やっと本題 タイトルってそんなに大事?
今回でやっと一章が終わる感じです。自分ではそこまで深くは考えていないのですが、キャラクターたちのお陰で、色々と勉強になります。もし宜しければ、リリア達のアドバイスを参考にしてもらい、皆様方の作品の向上に一役かえれば幸いです。
結局ジェニファーと暗黒魔剣士ロビンソンを使う事で何とかリリアを説得し、連載の本題に入る事が出来た。
「じゃあさ、今までの流れをそのまま描けばいいんだな?」
「はい。ただ先ほども言った通り、誰かを誹謗中傷するような事を書いたり、誰かを不快にさせるような事は書かないで下さいよ?」
「あぁ。出来るだけ気を付ける」
ストーリーは、なろうで小説家を目指そうとする主人公が色々な壁を乗り越え成長していくという内容に決まり、出来るだけリアルに近い情報を描き、ネット作家の苦労や、なろうの宣伝になるようなものにしようと決まった。ただ、主人公である俺役は暗黒魔剣士ロビンソンが担当し、リリア役にジェニファーが配役された。
作品の内容からはとてもかけ離れたキャラクター達だが、作品を描くのは俺が担当の為、上手く人物描写を避け、ジェニファー達の容姿を描かなければリリアを誤魔化せる。それに、暗黒魔剣士ロビンソンが主人公でもモデルは俺なので、いくらでも修正が効く。例えリリアにそこを突かれても、書き忘れてたとでも言えばなんとかなるだろう。
「それにしても今思ったんですが、この話、どうやったら終わるんですか?」
「え?」
リリアに言われはっとした。出だしはなろうを始め、途中はその中でどうやって読者を獲得していくか、という流れで問題は無いと思うが、リリアの言う通り、どうやったら終わり、という事を全く考えていなかった。
「そうだな~……どうするヒー?」
「それを私に聞かれても、あくまで作者はリーパーなので、リーパーが決めて下さい。それに、私達は小説など作った事はありませんので、リーパーは普段、どのように作品を考えているのか、先ずはそこを教えて貰えますか?」
そうだった。俺はすでに二人が小説を普通に書けると思い込んでいた。しかしよく考えると、二人はズブの素人。少し説明が必要かもしれない。
「俺? 俺はいつも作るとき、これは面白そうと思ったら、そのうち何とかなるだろうって思って書き始める」
「そうなんですか? でもそれって、普通の人はそんな書き方しないんじゃないですか?」
普通、小説を書こうと思ったとき、大抵の人は”プロット“と呼ばれる設計図を作るらしい。これには話の道筋などを書き、簡単に言えば、短いあらすじのようなものを作るものらしい。これを作っておけば、自分が伝えたい事や、後々の繋がり、人物の背景、世界観などを矛盾なく作れ、作品のクオリティーを上げる事が出来るそうだ。しかし俺は、そんな面倒なものを作るほど豆じゃない。それを素直に言えば、リリアにまた馬鹿にされそうだ。
「いや。プロットとかいう図面を作る人もいるらしいけど、大抵の人はいきなり書き始めるらしいぞ?」
「そうなんですか? やっぱり小説って、素人がいきなり書こうと思っても、才能がいるんですね?」
純粋なリリアは、俺の言う事を素直に信じた。しかし賢いヒーは、そうもいかない。
「リリア。これはあくまでリーパーの意見ですよ? 全ての人がそうでは無いですよ。それに、私としては、やはりプロット、と呼ばれる物は、作成しておいた方が良いと思います。いくら何でも、作者自身が話の結末を知っていなければ、途中で行き詰ったとき、その話は終わってしまいます」
「う~ん。そうですよね~? でも、あらすじみたいなものを作るなら、最初から本文を作った方が、効率は良くないですか?」
あ、リリアも面倒臭いんだ。そうだよね~。それに、最初から話の結末が分かる話なら、自分で作ってても面白くないし、人生ってものは、何が起こるか分からないから面白いんだもんね~。
「確かにそうですが、結末が決まらず、この作品はやっぱり辞めた! は、公表していなければ通用しますが、一度誰かの目に止まれば、それは通用しなくなりますよ?」
う~ん。そう言われれば確かにそうだ。無名の俺が書いた作品に、ファンが出来るとはとても思えないが、それでも、中には続きが読みたいと言ってくれる人がいるかもしれない。そう考えると、やっぱり結末は決めておかなければいけない気がする
「では、最後は小説家になりました。という話で良いんじゃないですか?」
まぁ、話の流れから行けば、それが一番無難な気がする。でも俺、小説家になった事ないし、小説家になる時って、どんな感じなのかすら分からない。
「なるほど。では、そうしますかリーパー?」
「う~ん。それでいい気もするけど、何か話が詰まらなくない? だってそれだと、結局主人公は人生の成功者になるわけだし、何かずるく無い?」
「ずるく無い? と言われても、作者はあくまでリーパーですよ? 確かにこれはリアルを描くといってもフィクションですから、なろうには夢がある! というアピールとして、サクセスストーリーにするのはありかもしれませんよ?」
それは確かにそうだが、作者の俺はなれないのに、俺の作った作品の主人公が小説家になるのは、なんか納得がいかない。
「ちょっと待って下さいヒー! この話の主人公はリーパーがモデルですよね?」
「えぇ。そうです」
「なら、それはおかしくありませんか?」
え? 俺がモデルだと、何か問題でもあるの? リリアは一体何に気付いたの?
「だってリーパーですよ? リーパーがサクセスするはずがありませんよ!」
そ、そこかよ!
「何でだよ! 俺にもサクセスくれよ!」
「え~? それは無理ですよ? 何より、そんな結末迎えたら、それこそ炎上しますよ!」
燃えんの? 今現在の読者数でも、燃えてくれるの?
「それは分かりませんよ? ただ、ストーリーとしては確かに安易だと思います。では、どうしますか?」
「そりゃもちろん、全く成果が出ず、ロビンソンがダークネスブレイカーを発動させ、暗黒に落ちそうになるのをジェニファーが救うんですよ」
ダークネスブレイカー? 暗黒? っていうか、これバトルものなの?
「そんなんなるなら、小説家になった方がマシだろ!」
「じゃあ、どうするんですか?」
「そりゃ……感想が来ました。これで目的は達成したから、なろうを止めます。って感じで良いんじゃないか?」
「あ、それ良いですね! これからも戦いは続くみたいで」
自分で言っていて駄目だと思う。もうそれだと、ある意味ダークネスブレイカーを発動させたようなものだ。困った。
「リーパーがそれで良ければ、それで行きましょう。では」
「ちょちょちょ、ちょっと待って! 今のは無し!」
ヒーちゃん? いくら何でも、丸投げし過ぎじゃない?
「はい? どうしました?」
「やっぱり、最後は企業からスカウトが来た! くらいで終わろうぜ?」
「しかしそれだと、話が中途半端になるのではないですか?」
「だから、そこから先は、タイトルを変えて、次のシリーズって事にしようぜ?」
そこで話が終われば、次のシリーズなど書く気はないが、こうでも言わないとまた長くなりそうだ。
「そうですか? しかし、リーパーがそう言うのであれば、私には何も文句はありません。リリアもそれでいいですか?」
「え? 私も別にいいですよ?」
リリアはいつの間にか飽きが来たようで、急に適当な返事を始めた。悪い癖だ。
「では、話の完結は、そちらの方向で行きましょう」
「あ、ああ」
やっと話がまとまった。正直俺も、もう飽き始めていた。だって、そんなすぐに話なんて作れないもん。
「タイトルはどうするんですか?」
後ろに手をつき、体を前後にゆすり始めたリリアは、早く話を終わらせたいのか、舌をペロペロさせながら言った。
「そうだな~。小説家になろうで、小説になろう! ってのはどうだ?」
「じゃ、それで行きましょう」
「そうだな」
これで話は終わり。そう思っていた俺達を、ヒーが止めた。
「ちょっと待って下さい。タイトルというのは、とても重要なものですよ? タイトルだけで小説を買え、と言われたら、その大切さは分かりますよね?」
「あ、それ、小説じゃないけど、昔ゲームでやった。パッケージだけで適当にゲーム買ったら、超クソゲーでなまらウケた!」
「無駄遣い」
「いや、でも。結構面白いぞ?」
あれは確かに冒険だった。様々なゲームをやりつくし、とうとうゲームに飽き始めた頃、友達と安いゲームを適当に買い遊んだ。
当時の俺達はまだ若く、友達の家で徹夜しながらクソゲーだと笑いあった。そんな俺達も今や社会人となり、次第に連絡を取る事さえ少なくなっていった。
「俺、子供出来たから結婚するんだ」
高校卒業後、あても無く適当についた土木作業員になっていた俺に、親友が電話でそう言った。
オレンジ色の街灯の下、夜虫たちが飛び回る中、俺はそれを聞いて、何故だか寂しさを感じた。
「え? ほんとに?」
嘘だろう? 本心はそう言っていた。しかし友の声色を聞いて、それが嘘ではないと悟った。少し離れた国道では、連なるヘッドライトの光とテールランプの赤が、コンビニと街灯の光と合わさり、川のようになっていた。寂しい。友の告白と、夏夜の活気が余計にそう感じさせた。暖かい風が吹いていた。
「あの、タイトルは真面目に考えた方が良いですよ?」
ヒーの声に、危うく少し切ない懐かしい過去へ行ってしまうところだった俺は、無事生還した。
「そ、そうか? 別に適当で良いじゃないのか?」
ストーリーさえ面白ければ、タイトルなど飾り程度にしかならないだろう。今流行りの長ったらしいタイトルなど、所詮内容に自信のない顕れにしか感じない。
「そうですよ。そこは拘らなくて良いんじゃないんですか?」
だよねリリア。ヒーは物事を深く考えすぎだ。
「本当にそう思いますか? もしリリアが、ネットで面白い小説は無いかと検索したとして、その時沢山の作品が出ますよね?」
「そうですね」
「その時、あらすじを一切読んではいけないという条件なら、リリアは何を基準に選びますか?」
「そうですね……タイトルですかね?」
「ですよね。でしたら、タイトルが如何に大事か、分かりますよね?」
「……そうですね~……」
ヒーの言う事も分かるが、それでも、あらすじを読んではいけないという条件がある。そんな条件があるのなら、絶対答えはタイトルなる。この質問は卑怯じゃない?
「人間というのは、皆が見ているとか、あの人は有名だからとか、周囲の行動に大きく影響を受けるんですよ。ですから、一度名が売れるなどの条件が無い場合、その他は、その辺の石コロと変わらないんですよ。リリアは、芸能人が目の前にいるのに、それよりも優先して足元にある石コロを見ますか?」
「いえ……」
物凄い説得力。俺だって、今大人気ヒット中の作品が並ぶ場所に、無名の作家の、それも何の変哲もない作品があっても見向きもしない。
「そうですよね? ですから、そんな猛者の間でも、あらすじを読もう! と思わせるには、タイトルで惹き付けるしか無いんですよ」
なるほど。ヒーが言いたい、タイトルの重要性とはそういう意味なのか。
「じゃあさ。どんなタイトルにしたらいいと思う?」
本来なら、作者の俺が一番頭を捻らなけらばならないのだが、俺の頭脳では無理そうだ。
「一番効果が期待できそうなのは、雅な言葉を漢字で使う、短いタイトルです。しかしこの場合、松尾芭蕉レベルの、文字だけで情景がイメージ出来、かつ美しいと思わせるほどのものでなくてはなりません。このタイトルなら、作者の力量も測る事が出来、内容も芸術性に富んだものだと推察した読者が、あらすじまで読む可能性があります」
松尾芭蕉クラス!? 絶対む~り~。
「次に考えられるのは、現在ライトノベルなどで主流になって来た、長いタイトルです。こちらなら、タイトルにある程度あらすじの要素を加える事が出来、読者はタイトルと同時に内容を推察して、読んでみよう! となります。この作品の内容から考えると、後者の方が良いかもしれません」
なるほどなるほど。タイトルってめっちゃ大切!
「そういう事ですか。 でしたら、もっと勉強しましょう! ってタイトルなどどうですか?」
「それ、ほぼ完結してるだろ! 結果論言っちゃってるだろ!」
リリア、ヒーの説明聞いてた? あらすじまでにしないと駄目だよ?
「そうですね。あくまでタイトルは、え? どうなるの? とか、これって、今の自分の役に立つかも? と思わせなくてはなりませんから、もっと勉強しましょう! では、仮にあらすじを読んでもらっても、タイトルを見て、結局そうなるの? と思われては意味がありません」
ヒーって凄い。ヒーが本を出したら、あっという間に大ヒットしそうだ。
「そうなんですか? では、小説家になろうで小説家になろうと思って登録したら、思っている以上に壁が多くて、人気が出る以前に、先ず誰も読んでくれない事態が発生して、それを解決するには宣伝が必要で、じゃあそうなると、作品自体の質云々より、如何に宣伝するかのマネージメント技術の方が大切で、それだったら小説? って結局何が重要になるの? という話になるので」
「なげーよ! なろうは百文字までしかタイトル書けねーから、オメーのタイトルじゃ入んねーよ!」
「そうなんですか? だってこうした方が目立つじゃないですか?」
「長ければ良いというものではありませんよ? それでは長すぎて、逆に誰も読もうなど思いませんよ? なろうで百文字以内と定められているのは、おそらくそういう配慮、というアドバイスだと思いますよ?」
マジで? ヒーはたったそれだけからサイト側の意思を読み取ったの? なろうの運営は俺より、ヒーに登録して貰いたかっただろうな~。ごめんなさい、なろうの人。
「じゃあどうする?」
「でしたら、小説家になろうと思って、小説家になろうに登録したのに、誰も読んでくれない! というタイトルはどうですか? これなら、なろうの宣伝も出来、サイトに登録しただけでは駄目だと教えられ、努力も必要だと伝えられるんじゃないですか?」
「それだと、なろうに登録しても、なろうでは投稿するだけ損に聞こえますよ?」
「でしたら、小説家になろうと思って、小説家になろうに登録したのに、誰もアドバイスをくれない! はどうですか? これなら、読んではくれるけど、なかなか感想はもらえませんよ、という捉え方になるのではないですか?」
小説家になろう、なろうの繰り返しで、小説家になろうって何なのか分からなくなってきた。
「う~ん。なかなかいいですけど、もっとこう、怒りのようなものが足りない気がします」
「怒り? ですか?」
「えぇ。小説家になろうと思って、小説家になろうに登録したのに、誰もアドバイスをくれなければ、ただで読んどいて、はい終わりは、腹が立ちますよ。ですから、小説家になろうと思って、小説家になろうに登録したのに、誰もアドバイスをくれない! っていうか、誰かアドバイス頂戴! なんてどうですか?」
「いいですね! 作者の心の叫びと、悲壮感のようなものが伝わり、訴えかける感じが良いですね。それに、コミカルなところもまたアリです」
え? そうなの? それだと、ただ単に俺が、淋しい奴に思われない?
「あ、でも、アドバイスが二つもあるので、小説家になろうと思って、小説家になろうに登録したのに、誰もアドバイスをくれない! っていうか、誰か読んで! の方が良いかもしれませんよ。こっちなら、そこそこ読んでは貰えるけど、結局アドバイスが貰えず、それを貰うため読者を増やそうとしている感が、出るんじゃないでしょうか?」
そこまで深い意味を込めるの? っていうか、誰もそこまで考察しないよね? どちらかと言えば、運営に怒られない?
「なるほど。タイトルの中に裏の意味を込め、より生々しい叫びとなるわけですね?」
そうなの? それだと、もうタイトルだけの作品で良くね? 本文食われてね?
「そうでしょう? では、これで行きましょう! 良いですねリーパー?」
え? これで行くの? ……まぁいいや。
「あぁ。もうそれで良いよ」
「では、小説家になろうと思って、小説家になろうに登録したのに、誰もアドバイスをくれない! っていうか誰か読んで! でしたっけ?」
「そうです」
「これで行きましょう!」
こうして俺たちの作品の制作が決定した。というか、自分でも忘れるくらいのタイトル付けるなよ!
自分でも、それなりにタイトルの重要性というものには気が付いていました。しかしリーパーと同じで、内容が悪ければ意味がないと思っていました。今回のヒーのアドバイスで、タイトルの重要性を認識させてもらい、ヒーには本当に感謝しています。これをお読みになって頂いた皆様方には、この作品ではなく、リリア達の助言が役に立って良かったと思われるよう頑張って行きます。自分では勝手な自己満足な作品だと思っているので、少しでも自分勝手な行動の罪滅ぼしとして、皆様方のお役に立てるよう恩返しをしていくつもりです。