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ヘブン-Heaven  作者: 中野八郎
ルミナスヘブン
1/12

壱 始(はじまり)と出会い

 果てなき宇宙は静かなのだ。

 ただし、静かさは必ずしも静寂ではない。ただ音を届けるための媒介がないだけだった。毎分毎秒のほど所々で様々な変化が激しく行っている。

 とはいえ、自然な変化の中には、「不自然」なことが発生している。

 一つの光が自分の意識で天体の隙間を素早く飛んで、もう一つの光がそれをついて追っている。

 追っている方が何かを発射して、前に中った。前の光がそれに応じて弾かれて、近くの惑星の引力で引き寄せられてしまった。

 この時、落ちていく前の光が周りの空間を歪めて、そこで出来たブラックホールに消えた。後を追っていた光もそれに続いて、ブラックホールが消える前に中に入った。


 ……



「…、ごめんね…。」

 目の前で、一人の見知らぬ少女がボロボロ泣いてる。仰いだ視線で青い空が見えた。


 何かしようとした時、(りん)()が目を覚ました。目にするのは見慣れている自室の天井なのだ。

「って何なんだあの夢?あの子は誰?」

 どこかで会ったことがあるようだが、女の子が大昔にあったような服を着ていた。本当に気になるから、祈はいつもと違う、ベッドに横になったままだった。

「祈!いつまで寝るつもりなの?」祈の姉・(がん)が部屋のドアを叩きながら祈を促す。

 茶色に染めたロングヘアがちょっとくるくると巻いて、その2束が胸元まで垂れていて、パジャマがだいぶ高く胸に突き上げられている。ハイヒールを履いていないのに、身長が170cm代だと一目で分かるくらい高い方なのだ。祈の姉はこのような洗練で豪快な美人である。

 祈はちらと枕の横にあるスマホの画面をつけると、「07:02」と表示している。祈の覚えの中で起きるのが一番遅れた時刻だ。

「やべっ!」祈はざっと起き上がり、服を着替え始めた。


 林祈は今年の9月から高校に入ったばかりで、成績は普通程度で体育の方が得意なタイプなのだ。ここの冬来るのが早いので、10月に入ったか否か、もう冬制服に変えなければならないほどの季節になってきた。冬服なのに僅か3分間で着替えられた。下に行ったら、願はソファに座り込んで、テレビを見ている。

(ねえ)、今日も仕事?」

 昨夜も遅く帰った姉に、祈は少し心を掛けた。

「うん、最近ちょっと忙しいからね。ていうかのんびりする場合じゃない、早く朝ご飯食べて来な。」

 願は営業事務の会社で働いていて、大黒柱的な存在なので、大事な事があるほど彼女の力が欠かせないものだ。

「そうなのか。いつもお疲れ。」


 祈はちょっとあくびをした。これを見て、願は

「昨夜はスマホを弄って、徹夜しただろう。」姉からの質問。

「まさか、僕はそういう習慣がないって知ってるだろう。」

 祈は確かに徹夜の習慣がない。


「どう考えてもおかしいな。祈はその時はまだ起きていないって。」

 願は祈の話を信じていない。

「僕もそう思ってるよ。夢の中d…」

 祈は願の腹黒い性格を知っているから、調子を乗せられたくないため、言葉を途中で止めたが、願がニヤリと笑った。

「何よ、その不気味な笑いは!」

 願の図星に当たったことに、祈はツッコんだ。

「いいえ、何にも。祈も男の子だしな…。」

 願が「青春だな」って顔で言う。

「でも徹夜は体に悪いから、ほどほどにしてよ。」

「だから徹夜していないってつの!」


 この頃、インターホンが鳴った。

「はい!」

 願が返事をしながら、玄関に向かっていく。

「あっ、(くん)ちゃんだ!」

 願は来客に親しく接して迎えること。

「いらっしゃい!」

「お邪魔します、願さん。祈くんは?」

 結構かわいくて撫子のような来客がこう聞くと、

「なんやら、昨夜は言えないことをしたようだな…」

 願がこう答えたら、

「しってねぇよ!」

 耳利きの祈は直ちに否定した。


 朝食を終えて、3人は出かけた。

「では、今日もうちの祈、よろしくね。」願はバイクを発動しながら、薫に言う。

「いいえ、こちらこそ。」

「ひひ、薫ちゃんはやっぱりいい子ね。じゃあ、行ってくる。」話をして、バイクは走り出した。

「毎朝は災難だな…。」

 遠く行った姉の後ろ姿に、祈はため息をついた。

「そう言わないで、願さんは悪くはありませんし。」

 (きょう)(えい)(くん)が言う。

 この少女は隣に住んでいる幼馴染なのだ。ショートカットの黒髪に、前髪を髪留めクリップで留めていて、伝統的な美人の顔立ちには、何の化粧もしていないのに、素顔のままの肌はもう繊細できれいだ。厚い服さえ隠しきれない完璧なスタイルが曲線を強調している。今年15歳になるにも関わらず、Dカップのバストが同年代の娘の中ではもう抜群とも言える。割に身長も165cmで、168cmの林祈と比べても、大差がないのだ。

「知ってるよ、姉は一生懸命にこの家を支えること。」

「祈くんはやはり素直じゃないのですね。」

 薫は微笑んで言う。

「うっせぇな、余計な話は要らないんだ。」

 祈はこう言いながら、歩き始めた。

「ひひ。」

 薫は笑って、祈に付いて行った。


 祈たちが通っている未央宮総合学校は小、中、高一体制私立学校。地域で数多くの有名人がここから出身した。祈は様々な原因で1年生の落ちこぼれの連中がいるクラスに所属することになった。

 薫は優等生で、学年一番トップのクラスにいるので、祈との関係についてたくさんの噂が絶えず流れ出ている。祈が強くそれを止めたが、やはり止められなかった。

「あのさ、僕と一緒なら、不幸になるってことを信じてないの?」

 祈は幼い頃から様々な不幸なことに遭い続けている。10歳の家族旅行の時、両親と一緒にトラックに撥ねられて、祈は軽傷で済んだが、両親がそれで他界。小学6年の卒業旅行の時、クラス乗っていたバスが崖から落ちて、全員が死亡した代わりに、重体でありながら唯一の生存者として、生き残った。このような数多くの大小事故で、祈は自分が呪われたと思っている。薫はそれに構うことなく、幼馴染として、祈を世話し続けている。

「祈くんが思いすぎですよ。もし本当にそうなら、私はここにいないはずですよ」

「でも、やっぱりできるだけ、僕に近づけないほうがいいと思うよ」

「嫌です。あっ、いけない、遅刻になりますよ。早く行かないと」

「ほら、やっぱり」

「でも、こんなこと私は気にしないですから。早く行こう」


 一日の授業が終わって、 祈はいつもの帰り道を歩いている。

「僕はただ不幸を招いている存在。周りの人に不幸を与え、自分だけが無事に済んでいる。僕は今まで生きるのは、そんな自分が存在している理由、これだけがわかって欲しいんだということ。」

 こう思っている祈は、頭の上の方からぴかって閃いた。仰いだと言葉にできないほどきれいな鮮やかな色をしている鳥がひらりと落ちている。

 何かに呼ばれたように、祈は思わず前へ向かって手を伸ばし、その鳥を手に受け取った。

 そして、祈はその鳥が怪我していることに気づいた。

「私を離して、早く逃げ…」

 祈は鳥が話せることに驚いた。

「鳥が喋った?」

「逃げないと、危ない…」

 鳥の息は既に弱いが、必死に祈を逃させている。

「その鳥渡してくれないか、坊や?」

 猟銃を持って、笠を被っている男が祈の前に現れた。

「君は誰?」

 男が持っている銃を見て、祈は警戒することになった。

「俺が誰かはどうでもいい。その鳥を渡してくれればよい」

「君の正体が分かる前は、鳥を渡すことはいかない」

 祈はそのまま鳥を男に渡すことができない。

「話を聞いて…渡して…逃げて…」

 鳥が再び逃げることに祈を促した。

「いいえ、そんな訳が分からない男に渡すことにはたまるか」

「しつこい坊主だな。ならば…」

 男は銃を構って、祈の頭へ向かって、

「渡さなければ、この銃でどうされるか分からないからな!」

「バカ、何でそんなに私を守るの?」

 鳥は既に話せない、ただ自分で思っただけだった。

「僕を脅かすつもりか?」

「脅かすじゃなくて、正気にヤるよ!」

「ならば、撃てればいい、この辺りの警察は直ぐ駆けて来るから、お前は逃げられないからな!」

 祈はどこからか分からない勇気を自分に与え、この男に意地を張った。

「警察?人間のあれか?ハハハ、そんな者は俺に何ができるの?俺が誰かと思ってるの、坊や?」

 男は不気味に笑った。

「人間の?こいつ何言ってる?」

 そう思うと祈は異常を察した。それでもたやすく弾くことができない。この男がいかにも虚勢を張っているだけだと思いたい祈は、自分の勘を信じて、

「なら、撃てれば撃てばいい!」

「度胸はいいのを褒める、だがこの哀れな度胸にお前を死なせるぞ!」

 男は銃を撃ち放った。


 大きな響きがした。

 弾が撃った後の殻が地面に跳ねられて数回くらい止まった。

「ぐっ」

 男は突然背が曲がって、腹部を押さえて手で傷口を塞ぐことしかできない。

「バカな!何が起こっている?」

 祈は鳥を右手に載せたまま、左手を前へ伸ばして、掌を男に向かって開いている。祈の周りに空気の障壁のような物が彼を包んでいる。祈の瞳もいつもの黒色ではなく、赤色の光が輝いている。どうやら男が撃った弾がこれで跳ね返して、男を撃った模様だ。

「お前は何者だ!もしかして…覚えてろ、必ず帰ってお前を始末するぞ!」

 男はブラックホールのような空間を開いて、中ヘ消えた。

 祈も元のように我を返した。

「助かったのか?」

 男は消えて、祈は男を撃退したことに全く記憶がないようだ。さっきのことが夢みたいと思いたいが、救った鳥が手にいるということは、それが現実だと訴えている。

「君は、何…」

 鳥は言いかけたところで気絶してしまった。

「大丈夫か?しっかりして!」

 鳥は既に生死の境目になったのだ。

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