弐 精衛(せいえい)
宇宙空間で鳥は必死に逃げている。しかし、狩人の弾より速くはなかった。
弾に撃たれた瞬間、鳥は目が覚めた。
朦朧な目が少し開いた。今は柔らかいガーゼが出来た布団に寝ている。周りを見ると、どうやら知らない誰かの部屋にいるようだ。
自分の体を見て、血滲みた包帯がしっかりしているが、きつくなくほど纏っている。
「私…生きているの?」
この事実を確かめて、安心感が出てきた。
「あいつはほんとバカだな〜。そんなに私を庇って。」
気絶する前の記憶が残っている。こう言いながら、実はとても嬉しいということだ。
鳥は自分の傷を確かめて、血はもう止まっていた。口で包帯を解いて、体が光に包まれながら、少女の姿になった。
15歳ぐらいと思われる幼い顔、可憐な顔立ちに、潤う目が輝いている、鼻と口は小さく、やや細い体に僅かな膨らみがあって、四肢も体と同じ細長くて、バランスがよく、身長は155cmほどの小柄である。肩には銃弾による傷が残されている。
「やっぱり人間の姿の方が動きやすいな。」
少女は新しい包帯を取って、怪我した肩を包もうとしている時、ドアが開いた。
「これで食べれるかな?」
祈が僅かな柔らかいご飯を持って、部屋に入った。しかし、目の前の景色に驚いて、手に持っているご飯が床に落ちた。
少女は思わず悲鳴を上げた。
「だだだ、誰?えっ、って、お前、ななな、何で裸?って、違う…そこ服ある、自分取って着ろ!」
祈も言葉がちゃんと出ないほど慌てた。
「祈、どうした?」
一階にいる願は悲鳴を聞いて、祈に聞く。
「な、何でもない!発声の練習だ!あ〜お〜え〜」
もし願に見られたら、何にも説明できない祈。
「そうか、うるさいから、声控えなさい。」
何だか疑われていないようだ。
ワイシャツを着た少女が祈の布団に入った。
「さっきのはすんません。君は誰ですか?何でここに?」
2人は落ち着いた後、祈から話かけた。
「ええと、話せば信じますか?」
少女はまだ恥ずかしそうに顔を布団に埋めながら祈に問いかけた。
「一応言ってみましょう。」
「まず救ってくれたことに感謝します。私はあなたが救った鳥です。」
「は?」
「やっぱり信じてくれないですよね。」
「信じるかどうか、信じがたいだけですよ。でも、この状況を見ると、信じたくなくても、信じるしかないんだ。」
「そうですね。でもこう言うしかないです。」
「で、名前は?やっぱり名前知らないと呼びづらいですよ。」
祈は少女に問いかける。
「精衛というのです。女媧様の使者です。」
「えっ?」
祈はちょっと驚愕を感じた。
「待て待て、ちょっと頭が固まったことになりました。あれは全部神話で出た名前じゃないですか?」
「そうです、女媧様は上神ですよ。何が違ってますか。」
「いや、つまり、君は神様なんですか?」
祈は自分の耳を疑った。
「いいえ、私はまだ神ではないです。ただの精です。」
「精?」
「そうです。天界の階級によると、神は一番上の存在、次は仙、仙の下は精、つまり私みたいな存在。」
「そうですか。」
祈はまだ理解しきれないが、納得のように答えた。
「ですから、そんなに緊張しなくてもいいですよ。私はそんなに偉い者じゃないですから。」
目の前の「精衛」と自称する少女は自分を救った少年と立場を縮めようと試みた。
「いやいや、そういう問題じゃないです!いきなりそんなにファンタジーな話をしても、理解が追いつかないですよ。」
やはりこの状況には誰でもこうなるでしょう。しかも今まで普通に学校に通っていた生徒である林祈のこと。
「とりあえず、君は私、精衛のことを救った恩人なんです。しばらくの間、よろしくお願いしたいですが、もちろん、ただではなく、恩返しもさせてもらいたいです。」
祈は一生懸命精衛の話を理解している。もし彼女が話したことが本当なら、自分は既にとんでもないことに巻き込まれた。彼が一番理解できないのは、神は本当にいるってこと。どう思っても、納得できないところである。
一応、精衛が狙われているのは本当だ。どうしても、彼女を守らなければならないのだ。
「とりあえず、精衛さんはここで傷を治して、ほかの話はこれからのことです。」
「うん。やっぱり、君は優しいですね。」
「これは優しい何かじゃないです。誰でもこういう状況を見過ごすことにできないたげです。」
祈は自分が普通のことをしているのに強調した。
「とりあえず、お腹空いたでしょう?ご飯を用意しますから、ちゃんと休んでください。」
祈は部屋を出て、精衛の食事を用意に行った。
「この方に救われてほんとに良かった。」
祈が離れた後、精衛は呟いた。
ご飯を食べた精衛は少し元気が戻ってきた。
「精衛さんを守ってと言っても、これからはどうすればいいかわからないんです。あいつはまた来るって言ってましたよね」
祈は深く危機感を持っている。
「大丈夫です。もし君に害が及ぼすことになったら、あいつに私を渡せればいいです。」
もしあの男が戻るまで、精衛が怪我を治せない場合、自分を差し出し、恩人を危険に晒し出さない覚悟ができている。
「そんなことできないって言ったでしょう。その話を飲んだら、どうにもならないですよ。」
一度訳が分からなかったが、何とかその男を撃退したが、これが単に偶然ではないと祈は直感した。
「本当、君は頼もしいですね。」
精衛は目の前の少年の心強さに感心した。
「いや、頼れるかどうか分からないですが、何かそうしろと勝手に行動させられた気がします。」
祈は今までなかった衝動を異様に感じた。
「そういえば、君の名前はまだ教えてくれなかったですね」
「ああ、僕は林祈というのです。精衛さんが天界の者ですから、僕にそんなに謙遜な言葉遣いしなくていいですよ。」
祈は精衛が自分に敬語を使うことを不自然に感じた。
「じゃあ、祈も私にタメ口で話しなさいよ、私もいつもこんなんで堅苦しいよ。別に身分の関係に関わらずに、祈だって私の命の恩人だから。」
精衛は祈と仲良くしたいのだ。
「わ、分かった。では改めて、よろしくな、精衛さん。」
「よろしく、祈さん。」
「ところで、あれは何者?何で精衛さんを狙ってるの?」
祈は肝心な本題を精衛に聞き出した。
「実は、あいつは『神狩り』という組織の組員だ。この組織はいつか出来たのはわからないが、私たち天界は既に四千年以上奴らと戦っていた。」
「四千年?ずいぶん昔じゃないか?」
祈は時間の長さに驚いた。
「そう、そして、この組織は全宇宙の神をターゲットにして、次々と抹殺しようとしている。私は女媧様の神託を持って、途中であいつらと遭遇して、狙われた。一応一生懸命逃げたが、私は罠に嵌められて、やがてやられてしまった。」
精衛は自分の状況を説明した。
「となると、女媧様の神託もあいつらに関わるということだな。」
祈は自分の推察を言った。
「察しがいいな、祈さんは。」
精衛は直ぐ祈を褒めた。
「いや、何か直感でそうではないかと。」
祈がまさか的中したことにも困惑した。
「正直言うと、神託は助太刀をくれる者を探すと。」
精衛は自分の任務を祈に打ち明けた。
「ええ…。何かいい加減な感じがしている任務だな。」
祈は神託がまさかこんなに目標のなさに一瞬引いた。
「しょうがないじゃないか。女媧様も予知能力を持っておらず、こんなことは既に女媧様ができる最善策だから、貶さないでください!」
精衛は尊敬する女媧様に不敬なことを許せない。
「ごめん、貶す気はないんだけど、精衛さんが危険な目にまでさせたことに考慮が不足だと思うだけ。」
祈は誤解されたことを弁明した。
「だとしても、これが女媧様のせいではない。私が気をつけなかったから。」
精衛はやはり女媧様を敬愛している。
「ごめん、女媧様が精衛さんにとって大切な方だと知らずに。」
祈はこれを察して、精衛に謝った。
「もういいよ、私もちょっと落ち着いてなかったから。」
「それにしても、その人はどうやって探すの?心当たりはあったのか?」
話に戻ると、祈は精衛に聞いた。
「分からない。でも、逆に祈に気になることがある。」
「僕に?」
「うん、祈さんはあの男を撃退したでしょう?どうやってできたの?」
精衛は気絶する前、祈が男に反撃したことをはっきり覚えている。
「僕が?」
祈は全然覚えていない。気づいたら、男が目の前から消えただけだった。
「やっぱり覚えてないね。」
精衛は自分の考えを言い始めた、
「もしかしたら、祈さんの中に、祈さんさえ知らない力が眠ってるかもしれない。あの時、祈さんは別人みたいな人格が出て、普通の人間では、使えるはずもない技で、あの男を痛い目に遭わせた。」
「そういうことなの?あの時確か一時の意識がなかったが、そんなことできないよ。」
祈にとっては、やはり信じがたいことなのだ。
「信じられないのは分かるが、それが事実なんだ。でも、私のことも、あの男のことも、君はもう、普通に考えちゃダメなんだよ。もしかしたら、そもそも祈さんが普通の人間ではないかもしれない。」
精衛は祈を信じさせようと説明した。
「そう…だな。今までの人生も普通の人間にはありえないことだと自覚している。」
祈は自分が忘却したい過去に直面する、
「周りの人に呼びかけるなんて、ありえないことだ。やっぱり僕の今までの不幸は何か原因がある。考えたら、不自然な点が多すぎるから。」
「祈さんはこの力の正体が分かる前に、使わない方がいいと思う。私はできる限り戦えるように回復して、祈さんのことも色々調べる。」
精衛は今後のことを考えて、祈に話す。
「得体が分からない力を使わないに分かるが、もしあいつや仲間たちが来たら、どうやって戦うの?」
祈はこのことを心配している。
「そうね…。」
精衛は考えたら、
「じゃあ、私と契約してみる?」
「契約?」
祈は全然理解できない。
「とりあえず、私が言うことに聞いて。」