いつもと少し違う空間
この子を背に乗せながら家路へと向かった。
あまり体を動かさないように1歩1歩慎重に歩く。
背負った時に身体の肉質(やましい意味はない)で男の子だと気づいた。
細い道から路地に入ると小雨が降りだす。
まるで、この細い道と路地の間で世界が変わったようだ。
もしかしたら、本当に別世界を跨いだのかも。
そんな馬鹿な事を考えながら大通りへ向かう。
脚を進める度に雨足が早まっていくようで魔法使いになった気分だ。
大通りへ出るとさっきより人が少なくなっていて、思っていたより早く家に帰ることができた。
ーーーーー
家に入るとさっきまで感じていなかった疲れがいきなり出てきた。
雨に降られ、体は完全に冷えきり、体力も限界に近づいていたらしい。
背に背負ったままの男の子をソファーに降ろす。
規則的な呼吸音が聞こえ、少し安心する。
だが、この子も僕のパーカーを羽織っていただけなのでこのままにしておくと風邪をひいてしまう。
勝手に着替えさせるにはいかないし...
とりあえず体が冷えないよう男の子の肩にブランケットを掛け、湯たんぽをつくろうとお湯を沸かす。
お湯を沸かしてる間にふと横切った疑問
この子、なんで僕に向かって着たんだろう...
自己防衛の為?
まあ、それくらいしか思い浮かばないか...
でも
あのこの目には殺意があった。
正確には分からないが、あれは自己防衛の為のものではない。
まるで、自分以外の世の中全員を恨んでるような目
でも、殺意だけでなくあの子の目は怯えが隠れていた。
「怖い」よりも「助けて」に近いもの。
怖いに怯えるのでなく、拒絶されるのに怯えているようなもの。
もう考えるのは辞めよう。
雨が降っていつもより騒々しい外、今日初めて出会った男の子。
いつもと少し違うこの空間に溶け込むように僕は目を閉じる。