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〈12〉妖怪大戦争

pride war

深緑(しんりょく)のキュウリ畑の側には大きな柿の木とキウイの木が植わっており、実を結んでいた。

柿木の下では丸々とした狐とほっそりしている狸が、柿とキウイを美味しそうに食べている。

キウイの木の下では、ゴスロリ姉さん改めミケ姉さんが恍惚の表情を浮かべながら座り込んでいた。


「平和だなー」

妖怪って怖いものだと思っていたけど何か憎めない奴ばかりだ、僕はノンキにそんなことを考えていた。

「これは嵐の前の静けさってやつだぞ」

隣に座っている深緑がニヤニヤ笑って僕の顔をのぞき込んできた。

イヤラシい笑みもイケメンがすると様になるのが腹立だしい。

「天気予報では暫く晴れだよ」

「これから、妖怪大戦争が始まる」

え?っと驚く僕を余所に

「避難した方が良いかもしれないな」

深緑は思案顔になった。

「何で妖怪同士で争うことに?」

ごくりとツバを飲み込みながら聞くと

「縄張り争いのようなものだ」

深緑は腕を組んで頷いた。


「キューリ」

真剣なムードの中、場違いで華やかな声が僕を呼んだ。

それは鎌鼬かまいたち妹のミッシェル(三ツ子)さんだった。

マーガレット(正代)という人間の友を得た彼女は、カントリー調に気合いが入った格好になっている。

「マーガレットとクッキーを焼いたの

 お裾分けにどうぞ

 オーツ麦が入っているから、人間の体に良いんですって」

近づいてきたミッシェルは籐カゴを僕に渡してくれた。

「ありがとう」

僕がお礼を言うと、彼女はたおやかに微笑んだ。



「何とも素朴な格好じゃの、華やかさに欠けるわい

 まあ、イタチにはお似合いじゃがな」

キウイの木の下のミケ姉さんが言葉をかけてきた。

「どうも、年甲斐もなくヒラヒラした格好をした大大大大婆様

 格好だけ繕っても、年は繕えませんことよ

 あら失礼、ボケが回ってこないとそんな破廉恥(はれんち)な格好はできませんわね」

「小娘!大が多いよ

 大した妖力も持たぬ田舎妖怪どもに、都会の風を感じさせとるんじゃ」

「寝言は棺桶の中でほざいてください」


火花を散らし始めた彼女たちを止めてもらおうと振り返ると、深緑の姿はどこにもなかった。

畑にいた小河童達も、狐も狸も姿を消していた。

『妖怪大戦争ってこれか』

逃げ遅れた僕に

「少年!人間から見てどちらの服装が魅力的か言っておやり」

究極の選択が突きつけられる。

どう答えても死ぬしか無い運命だ。

『深緑、助けて!』

無駄とは知りながら、僕は河童の親分に心の中で必死に助けを求めるのであった。

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