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〈11〉河童と猫とマタタビと

MONONOKE & MATATABI

河童の親分(?)深緑しんりょくのキュウリ畑では、キウイの苗と(たわむ)れるゴスロリ姉さん(猫又)の姿があった。

「そんなに気に入ったなら、その苗あげますよ」

僕が恐る恐る話しかけると

「何と、心優しい少年であることよ

 モウロク河童とは大違いじゃ」

ゴスロリ姉さんは、まだ恍惚とした表情のままそう答える。

「何を言う、年甲斐もなくレースやらリボンやら大量に身に着けている婆さんが

 町でそんな珍装をしている人間など見たこと無いわ」

深緑が顔を歪めると

「何?この前、山で拾った雑誌には、このようなファッションがいっぱい載っていたのだぞ

 現代ではこんな装いが主流なのであろう、少年?」

ゴスロリ姉さんは僕に話をふってきた。

「うんと都会の方の一部地域では、そーゆー人も居る…のかな?多分…」

僕は当たり障り無いが歯切れの悪い返事しか返せなかった。


「少年はよくわかっておるな

 私の名は†魅華みか慧瑠える†愛くるしい猫又じゃ」

ゴスロリ姉さんがポーズを決めて艶然えんぜんと微笑むと

「キューリ、あの婆さんの名はミケだよ、三毛猫だから」

深緑が僕の耳元でヒソヒソと囁いた。

『ミッシェル(三ツ子)と同じタイプか

 彼女も雑誌を見て感化されたんだよね』

最近似たような展開があったので、僕は直ぐに事態が飲み込めた。

『ってゆーか、山にゴミを捨てちゃダメ、絶対!

 妖怪たちが滅茶苦茶ヤヤコシいことになるから』

僕は人間の犯した罪を呪いたくなってしまった。



「あ、その苗、植えてやらないと直ぐに枯れちゃうよ

 枯れた苗でもマタタビの成分って出るのかな」

ハタとそのことに思い至りミケ姉さんに伝えると

「それは、もったいないのう」

彼女は眉根を寄せる。

「ここの畑ならよく来るし、植えさせてもらえば一緒に面倒みるよ」

僕の提案に更に彼女の眉間のしわが深くなった。

「私は構わないよ、キウイという物に興味はあるから」

深緑の言葉で意を決したらしく、彼女は僕に苗を託してくれた。


苗を植えた後、深緑の裏技で直ぐに果実がたわわに実る。

「果実の真ん中が白くて周りが緑という配色が、我らに似て大変素晴らしい

 味は…キュウリの爽やかさには及ばないがな」

「苗より立派になったから、時々なら根っこを掘り返しても平気よね?

 根の部分の香りが深いのじゃ

 実は、あまり香らんのう」

主役であるキウイに対する妖怪達の言葉は、いまいち盛り上がりに欠けるものばかりなのであった。

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