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ヤンデレと銘打った何か別のもの

作者: 俺です。
掲載日:2018/09/17

「……ん?」

 目が覚める、と言うのは言葉にするのは難しい。意識がはっきりしていないから何かを考えることは難しい。

 しかしそれは、目が覚めた所が見知った自分の部屋だった場合だけだ。しかもそれが、見るからに旅館ではない所、自分の知らない所、来た覚えのない場所だったら余計に目はすぐに覚めるってもんだ。

「どこだここは」

 端的に言うと、俺こと千葉昌昭は、今、全く知らない所にいた。段々と意識がはっきりして行くと同時に、得体のしれない恐怖感もわきあがってきた。

「何故俺は……縛られているんだ……?」

 恐怖の一番の理由であろうその縄は、完全に俺の身動きをとれないように座っている椅子ごと縛り付けている。正直体のあちこちが痛い。

 恐怖の根源はもう一つあり、それはこの部屋がとても暗く、なにも見えないと言うことだ。窓もない、ドアがあるか分からない。椅子に座っていると分かったのは、俺の感覚による。もしかするとこれも椅子ではないのかもしれない……いや椅子だ、これは椅子だろう。

 え……と、何故俺はこんな所にいるのだろう。眠る前、俺は何をしていた?

「学校……はちゃんといったな」

 最も学校に行けども、まともに授業を受けていないがな。ええと、学校から帰ってそれから何をした?

 俺はもっと深く考えようとしたが、それは中断された。眼を閉じ、うつむいた状態で考え事をしていた俺の視界は、突然明るくなった。

バッと前を向くが、明るさの為眼をそらす俺。

「目が覚めた?先輩」

 先輩?俺のことをそんなふうに呼ぶ後輩なんて、俺は1人も知らない。

 今度は目をそらさないように、ゆっくりと目を開けて前を向く。

「ようやくこっちを向いてくれましたか、先輩」

 そこには、俺の知らない……いや、この子を俺は知っている。髪を後ろでくくったこの子、薄い栗色の髪がよく似合ったこの子、俺の一つ年下で、ちらっと見える八重歯が見える、そんな女の子を。

「お前は……確か……」

「え、いや、覚えてないでしょう。何せ一年も前の事ですからね。当時中学三年生の私は、先輩にナンパをされたんですよ?」

 そうだ、思いだした。当時俺は高校一年生。祭りで浮かれまくり、なにを思ったのか柄にも会わないことをしでかしたんだった。こうして今まで彼女なんていなかった俺のことだ、その後どうなったのかは言うまでもない。

「じゃあ、私たち、ようやく初めて自己紹介できますね、こうしてちゃんとお話しできる状態なんですから」

 ……いや、それなら俺の縄を外してくれないだろうか。とても、お話しできる状態ではないように思う。

「俺は千葉昌昭。……これでいいか?」

 しかし俺はそんなことはここであえて指摘しない。このこは……俺の望んでいたような子かもしれないからだ。

「私の名前は、千莉ちあです。やったね先輩、あなたの望んでいたメンへラ後輩ちゃんだよ」

 とたん、何を言われたのか一瞬分からなくなった。しかし彼女は確かに、俺の望みを知らずに叶えさせようとしていたのだろう、それだけは分かった。

「先輩、なんて学校生活送っているんですか」

 まるで見てきたように彼女が言う。はっとして、俺は彼女の方をまず見る。

 キョロっと部屋の方に視線を逃がす俺。と、ここでようやく気付いたが、ここはどうやら誰かの部屋の様子。ベットがあり、棚があり、机がある。しかしところどころに俺の写真があるのはなぜだろう。例えば、机の上の写真立ては、俺の一年の時の写真だ。

「そうか……‼ここはお前の部屋なのか」

 俺はその部屋にかかっているその制服を見て、ようやくわかった。なぜ俺の学校生活に詳しいのか、この子がどれほど俺の事を見ていたのかを。

「保健室って、何が楽しいんですか?ちゃんと授業に出ればいいじゃないですか、保健室通いなんてしないで」

 本当にこの子はいたい所を突くな……。いや、俺だって好きで保健室で授業を受けているわけではない。ちゃんとそれなりの理由もあるのだが……しかしそんなの、この子は全部知っているだろう。

 俺は再び目をそらしてしまう。ああ、そうだよ、あの日から全く前を向けていないよ……いっつも下ばっか向いて、光をいやがって……視線はいっつもきょろきょろしている。

「せんぱい」

 呼ばれて、前を向く。向いた先には、満点の笑顔を見せる後輩が。

「せんぱいは、こんな所で立ち止まる人じゃないんですよ?」

 この時の俺は、まさかこの言葉が冗談とか、勝手な妄想とかではなく、結構真面目に言っている話だったということを知らない。この時の俺は知らない、まさかこの子と一緒に世界を相手に戦争を始めることなど。

 そんな大層なこと、やはりこの時の俺は知らないので、さしのばされた手をとってしまった。その時、いつの間にか縄はほどけていたことにも気付かず、ただただ彼女からさしのばさてる手ほど、きれいなものはないと思い込んでいた。

 今、過去に戻る力が俺にあるなら、この時の俺に向かって、こういうだろう。


「そいつはメンへラ何かじゃない」


まぁ書けって言われたんで書きました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 先輩って呼ばせるのはいい [気になる点] 付け合わせのメンヘラやな。 [一言] メンヘラあんまり関係なくない?
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