みつけた
昼食を食べた後、「服を買いに行こう」と言われ、そのまま手を引かれる。
誰かに手を引かれるってことは初めてでちょっと新鮮
相手の体温が感じ取れて気持ちいい。
少し歩いて行くと服がたくさんある店に入った。
あいつがあれこれと服を持ってくるが、どれもこれも派手で目がチカチカしそうだ。
あいつが服を持ってきては嫌だと断り続けて早10分。
特にすることがなく、ただあいつについていくだけ。
退屈だ...
そう思いながら店の外を見る。
人はあまりいない。
だからだったのだろう。少し異変に気づいた。いや、異変というよりか疑問だ。
外を見ると子猫がいた。
赤い首輪をつけ、その首輪についている金の鈴をチリンチリンと鳴らしながらよちよち歩いている。
通り過ぎていく人には子猫が見えていないのだろう。何も気にせず歩いていて、子猫は今にも怪我をしそうだ。
カヅキは見ていられなくなり、子猫の元へ行った。
人をかわしながら、子猫の元へ辿り着き、そっと抱き上げる。
人に慣れているのか抱き上げても何もせず、大人しく腕に収まっている。
とにかく、人の少ない所に行くか。
子猫を抱いたまま、カヅキは人の少ない方へ進んでいく。
ーーーーー
「このくらいの背丈の、髪を結んでて、目が金色の子見ませんでしたか!?」
周りの人にそう尋ねながらカヅキを探す。
「あっちに行きましたよ。」
「こっちで見かけました。」
と見かけた人は多いが、それぞれがバラバラの方向を指さす。
ショッピングモールをひととおり探すも、カヅキは見つからない。
1階を探し回り、もう1度2階を探そうとするとショッピングモールと少し離れたところに小さな公園があった。
こんな公園あったんだ...
公園をじっと観察するように見ると長い黒髪を高く結んでいる後ろ姿が見えた。
「カヅキッ!」
そう叫ぶと公園にいたその子はこちらを振り向いた。
カヅキだ。よかった、何もなくて
カヅキと確認すると公園へ向かう。
「何もなくてよかった...何してたの?」
「こいつ」
そう言ってカヅキは抱き上げているものをズイと目の前へ持ってきた。
「子猫?」
綺麗な毛並みの子猫がこちらを見ながら「にゃあ」と愛くるしく鳴いている。
「どうしたの?この子?」
「店の外で見つけた。危なっかしかったから、人の少ないところに連れてきた。」
「なるほど...だからこの公園に」
ここの公園は、遊具が少し錆び付いてはいるが普通、人が数人いてもおかしくないようなところだった。
そういえばこのへんに新しく大きな公園ができたんだっけな...
きっと、そっちの方に行ったからここには人がいないのか。
「まあ、カヅキに何もないようで良かったよ。」
「心配かけて悪かった...」
少し頭を下げ、本当に反省しているようだ。
「今度からは、どこか行く時はちゃんと言ってね?」
そう言いながら、下がったカヅキの頭を撫でる。
「今日はもう帰ろうか。僕疲れちゃったよ...それにその子の手当てしてあげなくちゃ」
子猫はよく見ると脚や腹が汚れていて、少し怪我をしていた。
首輪をつけてるからきっと飼い猫なんだろうけど、怪我してるんだし先に手当てしてあげて、それから返してやろう...
「それじゃあ帰ろうか」
そう言って手を差し出すと、カヅキは子猫を片手でしっかりと抱き、もう片方の手で僕の手を握る。
今日1日で少し親の気持ちが理解出来たような気がした。
いっそのことこのままずっと手を繋いでいたい。
と思うほどに心配をして、正直カヅキの元へついた時は、安心で膝から崩れ落ちそうだった。
...まあ、そんなとこ見せらんないけど