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〈28〉祝々(しゅくしゅく)

OSAKI 2〈1〉

学校からの帰り道を歩く僕の前に、若い女の人が姿を現した。

「ちょっとつら貸しな」

つり上がった目、ソバージュと言うのだろうか波打つ長い髪は金色に染められている。

くるぶしまでありそうな長いスカートの腰の辺りにはチェーンが巻かれていた。

おまけに木刀を担いでいる。

美人ではあるのだが

『スケバンって人っぽい?何か目を付けられるようなことしたっけ?』

助けを求めようと辺りを見回したが、一緒に下校していた友達の姿は消えていた。

「良いから来い、つってんだよ」

彼女は顎で先を示し先に立って歩き始めた。

仕方なく僕は彼女の後に付いていったが、リンチでもされたらどうしようと不安ばかりがつのっていった。


彼女は1件の店の前で足を止める。

『え?甘味処ヨネ?今日は定休日のはず』

混乱する僕をよそに

「邪魔するぜ」

彼女は暖簾の出ていない店の引き戸を開けて中に入っていく。

しかたなく僕も店に入ると、そこには店主である米研ぎ婆のおよねさんの他に、小豆研ぎの荒井あらいさん、オサキ狐のオザキさんが揃っていた。


「お、キューリも来てくれたのか」

荒井さんが親しげに声をかけてくる。

「あの、何がどうなってるんですか?」

妖怪とは言え、見知った顔が居てくれたことにホッとした。

「そこのヘタレが昼間は外を歩けねーとかぬかすから、あたいが迎えに行ってやったんだよ」

答えてくれたのはスケバン風の美人だった。

「だ、だってサキちゃん」

オザキさんがオドオドと口を開いたが、彼女にジロリと睨まれてシュンとなってしまう。


「まあまあ、目出度い席だ、楽しくやろう

 キューリ、オザキとサキは祝言をあげるんだ」

取りなすような荒井さんの言葉で僕はますます混乱する。

「キューリが用意してくれた大豆で作った豆腐が上手くいって、ついに蒼太が結衣ゆいにプロポーズしたんだよ」

「蒼太ってオザキさんが憑いてる家系の人だっけ

 なんでオザキさんまで結婚することに?」

首を傾げる僕に

「あたいは結衣の家系に憑いてるオサキ狐なのさ」

スケバンのサキさんが答えた。


「オサキ等が憑いてる家は『憑き物筋』と言われ、婚姻関係を結ぶ事が多いんだ

 オザキに良い油揚げを卸してもらえるから、ヨネの新メニューにいなり寿司を加えようと思ってな

 どうせなら、オサキ狐の祝言はここでやろうと提案をしたんだ」

荒井さんの言葉で、やっと事態が飲み込めてきた。


僕は物の怪の目出度い席にお呼ばれしたようだった。

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