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〈26〉シクシク

OSAKI〈2〉

狐のコンタに紹介されて知り合ったヤンキーは『オサキ狐』という妖怪だった。

「違う違う、オサキ狐は妖怪じゃなくて『憑き物』なんだ

 人間と言うか家に憑くんですよね、オザキさん」

「おうよ、憑いた家を繁栄させるため尽力するんだぜ」

得意げに語るが、彼はコンタの背後で縮こまっている。

「オザキさん人間に使役されてた期間が長いから、人間のこと怖がっちゃってさー」

「バッ、怖いとかじゃねーって、警戒心が強いって言えよ

 つか、何でお前は人間に対して警戒心が薄いんだ?

 人間に菓子貰うとか意味わかんねーし、あれ毒だぞ」

「はいはい」


このままだと狐とオサキ狐の掛け合い漫才が終わりそうになかったから

「うーん、憑き物と妖怪との差がよくわからないけど

 そのオサキ狐が何で僕の助けを必要としてるのかな」

僕はそう水を向けてみた。

「いや、その、荒井あらいさんに聞いたんだけど…

 質の良い穀物を用立てられるって」

オザキさんはモジモジと口にする。

「何が欲しいの?知り合いが作ってれば分けてもらえるかも」

「…大豆、…豆腐作るのに適したやつ」

彼の答えに、僕は悩んでしまう。

「この辺、枝豆農家ならあるけど大豆まで作ってないんだよね

 大豆用とは品種が違うって聞いたことあるし、また自分たちで作った方が早いかな

 でも、何で大豆が必要なの?豆腐を自分で作るの?

 あ、狐だもんね、油揚げにしたいのか」

納得しかけた僕に

「俺じゃなくて、蒼太そうたが欲しがってんだよ」

オザキさんはポツリと呟いた。


「誰が?」

意味が分からず聞き返すと

「俺が憑いてる家系の最後の1人で、今は豆腐屋やってんだ

 昨今の人間ってやつは、ろくに子供も残さず死んじまうんだから始末が悪い

 せっかく家が繁栄するよう俺が頑張ってんのに、俺を置いて皆…、居なくなって…」

オザキさんの目には涙があふれ、コンタの背に縋っておいおいと泣き始めてしまった。

「まあ、こんな訳なんだ

 オザキさんは家に敵対する人間にとり憑いて悪さするような度胸ないし、助けてあげても大丈夫だと思うよ

 『憑き物』って言ってもピンキリだからね」

コンタは拝むようなポーズを僕に向けてきた。


顔をグシャグシャにして泣いているイケメン憑き物に

「僕だけじゃ無理だから、深緑しんりょくにも協力してもらおう

 きっと皆で作れば良い物が出来るよ」

僕はそう話しかける。


頷く彼の目から流れた涙が狐火に照らされて、キラキラと光っていた。

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