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一番のファン

 

「現在、ロビンソンが競う相手がジェニファーだと知り、このまま続けるかどうか悩み、結局答えが出ないままジェニファーと対面するというところで話は終わっています。リーパー、この話の続きはもう考えているのですか?」

「え? いや……」

 有難いんだか迷惑なんだか、いつもその場で話の展開を考えていた俺に、少しでも協力して完結を目指そうとしてくれている四人だが、本当にこの四人に任せて大丈夫だろうか。特にリリアが張り切っているのが気になる。

「そうですか。リーパーは本当に凄いですね?」

「なんだよ急に?」

 珍しくリリアが、素直に凄いと俺を褒めた。今の話の流れで、凄い所などあっただろうか?

「だって、今でも続きを考えていないのに、良く今まで毎日連載を続けていられましたね?」

「そうか? 多分小説書く人はみんなそうだよ。ただ俺の場合は、その場ですぐ書いて投稿してるからそう見えるだけだよ」

 小説を書かない人には、話を即席で作ることが凄いらしい。

「そうなんですか? でもそれって、話がまとまんなくなりませんか?」

「あぁ。だからいつ終わるのか俺にも分からない。話としては、ジェニファーが勝つか、ロビンソンが勝つか、もしかしたら二人とも駄目っていうのもあるけど、結局どれになるか分かんない」

 小説も現実も、未来が分からないから面白い。プロットを作った事の無い俺には分からないが、その方が書いていても面白い。

「なるほど。リーパーは正に、小説家の鏡ですね!」

「はぁ?」 

 小説家ですらない俺を鏡というリリアは、何を基準で物を言っているのか良く分からない。リリアは独特の思考をしている為、物の見方が普通の人とは違う。

「だって、リーパーも話が分からないなら、それはリーパーもこの物語のファンという事ですからね」

「いや俺は作者だから。何で俺が自分の小説のファンにならなきゃいけないんだよ」

 それは恥ずかしくない? 自画自賛ってチョーヤバくない?

「分かっていませんね。作者が面白くない物を、誰が面白いと思うんですか? それに小説だって、やっぱり作者に面白いって思ってもらえる方が、絶対嬉しいですよ!」

 小説が嬉しい? 確かにそう言われればそうかもしれない。作者はその作品の親になる。その親から愛情を貰えれば、例え誰も読まない作品でも、その作品は嬉しいだろう。そう思えるリリアを、優しい子だなと思た。  

「そうだな。俺もこの連載は面白いと思うよ。もしかしたらリリアの言う通り、一番のファンは俺かもな?」

「そうですよ!」

 リリアは嬉しそうに笑った。

「ですが、リーパーは一体、いつまでこの連載を続けようと思っていたのですか?」

 ヒーが訊く。

「いつまでってことはないけど、出来れば早く終わらせたかった」

「何故です?」

「だって、正直この話より、今ある公募に落ちたやつ載せたいから」

 一次も通らず、その落ちた理由も分からない作品は山ほどあった。文法を手直しして投稿すれば、誰かからアドバイスを貰えるかもしれない。何より、毎日投稿するのはもう勘弁してもらいたい。

「そうだったんですか。私のせいで余計な時間を割いてしまい、申し訳ありません」

「そう言う意味で言ったんじゃないよ。別にヒーのせいじゃない。それにこの連載のお陰で、俺が一番勉強になった。ありがとなヒー」

「いえ……」

 ヒーは照れくさそうに目を反らした。俺が礼を言ったのが余程嬉しかったのか、口元がアヒルになりモゴモゴしている。ヒーは表情を顔になかなか出さないが、口元だけは守りが甘い。リリアもそうだ。

「この連載は、まるでリーパーの為のようなものになってますね? リリアが言う通り、一番のファンはやはりリーパーですね?」

「フィリアもそう思いますか! やっぱりそうですよね!」

「ええ」

 リリアの喜び方を見ると、一番のファンはリリアのような気がする。

「でもさ、ここからどうやって終わらせたらいいと思う? 終わらせようと思っても、進めば進むほど問題が出てきて、なかなか終われないんだよ?」

 出来るだけ簡潔に、且つ後腐れの無いような終わり方をしたいとは思っているが、ここからそれをするには、相当な話数が必要だ。

「それなら私に良い考えがあります!」

 リリアが元気よくそういう時は、大体良い考えではない。危険な臭いがプンプンする。

「どんな考えですか?」

 何故フィリアはそれを分かっている筈なのに、リリアを煽るような事を訊くのだろう?

「それはですね……」

 


「お前マジで言ってんのか!?」

 リリアの考えた結末を聞き、思わず耳を疑った。こいつはある意味天才だ。

「本当ですよ。これなら一気に終われるし、何より、こっちの方が断然面白いですよ」

 それはリリアだけだろう。というか、完全に崩壊している。

「それに、今までイライラさせられてばかりだったので、このくらい派手な方がみんな喜びますよ!」

 派手っていうか、チート全開の結末だ。それに、リリアはそんな風に思ってたの!?

「ねぇ? 恋愛は無いし、バトルも無い、みんなだってそう思いますよね?」

 仲間を集めるな! 多数決になれば、絶対俺は負ける。

「そうですね。私は確かに勉強になる話だと思っていましたが、もう少し色があった方が良いかもしれません」

 ほら。リリアがそう言えば必ずヒーは賛成する。というか、絶対みんなリリアの味方をする。

「そうだな。俺もアクションと戦闘は欲しかった。心の葛藤は確かに良かったが、少しくらい主人公のカッコいい姿も見てみたかった」

 ジョニーはリリアの後ろ盾を手に入れると、ここぞとばかりに力を示しだす。ズルくない!

「そうですね。私もこんな暗い話より、最後はスカッと終わるサクセスストーリーが読みたいです。どうせなら、二人とも小説家になって、ミリオンセラーを達成、という感じで終わるのが良いじゃないですか? ただでさえ異世界転生もチートも無いのに、主人公が暗黒騎士ロビンソンはおかしくありません?」

「暗黒魔剣士ですよフィリア?」

 そこはどうでもいい! というか、フィリアは言いたい放題過ぎない?

「それは関係ないだろ! 暗黒魔剣士が小説書いて何が悪い! それにリリアのやつなら、絶対苦情来るぞ!」

「でも、それはリーパーが望んだ、アドバイスを貰うになるじゃないですか?」

「どこがだよ! ただの苦情だぞ! 何がアドバイスだ!」

 リリアは苦情とアドバイスの違いも分からないのか!

「同じですよ。文句があるという事は、それを改善してほしいという事でもあるんですよ? それこそ嘘のないアドバイスじゃないですか?」

 まぁそう言いわれればそうかもしれないが、それは違くない?

「だいたい、リーパーだってこのままずるずる行くのは納得していないんですよね?」

「あぁ」

 だから困っているのに、何でそこ聞くかな?

「だったら、なおの事私のストーリーが適切じゃないですか?」

 リリアはただ単に、自分の考えたストーリーで完結させたいだけだ! 折角ここまで頑張ったのに、何故に破壊されなきゃいかん。

「どこがだよ! なんでいきなりバトルものに変わんだよ! お前……」

 今気づいた。リリアが望むものがダークネスブレイカーだという事に。この子自由過ぎじゃない?

「ダークネスブレイカーは絶対使わないからな!」

「え~! それは困りますよ!」

 何が困るのか。こいつはどんだけダークネスブレイカーを放ちたいんだ!

「ジェニファーにだって、ロードトゥシャイニングクリエイトという必殺技があるんですよ? それは困ります!」

 何? ロードトゥ何? とにかくそんな設定は俺にはない。

「それに、ダークネスブレイカーを発動させなければ、七チェインは達成出来ないんですよ? 暗黒コンボは完成しないんですよ?」

「もうそれは良いんだよ!」

 それを完成させたら、一体何があると言うのだ! この子怖いわ~。

 リリアの案を無視して次の案を求めようとすると、ヒーがさらにリリアの援軍に回った。

「リーパー。私もリリアのストーリーに賛成です」

「何で!?」

 ヒーは一体どうしちゃったの? あれで行ったら大変な事になるのに、何で賛成なの?

「やはり誰しも、最後はハッピーエンドを望むはずです。それに、この作品には常識など必要無いと思います。決して上品ではなくいい加減ですが、私たちの作り上げた作品ですよ? それでも色々な人の想いは詰まっています。その想いがあるのであれば、例えどんな話になっても、必ず笑って終われます。リーパーに小説家として一番必要なのは、これで良いんだという自信だと思います」

「自信?」

 確かに俺は、自分には才能はあるのか以前に、誰が読んでも小説になっているかばかり気にしていた。それをヒーは見抜いていたようだ。

「はい。文法がどうとか、ストーリーがどうとか、それは街を歩く人を見て、あの人は変な人だと思う事と一緒だと思います。ですが、その人にも物語があり、決してリーパーがそんな生き方認めないと言っても、それは覆りません。リーパーは小説家になるために常識を貫こうとしていますが、それは誰が決めたんですか?」

「そんなの、皆がそういってるからそうで、誰が決めたとかあるわけないじゃん」

「でしたら、守る必要はないんじゃないですか?」

 そういうわけにはいかない気がする。人間は社会で生きている。その中で常識から外れれば、当然認められないだろう。なにより、小説家になるためには、小説としての常識は必ず必要になってくる。

「それは無理だろ? 小説家だよ? 絶対常識は必要だよ」

「それは職業としてはそうかもしれません。ですが、クリエイターとしてはどうなんですか? リーパーは誰かと似たような作品を作り、凄いと言われたいんですか?」

 凄いとまではないが、それでもある程度は認められたい。というか、認められなければ食って行けない。

「そうかもしれないけど……でも、やっぱりある程度は常識は必要だよ」

「すでにこの作品は、常識を逸脱していますが?」

「んっ……」

 それは言いっこ無しにしてもらいたい。発案はヒーだよ? 俺だけの責任じゃないよ?

「これでいいんですよ! だって私達ですよ? 楽しくなくっちゃ駄目ですよ? そう思う人、手を挙げて下さい!」

 僅かなスキを突き、リリアは勝手に多数決を取り出した。

「はい」

「はい!」

「はい」

 当然三人は手を挙げる。これでほぼ決定だ! おかしくない?

「というわけなのでリーパー。最終話はダークネスブレイカーでお願いします!」

 お願いしますって、絶対無理!

「無理だ! 俺なろう出禁になるわ!」

「良いじゃないですか。リーパーは応募して小説家になるんですよね?」

 俺は本当に余計な事をリリアに教えた。屁理屈を言わせたら、リリアには勝てない。

「そ、そうだけど……」

「なら決まりです! これで出禁になっても、いずれ小説家になれば、『君たちが鈍いんだよ。だから俺は別に凄くない』と言えるじゃないですか?」

 もしそれを言えば、その時点で俺は小説家を失脚するだろう。

「だいたい、夢を追う者は、そんな事出来ないとか、無理じゃないとか変人扱いされるんですよ。これを投稿すれば、リーパーは必ずそう思われます。ですが、それは逆に言えば、夢を叶える布石以外の何物でもないんですよ?」

 それはそうかもしれない。中学の時、友達が俺はミュージシャンになりたいと言ったとき、なれるわけないと思った。そしてその友達が社会人になり、未だにストリートミュージシャンのような事をしているのを知ると、馬鹿じゃないのかと思った。しかし今リリアの話を聞いて、もしその友達が本当にプロのミュージシャンになり成功したら、俺はもうその友達に一生頭が上がらない。俺はもしかしたら、その友達と同じかもしれない。だが今リリアの言った事を聞いて、もし俺が小説家になったら、その全てがひっくり返る。

「だから、悪さをするのは今の内ですよ? 今が一番いい時じゃないんですか?」

 今、悪さをするのは今の内と聞こえた。リリアは本当に本気かどうか分からない奴だ。

「そうかもな」

「では決定! 最終話はダークネスブレイカーというサブタイトルで行きましょう!」

「ええ‼」

「それは良いタイトルですね」

「あぁ。最終話にしてやっとバトルがあるというのは、俺としても楽しみだ」

 しまった! 完全に流れを持っていかれた!

「はい。今までの全てがここでひっくり返るというのは、私としても楽しみです」

「あ、ちょ……」

「ではリーパー。今からここで、私のパソコンで書いて下さい!」 

「はぁ!? 今書くのかよ!」

「当然です! 最後くらいは私達も一緒に協力させて下さい」

「え……ぁ……」

 リリアは本当に自分のストーリーで完結させたいだけなのか、それとも俺の為に力を貸したいだけなのか分からないが、俺の横に座り一緒にパソコンを覗く姿に、心強さを感じた。

 俺はこの日、初めて笑いながら小説を書いた。本当に良い小説とは、こういうものをいうのかもしれない。

 

  


 

 

  


 とうとう結末が見えてきました。次辺りで最終話になるはずです。

 この小説を書いてみて、私は小説家として認められたいわけではなく、リリア達を認められたいと思いました。私は小説家としての才能はありません。ですが、リリア達は別です。彼女たちは私が作ったキャラクターではなく、どこかからたまたまやって来た者だと思います。こんな私を宿主にしてしまったため、リリア達には苦労を掛けています。だからせめて、私が宿主で良かったと思われるよう頑張って行きたいと思います。

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