表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/32

〈7〉鎌鼬(かまいたち)3兄妹『前編』

sister & brothers〈1〉

朝、学校の教室に行ってみると、僕の机の上には花が置かれていた。

と言ってもイジメのたぐいではない。

ビニール袋に入れられた小さな鉢に植わっているクローバーで、その葉は4枚の物が多かった。

『品種改良か』

それは園芸部の後輩の作品であった。

僕は大振りな花が好きだが、後輩は野花的な小さな花が好きなのだ。

後輩の愛情を受けた花は可憐に咲いていた。



放課後、クローバーの入ったビニール袋をぶらさげて花壇に行くと、河童の親分(?)深緑しんりょくが僕を待っていた。

「また、キューリの手を借りたくてな

 今回は手というか、知恵を借りたいのだ」

妖怪より知恵があるのか不安になるが、深緑は僕のを手を引っ張ってどんどん学校の裏山に進んでいく。

お馴染みのキュウリ畑には、深緑のような着物姿でキリリとした和風のイケメン2人が僕を待ち受けていた。

「イタチだ」

ザックバランすぎる深緑の紹介に怯むことなく

鎌鼬かまいたち長男の一郎(いちろう)です」

「鎌鼬次男の次郎(じろう)です」

彼らはまんまな名前を名乗った。

「キューリです」

間抜けな気もするが、妖怪相手にはこっちの名の方が通りがよさそうだった。


「あれ、鎌鼬って3兄妹なんじゃ」

僕は近所の婆ちゃんに聞いた話を思い出していた。

「そうなんです、相談したいことは妹のミッシェルの事なのです」

「妹さんだけ名前が凄いことに」

僕は思わず突っ込んでしまった。

「本当は『三ツみつこ』なんですが、そう呼ばないと最近は返事をしてくれなくて」

一郎さんはガックリとうなだれた。

「部屋の戸に木をぶら下げたり、継ぎ接ぎの寝具で寝たり

 人間が置き忘れていった本を読んでから、妹の様子が変わってしまったのです」

次郎さんも肩を落としている。


「ステキな花が欲しいと言うので、深緑殿に協力してもらい立派な菊を持って行ったら『辛気くさい』と大層怒られました」

「私は菖蒲あやめを持って行ったら何も言わずに部屋の戸を閉じられ、ならば、と杜若かきつばたにすると『被るわ』と怒り心頭に発する様子で言い捨てられて」

嘆くイケメン達に

「菖蒲と杜若、別物なのにね」

僕はそう言葉をかけるしかなかった。

「気に入る花を持ってこない限り、金輪際口も利きたくないと言われたのです」

「お願いします、妹の気に入る花を育ててください」


「女の子(しかも妖怪)の好きな花なんて分かんないよ」

僕は頭を抱えてしまう。

お題が決まっていない分、今回の頼みごとは厄介なものであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ