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ヘブン-Heaven  作者: 中野八郎
ルミナスヘブン
4/12

肆 変わりゆく日常

 広い居間を小さくしたいと今祈が思っていることだ。

 祈が真ん中に、精衛と薫が両側のソファに座って、向こうには、願が座っている。

「で、どういうこと?姉ちゃんが知らない間に姉ちゃんが知らない女の子を家に連れ込んだのはどういうこと?祈って、二股してるの?」

 願は質問を投げかけた。

「は?二股?どういうことだよ!僕は誰とも付き合っていないし。」

 祈も無実の罪を背負いたくないのだ。

「なら事情を説明しなさい。姉ちゃんは別に祈は彼女とかできてもいいと思うけど、不純異性交遊は流石に大目に見れない。」

「だからそういうことじゃないから。」

 祈は窮地に追い込まれた。

「どうしよう?事前に言い訳を薫たちと打ち合わせする間もなかった。どう説明すればいいのか?」

 祈が考えている時、精衛は立ち上がって、右手を胸に、

「お姉さん、いいですか?私は勝手に祈くんの妾になるわけですから、祈くんのせいではありませんよ。」

 自慢気で自分の身分を偽装した。

 精衛はやはりまだ現代、否、人間界の風情を分かっていないのだ。祈を助けようとこの話を言い出すと、3人の目が同時に丸くなった。

 祈は「君何言ってるのか?」

 と言い出そうとする時、

「祈くんはやっぱり浮気をしたんですね。」

 薫は調子に乗って、また奥さんの芝居を始めた。

「おい。」

 祈は中で思った。

「祈!」

 願はゆっくりと怖い声で祈の名前を呼んだ、

「やっぱりこういうだな。」

 願は急に親芝居をして、

「クス、祈をこんな子に育った覚えがないのに。」

「おい、人の話を聞け。」

 祈はツッコんで言った。

「お姉さん、泣かないでください、祈くんはいい男ですよ。私は大丈夫ですよ。妾でも幸せなのですよ。」

 精衛もまた祈にドヤと上手く説明したかのように、笑顔をした。

「何か「どうだ、私上手いでしょう」の顔だよ!」

 祈は心の中で、精衛をツッコんだ。

「君は良い子すぎるよ。こんな子に育って君を騙したごめんね。」

 願は精衛に言う。

「だから人をクズとか言わねぇよ」

 祈のツッコミだ。

「いいえ、祈さんはどうあれ、私にとっていい男なんですよ。」

 精衛もノリノリに参加した。

「ああ、もういい!」

 祈はツッコミに疲れた。



「しんどかったわ。」

 何となく、願を誤魔化せた祈は、一息を取れた。

 精衛は祈の友達で、両親が海外出張に行ったため、寂しくなった精衛はひっそりと祈の部屋に潜り込んだと、願に説明した。

「ごめん、まさか祈さんのところで妾は不法な存在なんて。」

 精衛は祈に謝った。

「いや、もういい。ていうか、精衛さんも、薫も乗りすぎじゃない?」

 祈は2人に愚痴を言う。

「願姉さんだから、いいじゃないですか?」

 薫も願の性格をよく知っている。

「もう勘弁してほしいよ。」

 祈はやはりこういうことが苦手なのだ、

「ところで、ひとまず、精衛の両親が海外出張だと言ったが、学校を通わず流石にバレるだろう。」

 精衛は人間でなくても、一目で見れば、どう見てもまだ学校に通うべき少女にしか見えない。両親が海外出張の理由があっても、学校に行かないのがやはり疑われるのだ。

「じゃあ、私が祈たちと一緒に出かければいいじゃないの?」

 精衛は提案した。

「いいんだけど、それからは?」

 祈は聞く。

「まあ、どこかで回したら。」

「いやいや、怪我しているのに、それはなし。」

 流石に祈は否定する。

「では、出かけるフリをすればどうですか?後で窓から戻って。下校時間になったら、また一緒に戻ったら、普通に一緒に学校に行ったに見えるはずです。」

 薫は提案を補足した。

「とりあえず、こうしよう。」

 祈は提案を決めた。



 翌朝、精衛は初めて祈と3人で、朝ご飯を食べることになった。

「お姉さんが作ったご飯おいしいです。」

 精衛は完全にこの家に馴染み込んでいる。

「そう?ありがとう。」

 願も構いなく、精衛のことを妹のように接している。

 祈はこれを見ないように黙り込んで朝ご飯を食べていただけだった。

「あら、祈、どうしたの?黙り込んじゃって。」

 願はニヤリしながら祈に聞く。

「いや、別に。ていうか、お前らほんとに構いがないなって。」

 祈はまたのツッコミだ。

「いいんじゃんいいんじゃん。」

 願が笑いながら手を振って言う。

 祈はただジト目で見るだけだった。


 薫はいつも通りに来た。

「行ってきます!」

「いってらっしゃい。」

 4人がそれぞれの向かうべき場所へ出発した。

 願が遠く行くのを見て、精衛は祈の部屋の窓から入った。

 精衛は昨夜祈から学んだ知識でパソコンをつけた。



「よ!おはよう、林くん。」

 学校に着いたら、校門で風紀委員の腕章を着けている少年が祈に挨拶をした。この少年は細くて、背は161cmで、同年代では普通に過ぎない程度で、髪の毛は柔らかそうで、後ろに長く赤い紐で短く束ねている。

「おっす、李くん。」

 祈はこの少年に返事をした。この少年は祈とは別のクラス、薫と同じクラスに通っている同級生の()(たく)である。何故か祈と親しくなっている。

「今朝もご夫婦で登校?」

 李はいつもの冗談で祈をからかう。

「はいはい、ていうかその冗談は止せ。」

 祈も李と仲良く見えるように李に言葉を返す。

「いいんじゃないか。別に両思いだろう?」

 李は2人のことを応援しているようだ。

「お前何いってんだ。」

 祈は照れながらそれに曖昧な態度を取った。



「…、…で良かった…。」

 また夢の中の少女。話もまたはっきり聞こえない。

「林祈、お前はいつまで寝るつもりだ!」

 女性教師の公孫(こうそん)()()が本を棒に巻いて、祈の頭を叩き、怒りながら言う。

 クラスのみんなが笑い出した。

 無理もない。祈は成績が悪い原因でこのクラスに入った訳ではないからだ。薫と同じクラスに入らないために、わざと試験の名前を書かずにした。それで、無効成績でこの落ちこぼれクラスに入ることになった。これが故にこのクラスの唯一学年トップに入る生徒にもなっているのだ。

「成績がいいと言っても、授業中寝ることがいい訳じゃないわ。」

 公孫先生が祈に説教をした。

「すみません。」

 祈は先生に謙遜の態度を取った。

「まあいい。」

 公孫先生はこれ以上は言わない。このクラスは問題少年少女のたまり場だから、祈のような礼儀正しく大人しい生徒は彼しかいないので、きつく追い詰める必要がないと公孫先生は思う。

 それに祈は最近精衛の事で悩み続けて、結局考える内に眠り込んだのも無理もないことだ。



 一方、家に残った精衛はENTERを押して、

「よし、これで流石に祈さんもびっくりするでしょう。」

 と自慢気な精衛。

「暇だな。今頃祈さんと薫さんは学校という場所で勉強しているでしょう。私も早く行きたいな~。」

 とまた座禅をし始めた精衛。

 座禅により、神通力を回復させて、怪我も順調に治していく。赤い透明な障壁のような物が精衛を包んだ。



 一日また過ごした。

「よ、林くん、今日暇?」

 放課後、祈は李に呼ばれた。

「暇じゃねえよ。」

 祈は李の誘いを断った。

「つっめた〜い。てか、最近、林くん変わってない?」

 李は祈のことをじっと見てて。

「何が変わったよ?」

 祈は視線に不自由を感じた。

「匂いだ。知らない匂いがしている。もしかして、薫ちゃんがいながら、別の女と?」

 李は鋭く感じた。

「な、何よ。バカ言わん。」

 祈はそこまで気づかれたのにびっくりした。

 李は何も言わず、ただ信じていない笑顔をしただけだった。

「祈くん、帰りましょう。李くん、またあした。」

 そんなところで、薫は祈を連れてその場から離れた。


 家の近くに着いたら、精衛は街角の陰から出てきた。

「帰るの知ってたの?」

 祈は精衛と連絡手段もないのに、精衛がぴったりの時間に会ったのに驚いた。

「まあ、神通力で感知したのよ。祈さんが私と契約したから、普通に距離を感じられるわ。」

 精衛は契約の機能について説明する。

「便利なものですね。」

 祈は背中から寒い感じがした、慌てて薫に、

「薫、説明を聞いて。」

 と簡単に説明した。

「へえ、そうなんですか。」

 やはり薫の視線が冷たい。

「薫さん、私は君と祈さんについて争うつもりはない。ただ、今祈さんの協力が必要だから、止む得ずことで、祈さんを困らせないでほしい。」

 精衛は薫に弁明する。

 薫がすっきりしない表情で、

「そう、ならこれで。」

 と薫は自宅に戻った。


「何があった?」

 祈はまだ訳が分からないままだった。

「全く、祈さんは乙女心が分からないな。ちゃんと薫さんの気持ちを察してほしいな。」

 精衛も祈の鈍感に仕方なさを感じた。

 精衛も祈を押しながら、家に入った。

 薫は自室の窓で、それを見た。


 遠くない場所で、李も薫の住宅の向きに視線を送っている。

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