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〈14〉壁に花あり

wall & flower

『壁(妖怪の塗り壁)を華やかに見せる花を咲かせる』

今回は、これが深緑しんりょくから依頼されたお題だった。

僕と意志疎通が計りやすいよう塗り壁には人間に化けてもらっている。

「僕、塗り壁の『ヌリ』です」

華やかな美青年が僕に丁寧に頭を下げた。

『妖怪の名前って、直球…覚えやすくて良いけど』

ミッシェルや†魅華みか慧瑠える†の事は、ひとまず脇に置いておいた。

「僕のことはキューリって呼んでください

 しかし、花を生やすって言われても…」

僕は考え込んでしまう。

華やかな外見から『水仙』を思い浮かべたが、地味な自分を変えたいと言う彼がナルシストには見えなかった。

他の花と言っても

「壁に生やすのは難しすぎるよ

 壁に穴をあけて植木鉢をはめ込む、とか出来ない?」

「体に穴を開けるのは怖いです」

僕の言葉で長身の美青年は震えだした。


「そうだ、つる性の植物なら何とかなるかも

 可愛い花が咲く種類もあるしさ、僕はクレマチスが好きなんだ

 あ、そういえばキュウリもつる植物だ」

キュウリと聞いて

「いつも自分の体に新鮮なキュウリがあるなんて、羨ましい!

 毎日遊びに来て欲しいものだ」

深緑が瞳を輝かせた。


「キュウリ…あそこに咲いている黄色い可愛い花ですね」

ヌリも笑顔を見せる。

「壁に沿って支柱を立ててネットを張って、グリーンカーテンにもなるよ

 って、あれ?これ、収穫終わるまで動けなくなるオチだ、ごめん…」

「夜の散歩には行きたいです」

僕と一緒にヌリも肩を落とした。

「妖怪の寿命は長い、2ヶ月くらい動けなくても新鮮なキュウリが手に入るなら良いではないか」

新緑だけが本末転倒ほんまつてんとうな状況に、不満そうにブツブツ言っていた。


「壁の上に花の咲いた植木鉢を並べるのじゃダメかな」

1番現実味のありそうな提案をしてみたが

「自分でも見えた方が嬉しいです、頭の上にあっても見えないから」

ヌリの答えはもっともなことだった。

「壁掛け用のフラワーポットやプランターを取り付けるとか

 植え替えれば、季節によって色んな花を見られて良いと思うよ」

「色々なお花、良いですね」

やっとヌリの表情が明るくなった。


「体の片側だけに植木鉢を取り付けたら、体のバランスが悪くならないのか?」

新緑の指摘に

「腰が痛くなるかもです…」

ヌリはまたうなだれてしまう。


壁のどこが腰なのかわからないが今回の依頼はかなり難航しそうで、僕は頭を抱えてしまうのであった。

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