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〈13〉壁の花

flower

「あの妖怪大戦争を生き延びられるなんて、流石さすが、私が見込んだ人間だな」

馴染みのキュウリ畑で、僕は河童の親分、深緑しんりょくに誉められていた。

「九死に一生を得るってあんな感じなんだ、って勉強になったよ」

あの時は、女の戦いに巻き込まれる恐怖を身をもって味わった。

『避難するとき、僕も連れてってくれれば良かったのに』

という恨み言は飲み込んだ。

それを言ってもノラリクラリとかわされそうだったからだ。

「そんなキューリに、今日も頼みごとがある

 そうか、引き受けてくれるか、妖怪と人間の架け橋になってくれる君は良い人間だ」

僕が答える前から、それは決定事項だったようだ。


「彼は何というか地味な存在でね、自分でもそれを変えたいらしい

 私としては、花でも咲かせてやれば華やかになるんじゃないかと思うのだが

 彼に似合う花を見繕ってくれないか?」

深緑はいきなり切り出してきたが、僕には意味が分からなかった。

「彼って誰?」

「さっきからそこに居る彼のことだよ」

「どこに居る?」

「そこに居る」

僕たちの会話は漫才のようになっていた。

キョロキョロと辺りを見渡してみても、深緑と畑の向こうの小河童達の姿しか見えない。

そこでやっと、僕は風景の違和感に気が付いた。

『あれ?柿の木とキウイの木は?』

僕の探している木は、巨大な壁に遮られて見えなかったのだ。


「何で外なのに壁が?」

驚く僕に

「それは、彼は『塗り壁』だからね」

深緑は何でもないことのように答えた。

「本来彼は夜にしか姿を見せないのに、キューリのためにこんな時間に来てくれたんだ

 わざわざすまないね、なに、キューリも君の役に立てることを喜んでいるよ

 そう?小さい花が好き?うんうん、そうだね、色は華やかな方が映えるかな

 と言うことだよ、キューリ」

深緑はこの壁と意志疎通が出来るらしいが、僕にはさっぱりわからない。


「深緑を介してだとややこしいな

 萌葱もえぎみたいに人間に化ければしゃべれる、とかないの?」

困った僕が聞くと、壁が幽かに震え小さくなっていく。

小さいとはいっても元が巨大な壁だからだろうか、人になっても身長2メートル近かった。

しかし、深緑やジーナなんか目じゃないうるわしの美青年だ。

「僕、タヌキ系だから化けられます」

丁寧な物言いの彼に

「花なんか植えなくても、人間に化けてれば華やかだっちゅーねん!!!」

僕は激しく突っ込まずにはいられないのであった。

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