一騎当千の四人‼
この作品は、あくまでフィクションです。
なんとかリリア達の許しを得た俺だったが、まだ一番謝らなければならない相手への謝罪が残っていた。
本来なら、それは俺の責任として悩み苦しまなければならないのだか、それでも甘いリリア達は、俺と一緒になって頭を悩ませてくれていた。
「では、リーパーが切腹するには、それが本当にリーパー本人なのか、証明が必要と言うことですか?」
リリアの中では切腹が最良と考えているらしく、YouTubeでそれを放送して、詫びるのが良いと言うが、本当にそれがこれを書いた俺本人なのか、という証明が必要だとヒーに言われ、難航し始めた。切腹は確定なの!?
「はい。それに、例えそれが証明出来ても、その動画を読者が見てくれる保証はありません。下手をすれば、ただ人々に嫌悪感を与え、それを真似する人まで現れ出し、社会に多大な迷惑を掛けるだけになるかもしれません」
「それは困りますね。それでは謝罪にはなりません!」
そこなの? それ以前に、もっと身近な人に迷惑掛かるよね?
「やはり私は、なろうで迷惑をかけた以上、なろうでそれを返すべきだと思います」
さすがフィリア。社会人として真っ当な意見をくれる。
「しかし、それは当然じゃないのかぃ姉さん? 俺もやっぱり、それだけでは足りない気がする。せめて小指くらいは折らないと、その誠意は伝わらないと思う」
ジョニーの言う通り、確かに態度で謝罪の意を示すのはアリだと思う。しかし、こいつらの考え方は時代がおかしい! 今はそれをしても誰も喜ばないよ!
「そうかも知れませんが、ジョニー。博打で作った借りは博打で返すのが勝負師なら、小説で作った借りを小説で返させて上げるのが、リーパーにとっても、今まで応援してくれた読者にも、為になるのではないのですか?」
フィリアは格好いい! だが、その例えはどうなの?
「ではフィリア。フィリアは何か良い案が有るのですか?」
「えぇ。私はこの連載が終われば、リーパーは二度と小説を書かない。という約束をするべきだと思います」
それは俺に、小説家になる夢どころか、例え趣味でも二度とペンを持つことを禁止させるという事。それが分かると、人生の中の何かが失われた気がした。
「なるほど……本当にそれで良いですか? リーパー?」
フィリアの提案は、リリアにとっても切腹を上回るほど厳しい処罰だったようで、本当に? と付けるほどだった。
「あ…………」
それくらいの覚悟はしなくてはならない事は分かっている。しかしそう思うと、切腹した方がマシだと思った。これから先、例え突然良い話が浮かんでも、何かを小説で表現したくなっても、その罰を背負えば一生小説を書く事が出来無くなる。
「…………」
俺が返答せずにいても、誰も「それは駄目!」とは声を発しない。それを決めるのは俺だからだ。こいつらは本当に良い奴らだ。
「ふぅ~。……わか」
「リーパー。本当にそれでいいのですか?」
仕方ない。そう思い覚悟を決め、甘んじてその罰を受ける事を認めようとしたとき、リリアがそれを止めた。
「……」
「リーパーは小説家になるのが夢なんですよね? なら、この罰はそう易々と受け入れては駄目なんじゃないですか?」
切腹すれだの、もう二度と小説を書くなと言ったり、リリアのこういうところが分からない。リリアは何を俺に求めているのだろう?
「それは……」
「フィリア。私が言うのもなんですが、この罰は止めて貰えますか?」
今度はヒーが俺の言葉を遮り、俺を擁護するような事を言い始めた。
「何故ですか?」
「もしリーパーがそれを認めてしまうと、リーパーに助言をした私の罰は、一生誰かに助力してはいけない事になるはずです。ですが、それだと私は、罪を償うために新たな罪を背負う事になります。もしそうなるのなら、私は例え大罪人と言われても自決を選びます。それでは折角の罰も意味はなくなります」
ヒーは馬鹿だ! 俺が一生小説を書かない! と認めれば、ヒーは「私は小説に関しては二度と口を挟まない」とでも言えば済んだ話だ。それなのに、わざわざ減刑を乞うような言い方をして、さらに自分に降りかかる罰を重くしている。挙句、その罰を背負うなら、自決するとまで言い出した。ヒーならやり兼ねない。
「そ、それは……」
フィリアも、ヒーがそんなズルい事を考える子ではないのを知っている為、言葉を詰まらせた。
ヒーは恐らく、助力と言った事から、この先例え目の前で助けを乞う人がいても、それを僅かでも助ける事さえ罪になると感じているのだろう。虫も殺せないヒーにとっては、窓際で外へ出れずに足掻く虫さえ外に出してやれないのは、途轍もなく辛い人生なのだろう。
「ヒー。正直今のヒーには、それを言う資格は無いと思います。ですが、それを言う私でさえその資格はありません。それでも! 私達はリーパーの罪に寄り添わなければなりません。ヒーがそこまでの覚悟を示す罰なら、尚更です」
リリアも責任を感じているようで、なんだかんだ言っても、最後は自分も責任を負うつもりだった様だ。本当に馬鹿な双子だ。
「ふぅ~。分かりました。では、リーパーには、小説家になるまで夢を追い続けてもらう。という罰を与えます」
腹を括ったリリアとヒーは、命までは捧げる事はしないだろうが、最悪、腕や目など、体の一部を代償として支払いかねない。それを分かっているフィリアは、罰とは程遠い罰を俺に与えた。
「そしてヒーちゃんとリリアは、リーパーが小説家になるまで手助けするという罰を与えます」
リリアとヒーに与えられた罰は、俺以上の罰に感じる。他人の夢の為に、叶うかもわからない夢に力を貸さなければならない。それはあまりに酷すぎる!
「フィリア! それは駄目だ! 俺には何の罰にもなってない!」
「分かっていませんね。リーパーの罰は、今生だけの話ではありませんよ?」
「今生?」
「えぇ。リーパーはこの先、たとえ死んで虫に生まれ変わっても、そこからさらに転生を繰り返し、プロ、と呼ばれる小説家になるまで夢を追わなければならないのですよ」
転生しても? そんな話は約束できない! それはその場しのぎの美談でしかない! 俺はこんな茶番がしたくて土下座なんてしていない!
「はぁ! ふざけてんのか! 俺もヒーも、冗談でこんな話してんじゃねぇぞ!」
「私はふざけてなんていませんよ。少なくとも、リーパーは生きている限り今まで以上の苦労をしなければならないんですよ。もう小説は書かないに比べれば、この先逃げられない人生の方が、よっぽど辛いと私は思います」
「そんなの俺がフリしてれば分からないだろ! そんなの駄目だ!」
「兄さん」
フィリアを問い詰める俺に、今度はジョニーが声を掛けた。
「なんだよ!」
「そんなフリが出来ないのは、兄さんが一番よく分かってるんじゃないのか? 少なくとも、ブックマークとかいうものにまで登録してくれた人に、兄さんはそれは出来ないはずだよ?」
それはそうだ。俺が連載を止めていても、誰一人ブックマーク登録を解除した人はいない。俺の周りには本当に馬鹿な奴しかいない!
「そう言う事ですよ。リーパーが背負う罰は、リーパーだけが何とかすれば済むものでは無いんですよ? ファンもリリアもヒーちゃんも、それに私達も関係するんですよ」
ここでもチェインか! 本当にリリアは余計な物を作った!
「フィリアたちは関係ないだろ!」
「ありますよ。リリアとヒーちゃんが生まれ変わってもリーパーを応援しなくてはならないなら、私とジョニーは、それを追いかけて何度でも転生しなくてはなりません。私達はずっとそうやって生きていかなくちゃならないんですよ? それが私たちの罰です! 例え私が大金持ちやお姫様に生まれても、それを捨ててでもリーパー達の元へ行かなければならないんですよ! 分かりますか!」
フィリアは自分で言っていて勝手に頭に来たのか、突然怒り出した。強欲過ぎだ。
「そう言う事だよ兄さん。兄さんが小説家に早くなってくれなくちゃ、俺達はずっと極楽浄土へは行けないんだよ?」
極楽浄土? 何処それ?
「それは読者には関係ないだろ! なに勝手に良い話にして終わらせようとしてんだよ! 結局俺は何もしないで、すいませんでした。って謝って終わりなら、誰も納得しないだろ!」
そんな話で許されるなら、誰も誰かを応援などしないだろう。
「しますよ」
またリリアが変な事を言い始めた。
「はぁ?」
「因果応報って言葉がある様に、リーパーが必死になって夢を叶える為、小説というもので償えば、きっと納得してくれますよ」
「お前、因果応報って意味知ってんのか!」
リリアは勉強不足だ。因果応報は悪い事をすれば、それは必ず自分に返ってくるという意味だ。
「知ってますよ! 悪い事をすれば自分に返ってくるなら、良い事をすれば、それも返ってくるはずです! それは前世だろうが後世だろうが、必ず返ってきます!」
リリアらしい良い発想だ。普通は悪い意味に捉えるのに、この子は本当に純粋だ。
「それに、今まで私たちと一緒にここまで来た読者ですよ! リーパーが腑抜けなくらい分かっていますよ!」
えええ‼ そうなの! こいつら四人も凄いけど、あの四人もヤバイな!
「そうですね。私達四人では、ここまでリーパーを引っ張る事は無理だったでしょう。ですが、その足りない分をあの四人の読者は補ってくれました。そんな一騎当千の四人ですよ? フィリアのビンタで今回は大目に見てくれるはずです」
この話は描かないよヒー! なんで俺がこんな惨めな思いしたの教えないと駄目なの?
「そうだな。兄さんは人徳があるからな。兄さんの周りには良い人間ばかり集まるからな」
確かに俺にはそんな徳があるような気もする。だが、頭がおかしいがついてくるような……あ、これはリリア達の事ね。
「そう言う事です。リーパー、観念して小説家になるまでは、極楽浄土へは行けないと思って下さい」
だから、極楽浄土って何! フィリアも俺がそれくらい分からないの知ってるよね!
「わ、分かったよ! これであの四人に怒られても、俺の責任じゃないからな!」
「えぇ。その時はもう一発、リーパーにビンタします」
「クソだなお前!」
この話はとても読者には見せられない秘話だが、お陰で俺は小説家にならなければならなくなった。因果応報とはまさにこのことだ。だがそのお陰で迷いが消えた。本当に俺は”人“に恵まれている。
ふっと息を吐くと、今まで心の奥に燻っていた負の感情が一気に無くなり、穏やかな気分になった。
こうして俺は、未だ終わりの見えないストーリーを完結へと導くため苦労する。
「一件落着とは言えませんが、これでリーパーへの裁きは終わりました。では、ここから先は、どうやってこの連載を終わらせるのか考えましょう!」
ええ‼ 終わりないストーリーを完結へと導くため苦労するはず……だった。
リーパー達が犯した罪は、私の罪でもあります。
未だ読者様、ならびに小説家になろう運営者様各位には恩返しは出来ていませんが、フィリアの与えたようなズルい罰を、甘んじて受けるような事はしません。苦情、蔑み、私の出来る範囲でそれを受け止めていくつもりです。ご迷惑をお掛けした読者様には、誠に申し訳ありませんでした。そして、こんな作品でも面白いと思ってくれている方に、誠に感謝致します。




