表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5th anniversary!】アデリーン・ジ・アブソリュートゼロ  作者: SAI-X
【第2話】ジャガーの魔の手が迫る!
12/249

FILE010:心悪しき改造人間を討て



「うわ――――――――ッ!?」


 誰かの悲鳴だ。人造人間だからこそ身につけた超感覚で察知したアデリーンは血相を変え、至急でバイクを召喚。それに乗って現場へ向かう。少し開けた区画にある広場であり、多くの人々が逃げまどっている。


「ストーライプー!」


「ヒョーウ!」


 シマウマの怪人・ゼブラガイストとジャガーの怪人が暴れて、すでにかなりの人々が負傷していた。うち、警官1人が蹄鉄型の武器で殴り殺されてミイラ化している。その原理はわからない。


「ヘリックスの怪人! そこまでよ!」


 アデリーンが腕を組んで叫ぶ。怪人も含む全員が彼女に注目した。


「ヒョウヒョウヒョウヒョウ……」


「なんだァ? あのチャンネー、殺されに来たのかあ!?」


 前転しながらジャンプしたアデリーンは広場の中心へ着地。手のひらから冷凍エネルギーのビームを打ち出し、ゼブラガイストやジャガーの怪人の顔面へ命中させた。その弾みで解放された民間人は、アデリーンに一礼して逃げ出す。1名のみ手遅れとなってしまったものの、これで犠牲が出るのはなんとか抑えることができた。その1名――名も知らぬ警察官だった死体を見て、アデリーンは無念からくる怒りとともに拳を握りしめて震わせる。


「これ以上の非道は許さん! 【氷晶】!」


 凛々しく叫んだと同時に、【氷晶】。【氷晶】したアデリーンがメタルコンバットスーツを装着するまでの時間は、わずか0.05秒に過ぎない。


「零華の戦姫! アブソリュートゼロ!」


 王冠と雪の結晶をモチーフとしたそのスーツに全身を包んだアデリーンは、感情に振り回されることなく敵を挑発するポーズを取った。この怒りはすべて、目の前の敵を攻撃する際にぶつけるべきだと判断したためだ。


「バカバカしい! ヘリックスに生まれた者はヘリックスに還れ! ヒョーウ!」


「ストラーイプ!」


 金に近い黄色の体毛に青い目を光らせたジャガーガイストが唸る。やはりその身は機械化されたような外見で、胸部の装甲にはブチ模様を模した穴が開いている。片腕にはコードが配された巨大なカギ爪を備え、四股や腹部も機械化・金属化されて、まるで戦うために生まれたようだった。そのジャガーガイストが飛びかかってきたところを迎撃、地べたへ落としたアデリーンは続けてゼブラガイストが投げてきたチェーン付きの蹄鉄を素手ではたき落とし、そのまま手刀を素早く連続でダウンを奪った。


「ストーライプーッ!」


 いきり立ったゼブラが腕先から蹄鉄型のビームを飛ばす。アデリーンは回避して冷凍エネルギーのビームで反撃。それが直撃したことで、ゼブラガイストは手足が凍結して動けない。


「No.0、お前のせいでライノセラスは療養を余儀なくされたッ! あいつの仇だ!」


「ッ! 先に私たちに手を出したのはあなたたち、それを逆恨みと言うのよ」


 アデリーンに論破され、怒ったジャガーガイストが胸部装甲の穴からスーパーボール大の爆弾を発射。発射。発射! 次から次へと爆発を起こす中、アデリーンはその中を闊歩し、冷凍エネルギーを放出して背後で巻き起こった爆炎を治めてみせた。そして、ジャガーガイストにもアイスビームを食らわせる。凍ったところをアデリーンがハイキックで打ち砕いた。


「ヒョーウ! ヒョウヒョウヒョウ! ヒョウヒョウヒョウヒョウ……ヒョウーッ!!」


 転倒させられるも起き上がったジャガーガイストは咆哮を上げ、片腕から生えたその巨大なカギ爪を振り回して迫り、追い詰めようとする。全部少ない動きで避けたアデリーンは、手刀でカギ爪を攻撃してから両手で抑え込み、激しく抵抗した末にブチ折った。彼女はメンタルもフィジカルも常人を超越しているのだ!


「このアマッ! お前もカラカラのミイラになっちまえー!」


「ブリザラスター!」


 ゼブラガイストが起き上がってチェーン付きの蹄鉄を振り回す。スライディングで回避と同時に反撃して転ばせると、天にその右手を突き出して武器を召喚した。自身のパワーを増幅させ、更に強力な遠距離攻撃を可能とする光線銃・『ブリザラスター』だ。見た目はアブソリュートゼロのスーツと同じく、青と白。金色で縁取られている。アデリーンはそのブリザラスターの引鉄を引いて、早速ゼブラガイストへと容赦なく撃ち込む。たじろいでそのまま壁にもたれついた。


「ヒョーウ!?」


 もちろんジャガーガイストにも撃つ。それも3発だ。これだけでも相当なダメージを受けたようであり、とうとう膝を突く。悔しさから地面を拳で叩いたジャガーガイストが、必死になって次にとる策はこうだ。


「ええーい、戦闘員『シリコニアン』!! われわれを助けろ!!」


「ラーセーンッ!」


 ジャガーガイストに呼ばれて、ケイ素で作られた戦闘員たちがどこからともなくお出ましだ。簡素な見た目かつ、裂けた口を持っていて2足歩行のものと4足歩行のものがおり、色や足の数が違っても、運動性や機動性を除いて差異はない。群れを成して現れた彼らは、それぞれ咆哮を上げると一斉に敵であるアデリーンのいる方角を向く。


「オメーらが何体やられようとかまわん。No.0をブチ殺せ! ストーライプーッ!!」


「グルーッ!」


 散々やられて全身傷だらけのゼブラガイストが出した指示の下、シリコニアンたちが奇声を上げて動き出す。その数の暴力にアデリーンは――屈しない。光線銃ブリザラスターの早撃ちで軽く蹴散らして、月面返りを混ぜたジャンプで抜け出す。ついでにジャガーとゼブラも撃つ。


「ブリザーディアッ!」


 召喚し直した青き専用バイク・ブリザーディアを駆り、シリコニアンたちを殲滅し始めるアデリーン。ジャガーとゼブラの2大怪人もぶっ飛ばした。その勢いはとどまることを知らない。快進撃だ!


「アターック!!」


 叫んで、1カ所にまとまった敵軍団に突っ込むと同時に、そのままシリコニアンたちを爆破、全滅させた。こうなった以上、ジャガーガイストとゼブラガイストはもう後がない。


「あ……? あ……!? うそだろオイ……!?」


「終わりよ! シューティングエンド!」


「スト~~~~~~ライプ~~~~~ッ」


 立ち上がれず、頭を抱えて激しくうろたえるゼブラガイスト。アデリーンは容赦がない! 両手でブリザラスターを持ったかと思えばフルパワーでビームを撃って、ゼブラガイストを撃破。そのまま爆発四散し、シマウマの遺伝子を宿した『スフィア』も粉みじんだ。圧倒的すぎる力の差に、ジャガーガイストは戦意を失くして立ち尽くす。


「次はお前……零華剣・ブリザードエッジ! はっ!」


「ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!?」


 ブリザーディアから右ハンドルを取り出してビームソード・ブリザードエッジへと変形させる。これまた両手で持つと同時に少し気合を入れてからジャガーガイストに急接近し斬撃。これは通常攻撃ではない、必殺攻撃だ。もちろん斬った相手は爆発四散させた。双方ともにジーンスフィアは破壊されており、ジャガーガイストこと長身の黒服男・ヨコダは恐怖のあまり逃げてしまったが、ゼブラガイストに変身していた者に対しては手足を氷のロープで縛ってその場で捕縛した。


「【この者、暴動殺人犯!】っと。……あっ!」


 雪の結晶マークが目印のカードにそう書いて、変身者の近くに置いておく。そこでアデリーンはその者の顔を見て驚く。あのシマウマの怪人に変身していたのは、以前アデリーンのナンパに失敗したチンピラ一味の1人――馬場だった。戦闘中にずっとやられっぱなしだったゆえ、全身もうボロボロであちこちから血を流していた。


「ウワーッ! アンタやっぱりこないだの……」


「あなたは! どうしてヘリックスなんかの手先に……」


「ち、違うんだあ、ヒーローのネーチャン、許してくれ~~~~っ! おれはあいつらの基地に連れ込まれて、なんか改造手術みてーなことをされて気が付いたら……」


 その時どこかから銃声が。次の瞬間には、アデリーンは弾丸をつまんでいた。馬場が何者かの凶弾により射殺されることを未然に防いだのだ。


「へぇ。やると思ったよ。地球外生命体の細胞を用いた、DNA改造実験体……No.0。いや……」


 どこからか、人を食ったような飄々とした口調の女性の声が響いた。辺りを見回すアデリーンだが、そこに「いる」と確信した方向にあえて顔を向ける。


「アブソリュートゼロさん」


 また謎めいた女性の声が、ヒーローとしての彼女の名をを呼んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ