FILE029:こういう登場の仕方って
アデリーンとコンドルガイストは、しばらく小競り合いを繰り広げていた。敵の攻撃をことごとく回避したアデリーンが敵のクチバシをアイスビームや冷気を乗せた攻撃で凍らせて火の玉や火炎の息を封じ、ブリザードエッジで右腕や左膝を凍結させてダメージを与えたその時だった。
≪ホーネット! ホッ、ホッ、ホーネット!≫
物陰から電子音声が鳴った時、某脱獄死刑囚がそうしてきたように十字剣を引きずって、メタリックイエローとメタリックブラックのボディを禍々しく光らせて――ホーネットガイストが現れたのだ!
「うへへへふははははは――ッ! 大きなお友達って、こういう登場シーン好きだよねぇ!」
「悪役好きの大きなお友達はね!」
アデリーンとコンドルの双方に十字剣を振るう。火花を散らしてからコンドルを回し蹴りでどかした後、アデリーンへと斬りかかる。
「お、おれの味方ではないのか!?」
「ハァ~~? お前みたいな悪ガキがこの『黄金のスズメバチ』さんを好きにできるとでも?」
生意気なことを聞かれたので、ホーネットは気だるそうに、だが容赦なくコンドルガイストへとジングバズショットを撃ち込んでひるませる。撃ったのは実弾のほうで、毒素ビームは撃ってない。そう、この銃型デバイスは実弾とビームの撃ち分けが可能なのだとおさらいしておく。
「やめなさいッ」
「ッ! こいつは殺してでも止めなきゃ、また繰り返すぞ?」
エルボーをかましてからブリザードエッジを突きつけ、アデリーンがホーネットを押さえ込む。仮面の下でホーネットは歯ぎしりして唸り、アデリーンを振りほどいた。
「それにこのトリ頭にはお灸をすえてやらないと。なあ!」
背中に十字剣・バズソードを差してから薙ぎ払うようにアデリーンとコンドルへ対してジングバズショットを撃ち、背部の羽根で空を飛ぶ。対するアデリーンは降下して来たタイミングを狙ってホーネットを蹴っ飛ばし、金属音波を飛ばしてきたコンドルガイストに接近。コンドルの腹部にすかさず冷凍エネルギーを乗せた回し蹴りと至近距離でのアイスビームをお見舞いする。体中に血液も凍るような寒さと激痛が走った。
「キエエエエエエエ――――ッ!!」
大ダメージを受けて発狂したコンドルが炎を吐き散らすが、アデリーンは氷のシールドを作って防御。ついでにホーネットも守ってやる。「敵に情けをかけるのか!?」と、ホーネットが屈辱に思う中、アデリーンはコンドルに出力強めのアイスビームを発射。凍結させると、華麗なステップからブリザードエッジによる連続斬りを繰り出した。氷が砕け散って、辺りに破片が舞い散るとともにコンドルはその赤い羽根を血しぶきの代わりに撒き散らす。
「キエ――ッ!? いてえ、いってえ……!!」
腹を抑えて苦しむコンドル。どこぞの凶悪死刑囚を彷彿させる持ち方でバズソードを引きずってホーネットが接近し、アデリーンは肩にブリザードエッジを担いで前にブリザラスターを構えながらコンドルに近寄る。2人に共通しているのは、考えやスタンスは違えど、極悪人には容赦はしないということだ。
「ワタシ、虫・毒タイプだからさー。燃やされてたら危ないとこだったわ。けど、礼なら言わないかんね」
「それ言ったら、私も氷タイプだから危うかったわよ。相変わらず調子のいい人ね。今はそんなことより……」
ホーネットガイストとはまたいつか決着をつけてやるから置いといて、と、アデリーンはブリザードエッジを向けてコンドルガイストを威圧。今にもとどめを刺さん勢いと気迫を見せる。仮面の下では静かな怒りを表情に出していた。
「見逃すつもりはない。あなたが使ったジーンスフィアを破壊して、罪を償わせる」
「シュワシュワシュワシュワシュワシュワ……!!」
おびえるコンドルガイスト、アデリーンが成敗しようとしたその時、彼女の前に奇声を発しながらスコーピオンガイストが現れ、立ちはだかる! アデリーンは身構え、ホーネットは一瞬呆れながらもすぐに殺気立ってジングバズショットを向けた。
「シュワーッ! そう都合よくはいかない! こいつには、まだやってもらわねばならんことが山ほどあるからな……」
それは仰々しい語り口とともに――。サソリの尾のような鋭いムチを全身からいくつも伸ばしながら、スコーピオンガイストはアデリーンとホーネットの両者を威嚇する。
「マガツ! あなたがすべて仕組んでいたのね?」
「シュワシュワシュワシュワシュワ! いかにもこの俺だ。俺が北関東の地を支配するためにやったこと……。だが、この街に蔓延る! 社会貢献をしていないクソカスどもを滅亡させたいと望んだのはこいつ自身。シュワシュワシュワシュワシュワ!」
禍津――スコーピオンガイストとしては情が湧いたからなどではなく、あくまでも野望のためにコンドルガイストをかばったに過ぎなかったのだ。そのことをアデリーンもホーネットガイストも察した。
「次はヤクザの組長だか幹部だかを処刑したいんだったな? 早く行ってぶち殺してしまえァ!」
「……キエーッ」
コンドルガイストがフラつきながらも飛び去る。追いかけようとしたアデリーンだったがスコーピオンガイストが伸ばした、無数のサソリの尻尾状のムチに絡め取られてしまった。しかも先端の鋭い針から毒まで分泌している。スコーピオンは彼女をたっぷりといたぶるつもりのようだ。
「マガツっ!?」
「これ以上邪魔されちゃ困るんでな。ヘリックスに生まれし者はヘリックスに還れ……。還るのだぁ! シュワシュワシュワシュワシュワシュワアアアアアアアアアアア―――――――!! わははははははは! わははははははははははははッ!!」
「どうせなら脱がしてからもてあそんでやりたかったなあ!」などと、ゲスな欲望を抱きながらも大興奮のスコーピオンガイスト・禍津が勝ち誇ったように哄笑する。苦悶の表情を浮かべるアデリーンだったが、仮面の下で青い瞳をカッと光らせてムチを瞬間凍結。そして拘束を解いてスコーピオンガイストを斬り、ホーネットガイストにも斬りかかったが、ホーネットは間一髪で避けた。
「し、シュワった。弱らせ方がハンパであったか……、シュワーッ!?」
「シュワシュワシュワシュワうるさい! さっきから下手に出てればいい気になっちゃってさ、ふへへへへへへ……」
アデリーンの足払いをかわして、アクロバットに動いてからホーネットはスコーピオンにローキックをかける。そしてバズソードで叩いて斬った。火花と毒液を散らしてスコーピオンはもがき苦しみ、体勢を直してからアデリーンとホーネットへ対し順番に襲いかかるがかわされ、怒りから無数のムチをしならせるが――これもアデリーンがビームソードを振り下ろすと同時に発生させた吹雪で凍結させられた。身動きも封じられ、そこへ躊躇なくアデリーンは迫る。
「ゼロブレイク!」
ブリザードエッジを地面に刺し、雪の結晶型の紋章を発生させてから放たれる、必殺キックが炸裂。その破壊力を前にスコーピオンガイストは吹っ飛んでまたも凍結した。
「スティンガーアナイアレート!」
更にホーネットがバズソードを振るって繰り出した、凶悪な必殺剣技が炸裂! 大爆発したスコーピオンガイストは著しいダメージが蓄積したことによって変身を解除し、マガツの姿へと戻った。頭からは血を流し、目の周りには青アザも見られ、呼吸もひどく乱れている。身につけていたレザー系の衣装も焼け焦げてボロボロだ。
「安心せい、峰打ちじゃ」
ホーネットも変身を解除して、元の蜂須賀の姿へと戻る。これまで通りの黒フードに黒いサングラス、黒いマスクと黒いコートの黒尽くめの衣装に、いたって平常運転でおどけて振る舞う彼女が相手を絞めあげようとしたその時、同じく変身解除したアデリーンが割り込んで禍津の胸ぐらを掴み上げた。
「北関東を支配するですって? あなたたちの好きにはさせない。……ホーネットの好きにもね」
「へへへっ。言われちゃったな」
少し驚かされて、たじろいだが、近くにあった資材にもたれて蜂須賀が笑う。鋭く冷徹な視線と悪への怒りに威圧されておびえながらも禍津は抵抗して、アデリーンを振りほどいた。今更屈しない彼女は今度はブリザラスターを突きつけ、逃がさないという意志を見せる――。
「グギギギギギギギ、ウギギギギギギ! 調子に乗るなよ、裏切り者のNo.0めぇ……ゲホゲホ、オアアアア! ぜぇぜぇ……」
黒焦げで身動きもガクガクになりながら、禍津は全力で逃走。「やれやれ」、と、ため息をついたアデリーンは流れるようにブリザードエッジを回収し、口笛を吹いて余裕をかましていた蜂須賀へと突きつける。彼女としてはちょっとビビった。
「何よ、こないだの意趣返し?」
苦虫を噛みつぶしたような顔をしている彼女をそのまま斬り殺す――とまでは行かず、アデリーンはいたずらに笑ってブリザードエッジを下げた。蜂須賀は大きくため息を吐く。これはダルかったからではなく、一応安心したから吐いたものだ。
「なんてね?」
「心臓止まるかと思った……」
胸を守るように腕を組んだところ、アデリーンに黒マスクを無理矢理外された。彼女は更にサングラスとフードも外そうとしたが、「や、やめろ!」と蜂須賀は抵抗。「いーっだ」と子どもっぽく怒ってから腕を×の字に組んだ。その直後一息ついてから、もう一度腕を組み直す。
「ま、決着はいずれということにしておこう。そんなことより、殺し屋のお姉さんから1つだけ言わせてもらいたい」
「人捜ししてるの。あまり時間をかけさせないで?」
「あーせーるーなッ!」
「はいはい」
少しイラついた様子を見せたホーネットを見て、アデリーンは仕方なく付き合ってやることとする。次にこう言った瞬間、蜂須賀は急に冷静になり、表情も声色も殺し屋らしい冷めきったものとなった。
「あんまり入れ込みすぎるなよ。後悔したくないならね――……」
最後にはおどけた笑みを浮かべてから、蜂須賀はジングバズショットを撃って煙幕を張りワープして消えた。彼女の言葉を聞いてアデリーンは何か察したが、それ以上は揺さぶられることも流されることもなかった。
「ひとまず帰ろうかしら。ユリカさんのことも心配だし……」
ブリザーディアに乗って、港湾地帯から赤楚家が点在している住宅街まで移動する――。




