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20/24

せめてものカッコ良さ

 やっと完結が見えてきました。この先は、私とリリア達とのコラボが実現しそうです。私としてはやっとという思いです。

 フィリアに嘘を付き、何とか三日という期限を確保した俺だったが、なろうへログインする気も、小説の続きを考える気も全く起きなかった。

 結局その日は眠ることが出来ず、ひたすら暗闇と静寂の中、俯くしかなかった。ただ次の日が日曜日だった事が唯一の救いだった。しかし空が白がみ出しても気持ちは晴れず、雀の鳴き声に、余計に切なくなった。

 それでも寝らなければならないと思い立ち布団に入るが、目を瞑れば暗闇の中に色々なものが見え、疲れだけが溜まっていった。

 

 バタンッ、という車のドアを閉める音で目を覚ました。

 気付けば、いつの間にか眠りに落ちていたようで、布団の中は心地良かった。それでもすぐにリリア達の事を思い出し、体の重みをずっしり感じた。


 このまま時間が過ぎなければいい。


 瞼を動かす事さえ億劫に感じた。秋の声さえ辛く感じた。

 そんな負の世界に少しでも長くいたくない俺は、再び目を閉じ、現実からも逃げる事を選んだ。


 夢の中が現実ならいいのに……


 そう願いながら、先ほどいた覚えていない世界に戻る事にした。


 ”ピンポーン“

 夢の中へ戻ろうと入り口を探し始めた直後、それを待っていたかのように耳障りなインターホンが鳴った。

 誰だ? まぁ良いか……少しすれば諦めて帰るだろう。

 もう何もしたくない俺はそう考え、無視する事にした。しかし二度ほど鳴らされたインターホンの後、スマホが鳴り始めた。

 リリア達か!? このタイミングで電話をしてくるという事は、間違いなくドアの前にいるのは俺の知り合いだ。今一番会いたくない人物だ!

 当然俺はそれも無視した。すると、

「リーパー! 居るんでしょう?」

 聞こえた来たのはフィリアの声だった。

 何故フィリアが? 時計を見るとすでに二時を回っており、昨日の今日で何故フィリアが来たのか不思議だった。

 まさかリリア達と一緒!? 一瞬そう思ったが、フィリアが一緒にいる場合、必ず先に声を出すのはリリアの方だ。それにリリアがいれば、三度目からは借金取りがやって来る。おそらくフィリアは一人で来た。

 そう思うと、ここで変に居留守を使うのはマズいと思い、寝ていたという理由をつけドアを開けた。

「どうした? なんかあったのか?」

「あ、リーパー。寝ていたんですね?」

 理由を説明するまでも無く、俺の寝ぐせと顔を見てフィリアは言った。

「あぁ。それよりどうした? また何か用か?」

「えぇ。ちょっといいですか?」

 俺の声を聞いたフィリアは、真面目な表情で話があると言い、持参したケーキを見せ、家に上がらせろアピールをしてきた。

「あぁ……いいぞ」

 昨日に続き、今日も訪問した事への謝罪として持参したのか、それとも初めから家へ上がるつもりだったのかは分からないが、それを見せられると相当な理由が無いと断れない。 

 茶の間に通すと、今日のフィリアは余裕があるらしく、自らキッチンへ行き、ケーキと珈琲を出してくれた。

「それで? 話って何?」

 フィリアがひと段落着いたのを見計らい、用件を尋ねた。

「リーパー。もしかして貴方、なろうで投稿するのが怖くなったんじゃないですか?」

 まさかの質問! 昨日はあれだけ信用していたのに、まさか半日ほどで何かに気付いたようだ。

「なっ、何でだよ! 昨日も言ったろ? まだ話が出来てないって」

 フィリアの事だから、昨日の俺との会話を思い出し、違和感のようなものを感じたのだろう。それでも今思い出しても、不自然な事は言っていないはずだ。

「本当ですか? では、昨日言っていた、三つあるうちの一つだけでも教えて貰えませんか?」

「だから、それはどれを使うか分からないから駄目だって言ったろ?」

 完全にフィリアは俺の嘘に気付いている。フィリアのこの質問の仕方は、相手を追い詰めるときに使うやり方だ。フィリアは決めつけて相手を叱る事はしない。その為、例え事実を知っていても、相手の口からそれを言わせようとする。このやり方でフィリアは、屁理屈上手のリリアさえ屈服させる。

「それは分かっています。しかし、もうそろそろ話は決まっていますよね? そうじゃなきゃ『これから物凄い事になる』なんて言いませんよね?」

 俺では駄目だ! あのリリアですら互角の勝負をして負けるのに、俺なんかが勝てるはずは無い。だが、俺には話を反らす技術がある! これに賭けるしかない!

「そ、それはそうだけど……でも、何で俺がなろうを怖くなってるなんて思うんだよ? もしかしてフィリア、俺の案聞いてリリア達に話す気じゃないのか? どうせリリアに『私も連載したい!』とか言われて、それでアイデア欲しくてそう言ってんだろ?」

 フィリアはそんな子ズルい事をしない事は分かっている。それでも今は話題をずらすため、出来るだけ声を荒げず、冗談に聞こえる様に言った。

「そんなわけはありませんよ。ただ、昨日の帰り、私が御休みなさいと言ったとき、リーパーはそれを言い終わる前にお休みと返しましたよね?」

 そんなはずは無い。俺は確かにフィリアのおやすみなさいを聞いた後返事をしている。

「いや。そんなわけないじゃん。俺はちゃんと聞いてから言ったぞ?」

「そうですか……やっぱりリーパーは嘘を付いていますね?」

 フィリアはどんだけ頭が良いんだ! そんなの、もしかしたらフィリアの聞き間違いかもしれない。それなのに、どうやって俺が嘘を付いているのを見破ったんだ!

「リーパー。貴方は何か嫌な事があるとき、それから出来るだけ早く逃げようとする癖があります」

 癖? 俺にはそんな癖があるのか?

「昨日の返事も、少しでも早く私から離れたい為、無意識にした返事なんですよ」

 それは確かにあった。あれ以上フィリアといると、フィリアの事を他人だと思うようになっていた。

「それに、今日ヒーちゃん達と話をしましたが、ヒーちゃんは『私はてっきり、リーパーが増え続ける読者に、恐怖を覚えたのではと思いました』と言っていました。それを聞いて、私もまさかと思いここに来ました」

 フィリアも凄いが、ヒーはもっと凄い! 完全に二人は俺の性格を見抜いている。

「リーパー。もしそうでなければ、私になろうのリーパーのページを見せて貰えますか?」

「…………」

 言える筈がない! でもこうなってしまった以上、もうフィリアからは逃れられない。

「安心して下さい。リリアとヒーちゃんには言いません。それに、私がたった四人くらいでそれはないと言ったとき、『人間が四人もいれば、山さえ更地に出来るんですよ!』とリリアに怒られてしましました。そう思えるリリア達ですよ。誰もリーパーを責めたりしませんよ?」

 リリアがそう言ったの聞いて、自分は何て臆病な人間だと落ち込んでいた俺は、誇りに思った。どんなちっぽけな人間でも、二人三人と集まれば、地形を変えるほどの力を持つ。それを恐れず、自分が偉くなった気にならなかった自分が、正しいと言われた気分だった。あのガキんちょは本当に凄い。

「ハハハハハ。リリアってホント凄いな?」

「えぇ。あの子は特別ですから」

 フィリアは笑った。

「でも、どうして急に怖くなったんですか? 今までは大丈夫だったんでしょう?」

「……いきなり増えたんだよ。それで怖くなった……」

 観念した俺を見て、フィリアはふっと息を漏らした。

「いきなりって、どれくらいですか?」

「九十」

「九十!? ……なるほど、ヒーちゃんは本当に凄いですね?」

 フィリアはヒーに何か聞いていたようで、納得したように言った。

「どういう事だ?」

「ヒーちゃんが言っていたんですよ。『この先、突然アクセス数が伸びるかもしれません。そうなったら、リーパーにはこの連載を終わらせてもらいます』って」

 ヒーはこうなる事を分かっていたのか? 

「何で? ヒーは何で連載を終わらせようとしてるの?」

「なんでも、このプレッシャーを経験させる事が重要だったらしいです」

 ヒーは一体、俺に何を学ばせようとしたのだろう?

「この先これを経験して、それでもなおリーパーは小説家を目指すのか、それとも諦めるのか。そういう事だと思います」

 この見えない恐怖は確かに貴重な経験だ。この先俺が小説家になったら、今以上のプレッシャーが襲い掛かるだろう。それも小説家であり続ける限り。それは俺としては、途方も無い苦痛に感じる。

「私も、芸能人とかユーチューバーとかには憧れますが、それを聞いて怖さを感じました。確かに人気が出れば出るほど良い暮らしが出来るかもしれませんが、自由となると、そうでもないかもしれませんからね」

 俺もそれはそう思う。外に出れば常に人の目を気にして、それらしく生きなければならず、ちょっとでも変な事を言えば、物凄い数の人に叩かれる。俺は四人のブックマーク登録者と、その予備軍である読者の少数でも、その人たちが牙を向いたらと思うだけで恐ろしくなる。俺が目指す夢には、常にこの恐怖が付き纏う。

「しかしリーパー。このままというわけにはいきませんよ? すでにリーパーは多くの人を巻き込んでいます。責任。分かりますよね?」

「あぁ」

 俺達は常にそれを義務付けている。何かをすれば必ず責任を取る覚悟。それが俺たちの絶対の信頼。

「どうするんですか?」

「先ずはリリアとヒーに謝る。そのあと連載を終わらせる」

 もう二人は俺と口をきいてくれないかもしれない。そしてそのまま、二度と会う事も無くなるかもしれない。それでも、ここまで一緒にいた二人だからこそ、正直に話さなければならない。死んでも責任を取れ! リリアは俺達にいつもそう言っていた。そしてリリアも、「私が自分で責任を取れなくなるほど落ちぶれたら、いつでも私を殺してください」と俺達に約束させた。そんなリリアと、カッコ悪いまま一緒にいられるはずが無い。それが俺が見せる、せめてものカッコ良さだ!

「分かりました。では、その時はみんなに連絡して下さい」

「あぁ。そん時は、フィリアもついでにぶん殴ってくれ」

「えぇ。もちろん」

 フィリアのお陰で、心の重荷が降りた気がする。

「ただ、すぐにってわけにいはいかない。俺にも仕事があるから、次に日曜まで待っててくれるか?」

「えぇ。リリア達にもそう言っておきます。次の日曜にリーパーが話があるから、それまで連載は我慢してくれって」

「ありがとう」

 こうして次の日曜、俺はリリア達に謝る決意をした。  


 

 


 




 

  


 

 


 


 御休みなさいは、私も確かに書いた記憶があるし、リーパーもちゃんと聞き終えてからお休みと言っていたはずです。それに最低でも二回は確認しているのですが、今朝普段はしないのに前話を確認したところ、本当にそうなっていました。これはやっちまったなっと思い、直そうと思いましたが、まさかと思いフィリアに確認したところ、あれはリーパーの癖だったようで、ホントに!? と私もびっくりしました。私としてはただの誤字にしか感じず、この話すら言い訳にしか思えないのですが、フィリアの話を聞く限りではそうみたいです。っていうか、それはそれで怖い話です。

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