そうそうそれそれ! 間違っちった~ハハハハハハ!」


 アデリーンに返り討ちにされたチンピラ4人組は何をしていたかと言えば、逃げ込んだ先の路地裏でバカ笑い。まるで懲りておらず、反省の色が見られない。と、その時、大柄な黒服の男性にぶつかってしまう。その男の背後には、同じく黒服で中肉中背の男と、黒服でやせっぽちの男が並んでいた。


「ど、どちらさん?」


「金髪の女と高校生くらいの男を見なかったか?」


「ぼぼぼぼ、ぼくらの記憶が正しければ……」


 嫌な予感がしたチンピラのひとりが自分の後ろを指差す。確証もないのに、()()()()()()()()()()()()()()()()直後、彼は自分の軽率な判断を後悔することとなった。「ニタリ……」と黒服のリーダーが邪悪に笑った時、チンピラグループの背に悪寒が走る。


「正直言って眉唾モノだが、ご協力感謝する。そして君たちは用済みだ」


 ≪ライノセラス!≫


 ガシャポンのカプセル相当のサイズがある球体を取り出して、片手で持ったまま上部をねじった。英語の音声とともに黒くゆがんだエネルギーが吹き出して、黒服のリーダー格の男を包む。そしてその姿はあっという間に、サイのようなクリーチャーへと変化した! 真っ赤に光る鋭い目つき、サイ特有の分厚い表皮のほとんどが機械化・金属化されており、筋骨隆々とした体格もあって、堅牢なイメージを見たものに与える。頭からだけではなく、両肩からも生えたツノがそれをますます引き立てていた。信念はおろか、守るものも度胸も、へったくれもないチンピラを威圧するには、これ以上ないほどピッタリだと言えよう。


「『ライノセラスガイスト』ぉぉぉぉ!!」


 サイの怪人に変身した黒服が己の名を叫ぶ! 直後、悲鳴を上げる間もなく、チンピラのうちの1人が首をへし折られて死亡。もう1人も壁に叩きつけられたショックで惨死する。残った2人は逃げ出したが、既に手遅れ。


「うわあああああああああああ」


「死ねい!!」


 ドリルのように回転する頭部のツノが3人目のチンピラの腹を貫いた! 最後に残った1人、耳と鼻にピアスをしていた馬場という男性は、ライノセラスガイストが睨んだだけで失神。その場で倒れた。


「このガキ、ずいぶんと身勝手で醜い欲望と邪悪な心を抱えているな。しかし殺すには惜しい……ヨコダ! マツモト!」


「ハッ!」


「ワシはあの女を追うから、お前たちはこの社会に1ミリも貢献していないゴミクズを基地へと連行しろ。改造人間の素体にでも利用してやるのだ」


 改造人間の素体とするためにチンピラを1人だけ生かしてやったライノセラスガイストは、部下兼同期の仲間2人に命令を下す。これは役割分担であり、自身が一番大変かつ面倒な役目を引き受け、比較的楽な仕事は仲間に一任するというわけだ。


「まかせろ……お安いご用だ。ハイル・ヘリックス!」


 返事してから、螺旋を描くように両腕を交差させる黒服のヨコダと黒服のマツモト。これがヘリックス式敬礼だ。やりづらそう、というのは禁句である。



 ◆◆◆



 その頃、竜平は立ち寄ったゲームセンターで遊んでいる最中だった。格闘ゲームとシューティングゲームを少しかじるように遊んだ後、クレーンゲームへ挑戦。狙うのは、クラスメートの女の子と、姉あるいは母へのプレゼント。どれだけ使ってもいい、今日こそは必ず獲ってやる――! そう意気込んだまでは良かったが、結果は惨敗。


「ま、まあ……今日はこんなもんだな。ヨシ! ぼちぼち帰って勉強しないとな……」


 つい独り言をつぶやいてしまったところをほかの客に聞かれてしまい、まずいと思った竜平は速やかに退散。


「『お姉へ。ごめん、お姉が欲しかったぬいぐるみは獲れませんでした。同じクラスの葵にも明日謝るんで……』、と。許してつかあさい……」


 植え込みの近くのベンチで姉へのメールを送信した直後、うなだれて、大きく肩を落として、がっくり。ため息ついてても仕方が無いので、竜平は帰路へと着く。補足しておくと収穫が無かったわけではない。ただ、姉が欲しい種類のぬいぐるみではなかった、というだけだったのだ。


「数年前にオヤジが突然死んじまったから、俺が頑張んなきゃいけないのに。ついつい勉強サボって遊んじまって。母さんとお姉にどうお詫びすればよいのだ……?」


 今の状況はちょっと、ヤバイかも。とは思いながらも、ぶらぶら歩いていた。もう襲われたりなんてしないだろう。と、信じたかったのだが――すっかり気を抜いてしまったところだった。


「浦和博士の長男の浦和竜平だな? お前だけでも来てもらうぞ」


 突然現れた黒服の大柄な男に襲われ、首に手刀を受けてしまった。力なくうめき声を上げて、その場で倒れ込む。道行く人々に見られてしまったが、彼らはどうせ騒ぐだけで何もできやしない。速やかに逃げ去ればいいだけのことだ。黒服はそう判断し、まんまと逃走に成功してしまった。――だが、完璧に見えた彼の行動にも、ひとつだけ誤算があった。


「リュウヘイ!? ……これも運命のお導きね……」


 アデリーンの人造人間ならではの超感覚が、竜平の危機を感知していたということだ。最後に竜平の気配があった付近まで来たアデリーンは、彼が落としたぬいぐるみを回収。先ほど竜平が「これじゃない!」と困惑しながらも、しっかりいただいていった代物であった。


(あなたとその家族を助けて、邪悪なヘリックスから守り抜く。それが今、私のやりたいこと……。今助けに行くわよ、リュウヘイ!)


 これを手掛かりに、アデリーンは捜索を開始する。お供は無論、専用マシンのブリザーディアだ。

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