ご飯はおにぎり
家のドアを開け、リビングに行くとソファーでカズキが転がっていた。
横から顔をのぞき込むとすやすやと気持ちよさそうに寝ていた。
やっぱり子供なんだなぁ...
顔が隠れる長い髪から少し顔が見えた。あどけない、子どもの顔だ。
そっと前髪を横にずらすように頭を撫でると、手に擦り寄ってきた。
なんだか、野良猫が懐いてくるみたいだな
微笑みながらゆっくり優しく、起こさないように頭を撫で、シーツを被せる。
本をとり、向かいのソファーへ座る。
暫らくすると「んんっ...」と向かい側から聞こえた。
目が覚めたのだろう。体を起こし、目を擦っている。
「....」
「おはよう」
少し微笑んで言った。
「...おはよう」
少し寝ぼけながら返事を返してくれた。
「ご飯を買ってきたから食べようか。お腹減ってるだろう?」
そう言うとカズキはこくんと目を擦りながらソファーに座りなおす。
「アレルギーはある?」
「あれるぎー?」とカズキは首を傾げた。
あれっなんだろ、すごいデジャヴ感...
「ご飯を食べた時に、体に何か反応が出るものとか…あ、あと嫌いなものとかは?」
「...今までいろんなもの、食べたけど何にもなかった。嫌いなものもない。」
少し安心した。
それならもっと美味しそうなのを買ってくれば良かったかな
次からは、いろいろ買ってあげよう。
コンビニの袋から梅のおにぎりと昆布のおにぎり、サラダ2つに烏龍茶2本、そして最後に残ったプリンは冷蔵庫に入れる。
「どれでも好きなのを取っていいよ」
そう言うとカズキは昆布のおにぎりと烏龍茶をとった。
「サラダはあまり好きじゃない?」
「...そういうわけじゃない、今は要らないだけ。」
そう言っておにぎりを手に取り、開けようとする...が、
「...?」
どうやら開け方がわからないらしい。
両手でおにぎりを持って、くるくると動かしているいる。
「これはまずここを剥がして、それから両側を引っ張るんだ。」
そう自分のおにぎりで開け方を教える。
僕がやったんじゃ、身につかないしね
やり方を見て、カズキは器用に外袋を開けていく。
そして味見をするように、控えめに1口噛じった。
昆布のおにぎりは口にあったらしく、2口目は大きく口を開けておにぎりを噛じった。
それはもうガブリと。
口いっぱいにおにぎりを詰め込み、烏龍茶で流すように飲み込んだ。
ものの数分でおにぎりはなくなり、カズキは満足そうな顔をした。
「...これも食べる?」
カズキの食べっぷりに呆気にとられて、まだ1口も食べてないおにぎりを差し出す。
カズキは首を縦に大きく振った。
おにぎりを手渡すとまた大きく口を開けて食べようとした。
「あっ...それ梅だからすっぱい...」
手遅れだったようだ。
カズキは目をつむり、口をむすぶ。
烏龍茶を手渡すと勢いよく飲んだ。
少し涙目になっている。
そんなカズキを微笑ましく感じた瞬間だった。