捌 ヤキモチの怨霊
戦闘は一段落終わった。祈たちの普通ではない日常がここから始まった。
今年の冬も寒いものだ。
「さっむ!」
暖房がついた家から出かけたら、祈は寒気を感じた。
「仕方ないでしょう。雪降るそうと天気予報が言いましたけど。」
薫は不満そうな態度で祈に話した。
「薫、何かお前も冷たそうだけど。」
祈は薫何故急に自分に冷たい態度を取ったのか全く心当たりがない。
「祈くん気のせいではありません?私はいつも通りですよ。」
薫は先程自分が祈と精衛の手を繋いだところを目撃したことで、ヤキモチを焼いているのは口に出せない。
「なあ、精衛さん、君は天界から来たんだろう?何とかならないの?」
祈は精衛に助けを求めた。
「何とかって?」
「天気を管理してる神様に暖かくしてもらってって。」
「それは無理でしょう?私はそれの権力も持てないし。」
精衛は祈に、
「だいたい私はそのためにここにいる道具ではあるまいし。」
「そうですよ。精衛ちゃんにそんなことをさせる祈くんは本当に乙女心を分からず屋さんですよ。」
薫も祈を責めてきた。
「ごめん、僕が悪かった。」
祈は2人に言われて、頭を下げて合掌して謝った。
「ヤキモチ焼いてるの?」
「えっ?」
耳元で女の声がして、薫はびっくりさせられた。
「うわっ、どうしたの?」
精衛は薫に驚かれて、それを聞く。
「いいえ…精衛ちゃんは聞こえなかったのですか?女の声。」
薫は女の声が聞こえたことを精衛に言った。
「いや、何にも。空耳でしょう。」
精衛は何の異状も感じていない。
「本当だよ。薫今日は何か変。」
祈も薫が普通でない気がした、
「具合でも悪いの?一旦休んだ方がいいじゃない?」
「いいえ、大丈夫です。きっと気のせいです。おかしいですね、私。もう平気ですから、学校に行こう。」
薫は2人を促して、3人は続けて通学に行った。
3人で行ったら、そこの垣の前から人影が現れた。
「ヤキモチ…焼いてる…」
「おはようございます!」
今朝の風紀検査の日直は、生徒会長で2年生の白書文である。白書文は学校では知らない者はいない人気者で、文武両道、学年一の偏差値と運動万能の才能を身に付けていて、みんなを平等に接している完璧な性格で、生徒会長になるのも無理もない。その裏腹にかけている眼鏡は彼のこと、勉強しかしていないイメージが付けられている。
「おはようございます、白会長。」
祈と薫は返しに挨拶をした。
「今日も素敵な一日であるように。」
白書文の隣にいる、地面まで届くような長い黒髪の美少女も学校に入る生徒たちに挨拶をしている。この美少女は劉詩香、今年度で転入した白書文と同じく成績と運動が完璧にできる生徒で、転校したばかりにも関わらず副会長に選ばれて、白書文を補佐している。あまりにも完璧な美男美女の2人が常に一緒に行動しているので、2人が付き合っている噂も絶えなく流れている。
「白会長はやっぱり人気者だな。」
女子生徒が白と挨拶する度、黄色の声をあげるのを見て、精衛は祈に感想を発した。
「そうよな。でもモテるのも大変だよな、一々声をかけられて。」
祈はそういう感じは好ましくないのだ。
「それに気になるのが劉副会長だ。何か白会長が女子たちに挨拶される度、機嫌が悪そうだけど。もしかしたら、本当に噂の通りなの?」
精衛は鋭く劉の表情の変化を察した。
「さあ、僕と関係ない話から、知らない。」
祈は恋話に興味もない。
精衛は劉を見るままに黙り込んでしまった。この時劉も視線を感じて、こちらを見て、祈の顔を見たら、何かを考え込んだ様子。
薫は無言で精衛を見つめていた。
「どうしたの、2人は?」
先に行った祈は振り返って、動いていなかった精衛と薫に声をかけた。
「ううん、何も。」
と精衛は首を横に振って、祈についた。
薫は無言のまま2人の後についた。
薫の後ろに、さっきの影が現れた。
「ヤキモチ…いい…。」
「!!」
精衛は急に後ろに振り向いた。
「どうしたの?」
祈は精衛の動きに気づき、それに聞く。
「いや、何か気配を感じた。妖気のようだ。」
精衛は警戒した顔で言う。
「妖気?妖怪がいるってこと?」
祈には理解が及ばない。
「ああ、妖怪というより霊的な気配。一瞬で感じたが、また消えた。とにかく、気をつけよう。」
精衛は追及を止めて、再び祈と校舎へ向かった。
薫も無言のままだった。
昼休みの食堂。
食事をしている祈の向こうに、何も食べない精衛がいる。
精衛は人間界の食べ物を必要としていない、それに食堂の料理は美味しいとは言えない食感がしているため、食べる理由がないのだ。朝と晩ご飯は願の腕前がとても良かったので、味覚を満足させるため、精衛は欠かせずに食べている。
「あっ、また2人が一緒にいるんだ。」
「もしかして本当に噂通り付き合ってる?」
クラスメートの男子たちがまた祈と精衛をイジってる。
「そんなバカな…」
「トン!」と強い響きが祈の話を途絶えさせた。それは薫がトレイを強く食卓に置いたのだ。
「うわっ、正妻がキレてる。」
「怖っ、やめろ。」
男子たちはそこで解散した。
「…」
祈は薫の異常に気づき始めた。
「薫、今日のお前はおかしいんだ。どうした?」
「おかしいですか、私?」
薫は病みついた顔で祈に反問した。
「そうよ、朝から薫らしくないんだよ。」
「薫らしくない…んですか?私はいつもの私ですよ。」
もう薫は正気になっていない。
「違う。薫、自分今顔赤いのが分かるか?」
「いいえ、お気をなさらずに。」
「やっぱダメだ。一旦保健室行こう。」
祈は薫の手を取って、保健室に連れて行こうとした。
「ほっとけよ!」
薫は祈の手を振り切って、叫んだ、
「あの女がいいなら、一緒にいたらいいじゃない?」
こう言いつつ、涙がぽろりと溢れ出した。
「だから何なんだ。そういう関係じゃない分かってないじゃないか?」
祈は薫の異常にはっきり確認できた、
「とりあえず、こっち来て。」
祈は強引に薫を食堂から連れ去った。
保健室で、泣き疲れた薫が静かに寝ている。
精衛と祈は側に立っている。
「間違いなく、薫さんは何かに取り憑かれているんだ。」
精衛は診察の結果を言い出した。
「やっぱりか。」
薫の性格をよく知っている祈は異常さから、薫が取り憑かれたことを察していた。
「何に取り憑かれたのかはまだ知らないから、勝手に動かない方がいい。薫に害はまだないようだから。とりあえず、静観しよう。この内に対策を考えよう。」
精衛は冷静に判断した。
「いったいどんなモノに取り憑かれたのか?」
祈は精衛に訊ねる。
「恐らく怨霊だと思う。」
「怨霊!?それはやばいじゃないか!?」
祈はとても驚いた。
「場合によってね。怨霊は直接人に害を与えるものと間接与えるものと害を与えられないものがいる。この霊はたぶん後ろの2種類のどれかか。」
精衛は自分の推測を祈に伝えた。
「少し安心した。薫はしばらく大丈夫ということだな。」
「ええ、だから少しも対策を考える余裕があるから。」
精衛はこう言って、分析を始めた、
「まずは、薫はいつどこから取り憑かれたのと原因を探らなければ。」
「そう言っても心当たりが…。」
「いや、あるわ。今朝、薫ちゃんは私に女の声が聞こえたかと聞いて来たじゃないか。あれは手掛かりかもよ。」
「それはあったけど。その女の声は怨霊と関係あるの?」
「可能性は高いよ。」
「でも、精衛さんはそういうの気づくんじゃないの?」
祈は精衛に疑問を投げかけた。
「私は千里眼や順風耳などがないから、一々気づく訳がないじゃないか。天界の者だって注意力が取られることもあるのよ。」
精衛は祈の疑問を返した。
「とにかく、もしその時間その場所で取り憑かれたとしたら、調べた方がいいと思う。」
精衛は次の判断を出した。
「えっ、でも昼休みはもうすぐ終わるんじゃないか。」
「薫ちゃんの命は放っておけない。祈さんはとりあえず薫ちゃんのこと見張りしてて、調査は私が行く。」
こう言いながら、精衛は窓から出ようとした。
「待て!俺が行った方がいい、精衛は薫の世話にせよ!」
赤い光が光っている目の祈が精衛を呼び止めた。
「君は…」
呼び止められた精衛は振り向いて、祈に向かって、
「もう一人の祈さん…だね。」
「うん、これはどうでもいい。」
祈は言う、
「この娘は嫉妬、ヤキモチの怨霊に取り憑かれている。」
「ヤキモチ?何で?薫ちゃんに祈さんとはただの協力者の関係って言ったのに。」
「じゃあ、もし…が他の女の子と仲良くして、その娘は「ただの友達」と言ったら、君はその娘に何も思わないのか?」
祈の話に肝心な名前が出る時、風が部屋に入って、散らせたが、精衛はその名前で遠くの記憶が蘇って、瞳が震えるほど冷静にいられない。
「何で!その名前は!お前はいったい何者!?」
精衛は一歩で祈の前に飛び、彼の襟を掴んだ。
「薫の命がかかってるから、その話をする場合じゃない。いずれ話して分かる時期が来る。今ではない。」
と精衛の手を振り切って、固まった精衛を置いといて、窓から飛び出した。
「何で、もう一人の祈はその名前を知ってるの?天界でも知ってる者はそういないのに。」
と涙する精衛。
窓の外、木の枝に立っている李が、無表情に見ていた。