表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/32

〈17〉赤いダイヤ

HITO TOTTE KUOKA

川のほとりで知り合ったダンディーなイケオジは、妖怪『小豆研あずきとぎ』だった。

「どうも、小豆研ぎの『荒井あらい』です」

微笑みながら名乗る彼に

「あの、キューリです」

僕はお決まりのマヌケな返事を返す。


「人の財産をいただくって言ってたけど、僕、お金持ってません」

財布には千円札が1枚入っていたが、それを取られたら新しい花の苗が買えなくなってしまう。

荒井さんは僕の言葉を聞くと、はははっと笑い出した。

「それは言葉のあやみたいなものかな

 実は私は相場師でね、小豆相場で利益を得ているのさ

 私が儲けた分、誰かが損をしている

 小豆相場は難しいんだ、小豆は赤いダイヤなんて呼ばれてるんだよ」

悪戯っぽい笑みを浮かべる荒井さんに

「小豆のことならお手の物だろう

 しかし、小豆以外の事はどうかな」

深緑しんりょくがニヤニヤしながら言葉をかけた。

「まあ、ボチボチかな」

荒井さんはサラッとその言葉を流している。

『こーゆーの、海千山千(うみせんやません)って言うのかな』

僕は2人に挟まれて、居心地の悪さを感じていた。


「このところ天候不順で良質の小豆の値が上がっていてね

 自分で使う分くらいは自分で作ってみようかと思っているのだが、どうにも上手く出来なくて困っていたんだ

 そんな時、植物を育てるのが上手い緑の指を持った人間の子供が、妖怪に力を貸してくれると聞き及んで是非会ってみたかったのだよ

 キューリ、力を貸してはくれないだろうか」

荒井さんは真剣な顔で頭を下げてきた。

『小豆…難易度高いかも

 うちの町に小豆農家はいないから、アドバイスもらえないし

 一応、育て方は知ってるけどさ

 土作りから始めて品種選びだろ、鳥の被害や害虫に気を付けて、確か収穫はそのさやごとの成熟具合を確かめるんだよな

 もう一度、ちゃんと調べ直さなきゃ』

僕はこの状況を楽しみだしている自分に気が付いた。

自分で調べて実践する、それにチャレンジしてみたくなったのだ。


「荒井さん、上手くいくかどうかわからないけど、一緒に頑張ってみよう

 深緑の時短があれば鳥や虫の被害を考えなくて良いし、すぐ収穫できるから改良点に気付けるよ」

「え?私も協力するの?」

深緑が見せた不満顔は

「良い小豆が作れたら、キュウリの苗をお礼に差し上げよう」

荒井さんのナイスフォローで笑顔に変わった。


こうして僕は、妖怪達と一緒に小豆育成プロジェクトを立ち上げたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ