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〈20〉外見年齢

young de old

深緑しんりょくのキュウリ畑の手入れの合間、僕は小河童の萌葱もえぎに勉強を教えていた。

萌葱は僕に懐いてくれていて、僕のやることを何でも真似したがった。

まずは読み書きが出来るようになれば、と平仮名と片仮名を教えたら1週間ほどで一通りわかるようになったのには驚いた。

『妖怪って賢い…って言うのも失礼か

 深緑なんか、僕より頭良さそうだし』

今は数字や九九、時計の見方を教えている。

「キュウリが8本あったら、萌葱とキューリ、4本食べれば半分こ」

人間に化けた姿で嬉しそうに笑う萌葱が割り算を理解出来る日は、遠くなさそうであった。


「ねえ、萌葱って何歳なの?」

オヤツ休憩中にキュウリをカジりながら、僕は深緑に聞いてみた。

「うーん、正確なところは忘れたが、およねよりは上かな

 前にも言ったが私が不在の間冬眠していたから、成長が遅いんだ」

「お米さんより上?!」

僕はビックリしてしまう。

今まで知り合った妖怪の中で、お米さんが1番お年寄りに見えていたからだ。

「ああ、お米はまだ存在してから100年経っていないよ

 その辺の九十九つくも神の方が年経としへているね

 あれは100年経ないと存在しえないから」

「でも、お米さんってお婆さんに見えるんだけど」

僕は疑問を口にしてみた。

「彼女は戦時中に、米に対する執着が凝り固まって発生したようだ

 若いから、まだ存在年数と同程度の人間の姿にしか化けられない

 珍装の猫又なんかは若作りしまくりだろう?

 年経ている分、妖力が強く外見を作れるんだ」

深緑の言葉で、僕はやっと合点がいった。


ミケ姉さんは見た目は女子高生っぽいけど、女子大生に見える三ツ子さんの事を『小娘』と呼んでいた。

深緑も、壮年に見える荒井さんのお米さんに対する態度を『年甲斐もなく若い彼女に夢中』とか言っていた。

「じゃあ、萌葱が小学生に見えるのはそれなりの年を取っているから?」

萌葱のことを『弟』の様だと感じていた僕は愕然としてしまう。

「まだ化け方が未熟で、上手く調節出来ないのが1番の原因だな

 本当はキューリと同じくらいの外見になりたいはずだ

 塗り壁や鎌鼬かまいたち兄のように漫然と化ける者もいるが、妖怪は強い影響を受けた人間の真似をしたいのだよ」


『青年に見える深緑は、誰かを真似たくてその姿になったのかな…』


僕のその疑問は、遠くを見つめる深緑の瞳の前では言葉にならずに消えてしまうのであった。

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