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背負うもの

 だらだら三話連続で五人の話です。ですが、やはりこの五人は凄いです。正直私のペンネームのケシゴムは、当て字が見つからないためケシゴムにしました。それなのに、この五人はそれを漢字にしてくれました。余計なものは加わりましたが、最後の一つは素晴らしいと思いました。私も将来、もし小説家になれたらこの名を使いたいと思います。

 リリアのまさかの申し出に、一時はどうなるかと思ったが、何とか事なきを得た俺達は、久しぶりに集まったこともありまだまだ話し足りなく、結局連載の話をする事になった。

「へぇ~。器用だとは思っていましたが、まさかリーパーが小説まで書けるとは……」

「あぁ。俺が思ってた以上にちゃんとした小説になってる」

 フィリアとジョニーは、俺の書いた連載を読んで、嬉しい事を言ってくれた。二人の口ぶりから、小説としての文法は最低ラインを超えているのだと思った。

「そうか? そう言ってもらえると俺も嬉しい」

 俺たちの間にお世辞と言われるものはない。というか、兄弟姉妹で普通それは無いか。

「それにしても、物凄いリアルタイム感がありますね?」

「あぁ。一応現実の俺と連動してるからな」

「連動ではなく、チェインです!」

 リリアは余程チェインが気に入ったのか、空かさずツッコむ。

「あぁ、そうだったな。チェインだ」

「チェイン? チェーンソーとかのチェインかい?」

 流石は同業者。ジョニーは直ぐにチェインの意味が分かったようだ。

「あぁ。鎖のチェインだ。俺達はこの作品で、リンクしてるのをチェインって呼んでんだ」

「そうなんですか。考えたのはリリアでしょう?」

「あぁ」

 こんな言葉を思いつくのは、俺たちの中ではリリアしかいない。てか、誇らし気に胸を張るリリアを見れば、誰でも分かるか。

「でも、こんなにリアルな事書いて、個人情報とか大丈夫なんですか?」

 フィリアは情報セキュリティーの資格を持つため、こういう事にはよく気が回る。

「あぁ。一応り……チェインはしてるけど、半分くらいはフィクションだから問題は無いと思う。それに、なろうに確認したけど、今のところ問題無いって返事来た」

「え! リーパー、なろうに連絡したんですか?」

 そういえば、まだそれはリリア達には言ってなかった。

「あぁ。ヒーは迷惑になるから、きちんと調べろって言ってたけど、やっぱり不安になってお問い合わせからメール送った。ごめんなヒー?」

「いえ。リーパーの判断は正しいと思いますよ。後になってから問題になるより、今のうちに確認しておいた方が、運営側も助かるはずです」

 ヒーも本心では心配していたのかもしれない。素直に正しいと言ったヒーを見て思った。

「で、今現在どれだけの読者を獲得しているんですか?」

「え? あぁ。今見せる」

 フィリアには口で言うより、実際見せた方が早いと思い、先ずはブックマーク登録者数を見せようとベージを開いた。すると、

「あっ!」

「どうしました!」

 俺の驚きの声に、フィリアは肩を飛び上げた。

「ブックマーク登録者が……一人増えてる……」

 さっきまで三人だった登録者が、いつの間にか四人に増え、総合評価も八になっていた。なんだこの勢い!

「本当ですか! 私にも見せて下さい!」

 ヒーはリリアがそう叫ぶとすっと前を開け、リリアが俺の横に座り易い様に体を入れ替えた。本当に気が利く妹だ。

「どれですか!」

 俺以上に興奮しているリリアは、俺の腕に掴まる様にスマホを覗く。こいつはチンパンジーか?

「ここだ。ほら、四人になって、総合評価も増えてるだろ?」

「おお! この人は、私のうらごめぷんぷんぷんに惹き付けられて来たのかもしれませんね?」

 それは絶対無いと思う。折角登録してくれたのに、この人はとんだ災難だろう。だが、嬉しそうに声を上げるリリアを見て、「そうかもな」と答えた。

「おお! では、この人の事をうらごめ君と呼びましょう!」

「お前怒られるぞ!」

 リリアに悪気があるわけではないが、ホントすんません!

「凄いですねリーパー。リーパーには小説家としての才能があるのかもしれませんね!」

 すっかり自分たちの力も加わっている事を忘れているリリアは、純粋に褒めてくれた。しかし、いつまで俺の腕を掴んでいる気だ! 

「本当に凄いよ兄さん」

 ジョニーは五人の時は、俺を兄さんと呼ぶ。

「そ、そうかな? でも、ほとんどはヒーのお陰だし」

「そうなんですか? この話を考えたのはヒーちゃんなんですか?」

 フィリアは絶対勘違いをしている。俺の言い方も悪かったが、フィリアは絶対、全部ヒーが話を考えていると思っている。

「私が考えたのは、どうすれば読者を増やせるかだけです。ストーリーや文法などの小説としての全ては、リーパーの力です」

 ヒーは本当に謙虚だ。今の言い方じゃ、まるで俺が書いたからたくさんの読者がいる様に聞こえる。そ、そんな事を言われれば、俺だって天狗になっちゃうよ?

「へぇ~。でも、これ宣伝は一切してないんですよね?」

「あぁ。ヒーとしないって約束したし、俺としてはしてないつもり。それに、プロフィールとか活動報告とかいう機能あるけど、良く分かんないし」

 プロフィールに関しては、俺の自己紹介にしかならないのは分かる。だが、俺はカッコいい事を言えば小説だけで勝負したい。なんて言えば聞こえはいいが、実際は個人情報を出すのが怖いだけだ。

 活動報告に関しては、実際良く分かっていない。おそらく自身の作品を宣伝するものだとは思うが、名が売れているならまだしも、無名の俺が活動報告しても、誰こいつ? と思われてお終いだろう。本来ならそんな風に思われる事を恐れていては駄目なのは分かるが、だって俺だよ? 誰が俺を知りたいと思うの?

「それは少し勉強した方が良いですよ。リーパーの書いた小説は、宣伝しないでこれだけのファンを獲得出来るんですよ? 少し宣伝すれば、あっという間に名が売れますよ?」

 フィリアもヒーと同じくらい俺は頭は良いと思う。だが、ヒーの場合は天性のものであるため純粋なのに対し、フィリアの場合は、人生経験の中で培ってきた頭の良さであるため、その根幹にはどうしても損得勘定が付いてくる。今の言い方だと、完全にフィリアの頭の中にはお金が見えている。

「別に俺はこれで小説家になる気はないし、第一、なろうに登録したのは勉強の為だから」

「そうなんですか? それは勿体ない話ですね?」

 勿体ない!? お金大好きフィリアが言うと、なんか汚い話に聞こえる。

「確かにそうかもしれませんね?」

 ヒーまでおかしな事を言い出した! ヒーも実はお金が大好きなの?

「ヒー、マジで言ってんのか? これで何かを求めるのは駄目だって自分で言ってたろ?」

「リーパー? 何を言っているのですか? 私が言っているのは、折角リーパーの作品を面白いと思ってくれている人がいるのに、いつまでも続けて行けないという意味ですよ?」

 ヒーは本当に純粋だ。少しづつ増える仲間という読者と、まるで冒険をしているような感覚は、この連載が終われば終わる。確かに毎日寝る時間を削り作業を続けるのはキツイが、それでも、それ以上にヒー達とこうして何かをして、さらにそこに新たな輪が広がるという喜びは、この先そうそうあるものでは無いだろう。それを思うと、ヒーが勿体ないと言った言葉には共感できた。

「なんだ、そういう意味か。俺はてっきり、これで金儲け出来るって意味だと思った」

「それはリーパーが一番納得出来ないのではないですか? 仮に私がそう言ったら、リーパーは怒りますよね?」

 優しい笑顔でそう言うヒーが、俺の事をそんな風に思ってくれているのかと思うと、嬉しかった。

「そうだな……そうかもな」

 そんな俺達とは違い、フィリアはやっぱり違う意味で言っていた。

「何でヒーちゃんは、これでリーパーが小説家を目指すのは反対なんですか?」

 あれ? これは他人の力を借り過ぎだから駄目だって教えたら、そうなんですか? って言ってたのに、フィリアは聞き流してたの? 

「私はやっぱり、リーパーの独力で小説家になって欲しいんです。こうしてみんなで作るのは楽しいですけど、リーパーの力はもっと凄いと思います」

 あぁそういう事ね。フィリアも、結局は俺の力だと言いたいわけね。それは言い過ぎじゃね? そんなわけないよ~。でもなんか嬉しい。ヒーも俺を過大評価し過ぎじゃないの? 

「それはあるかもしれませんね。それに、良く考えたら、リーパーだとすぐ調子に乗りそうですもんね?」

 え?

「そうですね」

 え? 結局そういう事なの?

「そうですよ! リーパーですよ!」

 俺だからなの?

「それはあるかもな」

 ジョニー、お前もそう思うの?

「それに、リーパーが先生なんて呼ばれるの、私想像できませんし」

 別にそれは良くね? 俺が先生って呼ばれたら駄目なの?

「先生か……そうだな」

 何の間なの? ジョニーは何を想像したの?

「私は先生と呼ばれても、問題無いと思いますよ?」 

 そうだよねヒー。俺が先生って呼ばれても、別に良いよね?

「リーパーせっ?……優樹先生ですよ! 何が優樹先生ですか! ペンネームケシゴムのくせに!」

 それは関係なくない? ケシゴムはリリアが付けてくれた渾名の由来じゃないの?

「そうでしたね」

「もういいよ! 何でヒーも納得してんだよ! ケシゴムの何が悪いんだよ!」

 何なのこいつら! いつもはこの役ジョニーじゃないの? 俺が主役だから僻んでるの?

「でも、何故リーパーはカタカナのケシゴムにしたんですか? 漢字にすれば、カッコ良く出来たんじゃないんですか?」

 リリアですらそこはツッコまなかったのに、フィリアは何故そこをツッコむのか? 俺だって漢字で考えたよ!

「当て字が見つからなかったからだよ! 別にいいだろ!」

「でも、漢字にした方が見栄えは良くないですか? どんな当て字を考えたんですか?」

 それこだわるの? タイトルでさえ考えるの面倒なのに、何で名前までこだわらにゃならんのか?

「草冠に介っていう字に、子供の子だよ! ゴムが良い字ないから止めたんだよ!」

「ヒーちゃん、紙かして?」

 フィリアはヒーに紙を貰い、俺の言った字を書き始めた。

「こうですか?」

 見せられた紙には、芥子と書かれていた。

「そうだよ。別にいいよ! どうせ今から変えるわけじゃないから! な、ヒー?」

「そうですね。すでにそれで認知されているのなら、下手に触るのはどうかと思います」

「だろ」

 ただでさえ混沌としている作品なのに、作者名まで変えればもう手が付けられなくなる。

「別に私は変えろと言っているわけじゃないですよ? この先、もしリーパーが小説家になったとき、今のケシゴムじゃカッコ悪いでしょう?」

 この先俺が小説家になったら? フィリアは俺にその可能性を感じてるの? いや~まいっちゃうね。

「それに、やっぱり作者の名は、知性を感じられるものの方が良いと思いますよ?」

 それは今のケシゴムじゃ、馬鹿に見えると言っているの? ケシゴムに謝れ!

「それはフィリアの意見だろ! ケシゴムだって立派な名前だろ!」

 なんて失礼な奴だ! フィリアはたまに暴言に近い事を言う事がある。今のはオブラートに包んでいるが、完全に俺を槍で突いている。

「確かにそうかもしれませんね? 私も漢字にした方が良いと思いますよ?」

 もうそれで通ってんだから、下手に触るなってヒーが言っていたのに、リリアは何を聞いていたんだ! お前まで参戦したら余計面倒だろ!

「ですよね? 芥子は知的な感じがするのに、勿体ないですよ。だから、ゴムは……」

 フィリアは俺の事などお構いなしに、何かを書き始めた。

「これなどどうですか?」

 フィリアが見せる紙には”芥子五夢“と書かれていた。それを見てリリアが「おぉ!」と唸る。

「なんかカッコいいですね! リーパー、今からこれに変えましょう!」

「何でだよ! もうケシゴムで書いてんだから、俺は変える気ねーよ!」

「え~。変えましょうよ~」

 出た。リリアのおねだり。これが始まると面倒だ。何とかしなければ。

「やだよ! それに五つの夢ってなんだよ! どんだけ強欲だと思われるんだよ!」

 カッコばかりにこだわり、フィリアは全く意味を考えていない。俺には込めた想いの方が大事だと思う。

「え? そんな風には誰も思いませんよ? ……」

 言った後、黙って俺を見つめて表情を変えないフィリアは、今必死に意味を探している。何年一緒にいると思ってんだ! バレバレなんだよ!

「じゃあ。この五つの夢は、俺達五人の夢を詰めればいいんじゃないか?」

 ジョニー? いつもは黙ってるくせに、何でこういうとき余計な良い意見言うかな?

「それは良いですね! では、私の掃除機と浄水器を買う夢も込めて下さい!」

 ほら~。もうリリアのどうでもいい夢加わっちゃったよ。どうすんだよ。

「じゃあ私は、立派な一軒家を買っても、一生遊んで暮らせる大金を手にする夢をお願いします」

 物凄い生々しいフィリアの夢を加えるのは、なんかとても嫌だ。普通こういう時は、綺麗な夢を望まない?

「では私は、いつまでも五人で集まれる夢をお願いします」

 そうそうこういうの。ヒーは本当に良い子だね~。

「じゃあ俺は……」

 来た! 一番のダークホース、ジョニー。未だにこいつの思想は読めない。一体どんな夢を持っているのだろう?

「俺は、世界平和を頼むよ。兄さん」

 それは俺のペンネームには入りきらない夢だ。こいつはどこのヒーローだ!

「なに勝手に決めてんだよ! 何でお前らの夢背負わなきゃダメなんだよ!」

「え? 小説家とかファンを抱える人は、みんな他人の夢を背負うものですよ? それが嫌なら小説家にはなれませんよ?」

 くそ! 何でリリアにそれを言われなきゃならん! 

「うっせーよ! 大体よ、俺一人の夢でも一杯なのに、お前ら四人分も増えたら余計遠のくわ!」

「ええ? この名前にリーパーの夢は入っていませんよ?」

 どういう事!? それじゃ完全に、俺は他人の夢を背負わされるだけのでくの坊じゃね?

「何でだよ! それならいらねーよ! 貰ってもすぐに川に捨ててやるわ!」

「分かっていませんね? 五つ目の夢は、この作品のファンの夢ですよ。何でリーパーが加わろうとしているんですか?」

 リリアが言っている事はとても素晴らしい。でも、それなら俺も加えてよ!

「それは良いですね。リーパーにはこの先試練があるかもしれませんが、それでも小説家を目指すと言うのなら、この名は相応しいかもしれません」

 あ~あ。ヒーまで納得しちゃった。しかし、今の言葉で断る光明が見えた。

「分かったよ! その代わり、それは俺が小説家になるまで使わないぞ! いいな?」

「いいでしょう! 私が許可します!」

 リリアはアホだ。俺が小説家になれる保証はどこにもない。それなのに簡単に認めた。それも何故か勝手に許可して。しかしリリアが決めれば、誰も文句は言わない。それがリリアがリーダーたる所以だ。 

 

    


   

  

 



  

 

 

  


 

 

 

 


  

 やっと一区切りという感じです。次話からは、いい加減ストーリーを進めたいと思います。だらだら下らない話を続けてしまい、誠に申し訳ありませんでした。

 これからは完結に向け進んでいきたいと思いますが、正直それはリリア達次第です。私としては無駄に話数を増やしアクセス数を伸ばす事は姑息だと思っています。それでもこのように話数を増やしてしまい申し訳ありません。出来るだけ早く、簡潔に終わらせるつもりなので、ご勘弁願います。

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